2023年11月、強風によって広島市の平和公園にある国旗掲揚台ポールの先端が折れた。7月下旬に新たなポールが設置される予定だが、破損から8カ月近くたった今も“仮設のまま”になっている背景を取材した。
破損から8カ月… なぜ仮設のまま?
広島市で最大瞬間風速20.6m/sを観測した2023年11月28日。平和公園の原爆慰霊碑の後ろ側に掲げられていた国旗も激しくなびいていた。

その時、事態は起こった。強い風を受けた掲揚台のポールの先端がポキリ…。ストローの先を折り曲げたような状態になり、国旗を降ろすことができなくなったのだ。
強風による破損から8カ月近くたった7月12日、平和公園を訪れると“仮設の金属ポール”に国旗が掲げられていた。

そのとなりで新たな国旗掲揚台の基礎工事が進められている。約8カ月たっても“仮設のまま”であるのには理由があった。
約40年前に寄贈された1本の「木柱」
実は壊れたポールは高さ18メートルの木製で、約40年前に世界の平和を願って寄贈されたものだった。

広島市緑政課の橋本浩太主査は「当時、1本の木柱ということで入手が困難、さらに平和公園に運び込むのに困難を極めたとうかがい、寄贈者の方の強い思いを初めて知りました」と話す。強風で折れたのが先端の滑車のついた金属部分のみだったため、市は修復して使うことができないか検討を重ねたという。

寄贈者の思いをむげにしまいと修復の道を探ったが、「強度の面から担保できない部分がありましたので、専門家の意見を聞いたり他都市の事例を調べながら少し時間をかけて対応を検討しました。結果として、強度の面ではっきり耐えられると判断できなかったため、更新という選択肢をとりました」と橋本主査は経緯を説明した。
全国的にも長い“18mの旗ポール”
これまでの経緯を理解した上で新しいポールを寄贈するのが、旗ポールの国内トップシェアを誇る「サンポール」。広島市中区にある工場で納品前の準備が進められていた。18メートルのアルミ金属製のポールを横に倒した状態で見ると、より“長さ”を実感する。

「全国でもかなり長いほうですね」とサンポールの若江祐輝課長代理。一般的な旗ポールは長くて15メートル。今回、平和公園に設置される18メートルのポールはめったに扱わないサイズだという。

若江課長代理は「旗ポールというのは数メートルごとにジョイントされていて、つなぎ合わせていくものです。長さ18メートルとなるとかなり分かれるので製造も大変でした。アルミは“しなる”という特性が鉄やステンレスに比べて秀でているので、それが国旗掲揚ポールに適しています」と話す。
平和公園に設置されるのは7月下旬予定。ポールを全部つないだ状態でクレーンでつり上げ、建柱する。平和への願いを継承した高さ18メートルの新ポールが、大空に国旗をなびかせる日はもうすぐだ。
(テレビ新広島)