ヴイ・エス・テクノロジー(以下VST)は、1997年の創業以来、マシンビジョン、画像検査用光学レンズ、光学部品の開発、設計、製造を中心に事業を展開してきました。2023年度より自社で照明、照明装置、画像処理ソフトウェアの開発、設計、製造にも力を入れ、25年以上にわたり培ってきた豊富な光学知識を基に、お客様に最適なビジョンシステムの提案と製品を提供しています。
倍率組み合わせ自由テレセントリックレンズ 米国ビジョンシステムデザイン主催イノベーターズアワード光学部門最優秀賞を受賞
2023年12月に販売を開始した「倍率組み合わせ自由テレセントリックレンズ」は革新的技術となるレンズのリア、フロントを自由に組み替えられる特徴を持ち、2024年5月には米国ビジョンシステムデザイン主催イノベーターズアワードの光学部門で1社が選ばれる最優秀賞を受賞しました。この革新的な製品の開発には、長い歳月が費やされました。販売に至るまでの経緯、開発の裏話、そして今後の展望についてご説明します。
(イノベーターズアワード最優秀賞盾と共に)
多様化するレンズ市場に対応。生産ラインへの需要が高く、エコにもつながる製品の誕生
VSTは、製造業、品質管理、監視システムなど、多様な業界で高精度な画像検査を必要とするお客様のための製品を自社開発しています。
画像検査用光学レンズの開発では、振動環境にある装置や設備に対応する耐震レンズ、近接での画像撮像に最適なディストーションを抑えたマクロレンズ、ハイスピードカメラに対応した明るいレンズ、SWIRに対応したレンズ、大型素子対応した高解像度レンズなど、お客様や業界や用途に合わせてお客様のお困りごとを解決できる最適なレンズの開発を続けてきました。
近年、カメラのセンサーはCMOSセンサーが普及し、画素数のアップやセンサーサイズの拡大により、お客様を取り巻く環境も大きく変化し、選択肢が増えましたが、様々なセンサーに対応するレンズも多様化してきました。生産ラインによって異なるレンズが必要になることもありました。そこで、レンズの前側と後側をお客様自身で取り替えられるようにすることで、汎用的なレンズとなり、生産ラインでの需要も大きいと感じたことが、フロント、リアレンズ組み合わせ自由レンズの開発の発端です。また、在庫を持つことなく、リア、フロントの組み換え自由なレンズを使うことでお客様のエコにもつながる製品として、新しい価値を生み出すことに成功しました。
製品化を遂げた技術力とチームワーク!機構設計は特許申請中
レンズ開発では、開発企画から始まり、光学設計、機構設計、評価という順番で製品が形になります。フロント、リアを自由に組み換えするというアイディアは、比較的簡単に思いつくものですが、それを製品化するには高い技術力と粘り強いチームワークが求められました。
(光学設計Gr. 手島康幸、機構設計Gr.レンズWGr. 松田聖史)
まず、光学設計では、フロント・リアの組み合わせで20通りの光学倍率を実現する為にどの組み合わせでも性能が出るように設計することが最大の課題でした。熟練の光学設計者が担当し、各レンズを設計後、組合せに対して誤差解析やシミュレーションを行い、狙った性能が出るように調整方法を検討しました。全てのレンズの組み合わせでディストーションやテレセン性の変化を解析し、必要な調整を行いました。
機構設計のフェーズでは、評価段階での使いやすさを考慮しました。簡単に取り付けや取り換えができる一方で、しっかりと固定できる機構が求められました。そこで、これまでのレンズ開発・設計で培ったノウハウを生かし、固定のロックシステムやファンクションリングのアイデアが生まれました。特に、レンズの取り付け時にずれが生じないよう、ネジでの取り付けではなく、面でしっかりと固定するロックシステムを採用しました。また、レンズを保持するプレートを取り付けるためにファンクションリングを導入し、機構設計を完成させました。これら2つの特徴ある機構は特許申請中です。
(技術部光学設計Gr. グループリーダー 早川浩一郎)
