8年前と今回 選挙活動終了直後の小池氏は…
2016年、2020年に続き3度目の都知事選となった小池氏。コロナ禍だった2020年を除き、8年前と今回の選挙で、選挙活動終了直後の小池知事に単独インタビューをした。
この記事の画像(25枚)8年前は「まずは、ほっとしました、でも結果が出るまではまだ気が抜けない。選挙というのはそういうものだと思います」と、“ゆりこグリーン”を身にまとい、最後の街頭演説の熱を帯びたまま話していた。
しかし、今回は全身白の装い、かつ落ち着いた口調で「公務との二刀流ということで、時間の配分とか、もちろん何が起こるかわかりませんので、常に備えておりました。特に最終日ですね。ゲリラ豪雨に襲われて、危機管理が重要ということで都庁に入って、情報を収集、対策に当たったところです」と話した。
これが、2期8年の変化なのだろう。
演説を一時中断してしまうほどの辞めろコール、様々なプラカード、思わぬライバルの登場もあったが安定した戦いを見せた小池氏。その勝利の要因は、「新旧手法のハイブリッド」と「公務優先」にあった。
“AIゆりこ”の裏話「全然守りに入っていません。私こそがチャレンジャーです」
現職として「挑まれる側」となった今回の選挙の戦略を問われた小池氏は、こう言い切った。その“チャレンジャー”が新たに打ち出した手法は、AIゆりことショート動画だ。
AIゆり子は、小池氏自らの発案だという。「今回自分でやってみて、AIの技術革新ってもうデイリーなんですよ。1週間で全然違うぐらい。それを体感してよかったと思ってます。あんまり、そっくりにしてしまうと、かえって紛らわしくなるなあと思って、適当なところで抑えているというような裏話もあります」と、小池氏は選挙活動終了直後の単独インタビューの中で、最もアツく語っていた。
関係者に「裏話」についてたずねると、映像的には本人そっくりにしたが、音声を少し変更したという。また、ディープフェイク対策としてあえて先に公式に出したところもポイントだったという。
バズった“ゆりこ動画” 1743万インプレッションにも
もう一つの新たな取り組みは、ショート動画だ。
60秒から90秒の長さでテンポよく、多くの情報を文字で入れていることで、TikTokなど普段ショート動画を見ている人からすると、非常になじみがある作りになっている。また、小池氏本人の表情に「ニヤリ」などの文字を入れる本人への「イジリ」もショート動画らしさであるとともに、小池知事の硬いイメージを柔らかくしたという。
女性や30代から50代を狙って制作したというだけあって、小池氏が自らの子宮摘出が子育て支援策の元となっていることについて語った動画は、1743万インプレッションに達している。
選挙の王道“川上作戦”
小池氏は旧来の手法、いわゆる選挙の王道も外さなかった。街頭演説を島から始めたことである。有権者の少ないところから選挙活動を始める、いわゆる「川上作戦」だ。
有権者数が少ないから効果が少ないとも思われるが、人口の少ない地域であればあるほど、「遠くまで来てくれた」との感謝の声が多いという。また、選挙関係者の間では、“川上”に住む親が、“川下”である都心に住む子供たちに「小池さんが来てね」などと話し、良い印象を伝えてくれるとも言われている。
実際、奥多摩駅での演説の後、地元の人は「小池さんは前もちゃんと来てくれた」と笑顔で話していた。
小池氏の“空中戦と地上戦”
これだけの勝利をもたらした、新旧手法ハイブリッドな手法について、小池氏に質問すると冷静な反応が返ってきた。
小池氏:
やっぱり地上戦と空中戦ってよく言いますけれども、今時ですね、両方ということなんだろうと思います。これもハイブリッド、二刀流の時代なのかなという、ふうに思います。一方で、SNSはあの伝え方を間違えると、非常に逆の効果にもなってしまいます。その辺は注意することは、まだまだあるかなと思っています。
小池流の“公務優先”とは
公務優先も、小池氏の強さだ。公務に名を借りた選挙活動との批判もあったが、確認できたものだけでも、告示後の視察は19か所、イベントや面会は16回にのぼった。
しかし、中でも最も「公務優先」を印象付けたのは、支持を訴えることができる最後のチャンスである選挙活動最終日の夜、豪雨対策のため、選挙運動を切り上げて都庁に帰庁したことだった。一目で「防災対策」とわかる防災服に身を包んで、我々の取材を受けたところも“小池流”なのだろう。
チャレンジャーの“3期目”は
防衛大臣、東京都知事と、何かと「女性初」の冠がつく小池氏に女性達へのアドバイスを聞くと、8年前は「リスクを恐れるな。やってみなければわからない」と話していたが、今回は「遠慮せずにチャレンジすることかな、というふうに思っています」発言が、ややマイルドになったとも思える小池氏。
しかし3期目は、豪雨、酷暑などの災害対策、物価高、出生率が全国最低となった少子化対策などハードな課題が山積している。
自らをチャレンジャーと称した小池氏がどのような都政運営を行うのか、引き続き注視していきたい。
【執筆:フジテレビ社会部・都知事選担当 小川美那】