評価フェーズでは、若手技術者が奮闘し、調整と品質保証の難しさに取り組みました。フロントとリアを別々に購入されたお客様が現場で組み合わせて使うため、出荷時の性能を保証する方法を決定するのに苦労しました。技術部内で協力し、評価や性能保証の方法を決めていきました。当初は、評価を1人が担当していましたが、フロントとリアそれぞれの組み合わせが多く、評価や検査で戻りがあることもあり、部署総動員で評価を行いました。社内の検査・評価装置をフルに活用して、チーム一丸となって作業を進めました。従来の標準品とは異なる専用の検査・評価に試行錯誤を重ねながら、全員で協力して取り組みました。その結果、お客様がリアやフロントをバラバラに買った後も性能が出るように調整しました。製品の企画から販売まで通常の3倍の期間を得て、見事に販売に至りました。
2024年5月に米国ビジョンシステムデザイン社主催の「2024イノベーターズアワード」プログラムの審査において、レンズ、照明、光学製品部門で最優秀賞を受賞
2023年12月に販売開始後、2024年5月に米国ビジョンシステムデザイン主催の「2024イノベーターズアワード」プログラムの審査において、レンズ、照明、光学製品部門で最優秀賞を受賞しましたが、本年度ドイツのビジョン展示会で行われるビジョンアワード2024の入賞も目指しています。
(営業本部長 菅原勇二)
販売開始後、製品を他社に真似される!?
販売開始後、新しい開発製品が他社に真似されることは、ヒットの証だと思っています。実際、海外のメーカーがすぐに同様の製品を出してきました。このことは、組み合わせ自由レンズのメリットが広く認識された証拠だと感じています。しかしながら、業界を先駆けてこの製品を開発できたのは、弊社だけです。その成果として、イノベーターズアワードを受賞できたのだと思います。苦労はしましたが、このレンズを形にできたことを大変嬉しく思います。
お客様から「SDGsに貢献しているね」
導入後の仕様変更によって発生するコスト削減、環境に配慮したレンズのコンセプトを理解していただいたお客様から、「エコなレンズだね」「SDGsに貢献しているね」と認識していただけたことは、レンズメーカーとして非常に光栄です。このレンズの優れた点を通じて、VSTの開発技術力を世界へ広めていくことを目指しています。
高いレンズ技術に加えて、お客様への提案も最適化を目指していく
現在、フロント4機種、リア5機種の組み合わせが可能なシリーズとして、20通りのバリエーションを提供しています。市場のニーズに応じてラインアップを増やすことも一つの方法ですが、今後はリアやフロントを改造し、個々のお客様の要望に応じたカスタム展開も進めていきたいと考えています。
また、世界的にも企業の方針として環境保護の取り組みが進んでいる中、ぜひVSTの環境にやさしいエコなレンズを使用していただき、その普及に貢献してほしいです。
さらに、昨年度から自社の照明や画像処理ソフトも取り入れ、レンズ技術に加えてあらゆる側面から画像検査の最適化を提案しています。今後の展開にご期待ください。
■倍率組み換え自由テレセントリックレンズ
・製品情報:https://info.vst.co.jp/l/966943/2024-04-09/5k9f5
・製品ビデオ:https://studio.youtube.com/video/Q7MQbAtg3yE/edit
・プレスリリース:
■会社概要
(株)ヴイ・エス・テクノロジー
URL: https://vst.co.jp/
所在地:本社 東京都港区麻布台1-9-19
事業概要: マシンビジョン、画像検査用光学レンズ、光学部品の開発、設計、製造を中心に事業を展開してきました。2023年度より自社で照明、照明装置、画像処理ソフトウェアの開発、設計、製造にも力を入れ、25年以上にわたり培ってきた豊富な光学知識を基に、お客様に最適なビジョンシステムの提案と製品を提供しています。
Youtubeチャンネル:
https://www.youtube.com/channel/UCpoKwwMOn-fuaUtOx0zL_nA
【この記事に関する広報お問合せ窓口】
㈱ヴイ・エス・テクノロジー
事業推進部 栗田 Email:aikok@vst.co.jp
営業へのお問合せ先 https://vst.co.jp/company/branches/
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