シニアの約2割が希望する仕事に就けておらず、その理由として「年齢」が挙げられることが、調査によって明らかになった。人手不足ながらも、シニア採用に積極的な企業は2割程度となっており、専門家は、年齢に関係なく働けるエイジフリー社会の実現が必要だと指摘する。
シニア就業できず経済損失1兆円…理由は「年齢」
働きたいシニア世代と、企業側のギャップが見えてきた。

就業を希望するシニアが職を得られない場合の経済損失が、1兆390億8200万円に上るとの試算が発表された。

不動産や暮らしに関する情報を提供するLIFULL(ライフル)の調査では、働く65歳以上の人の約2割が、希望通りの仕事に就いていないと回答。

理由について、8割以上が「自身の年齢が高いため」と答え、「応募できる企業が少ないから」などが続いている。

企業側は8割以上が人手不足と答えているが、65歳以上の採用を積極的に行っているのは約2割にとどまっている。

採用を行っていない理由は、「体力・健康面に不安がある」の他に、「任せられる仕事がない・わからない」が続き、即戦力としての疑問も挙がっている。
一方で、65歳以上を採用した企業の7割近くが、「即戦力」だったと答えている。
シニアが活躍できる雇用体系の工夫を
「Live News α」では、デロイトトーマツグループ執行役の松江英夫さんに話を聞いた。
海老原優香 キャスター:
まだまだ働きたいという方の希望に、企業側もなんとか応えられるようになるといいですよね。

デロイトトーマツグループ執行役・松江英夫さん:
シニア就業に関して、総務省の労働力調査によると、65歳以上の就業希望者は比較的多い一方で、「求職者が仕事に就けない理由」について3割強の方が「求人の年齢と合わない」ことを理由に挙げており、年齢が大きな制約になっていることが分かります。
実際に、多くの企業は、体力面の不安やモチベーションを懸念し、シニアの採用に積極的ではないことも事実です。
しかし一方で、近年は健康寿命が延びている中で、高齢者の体力は20年前と比べて5歳~10歳若返っているというデータもあり、最近では高齢者の定義そのものを見直す動きも出はじめています。
海老原キャスター:
確かに私の周りでも元気なシニアの方、増えているような気がします。
デロイトトーマツグループ執行役・松江英夫さん:
高齢化が進む日本においては、これからは「年齢」で制約を受けずに、働く意欲がある人が自由に働ける「エイジフリー」の社会に変革していくことが求められます。
エイジフリーな社会を実現するには、企業と政府の双方による対応が必要です。まず企業に求められるのは、年齢の上限なく継続的に働ける雇用体系を整えることです。
ある住宅メーカーでは、65歳の定年以降も働き続けられる「アクティブ・エイジング制度」を導入し、定年前と同水準の収入(給与+年金)を得られる制度を作りました。
さらに、シニアな人材が従事できる業務の選択肢を広げる努力も必要です。ある介護に関連した人材派遣業では、業務内容を48種類に分解し、身体負荷や、勤労可能な時間に応じてシニアの未経験者でもできる業務を特定するなどの工夫をしています。
安心して働き続けられる制度が必須
海老原キャスター:
一方で、政府にはどんな対応が求められるんでしょうか。

デロイトトーマツグループ執行役・松江英夫さん:
今後、シニア人材が安心して働くには、政府による年金制度の見直しも必要不可欠です。
これから年金法改正の議論が本格化しますが、一定の給与がある高齢者の年金を減額する「在職老齢年金」の廃止・緩和を含めて、働きたい人が年齢に関係なく、損をせずに働き続けられる年金制度に変えていく必要があります。
人口減少下で、一人一人の希少価値が高まる令和の時代は、働く人のそれぞれが、年齢の制約を受けずに、多様な働き方を継続できる社会になっていくことを期待します。
海老原キャスター:
あらゆる人が年齢に関係なく、これまでの自分の経験を活かしたり、自分らしく生き生きと過ごせるような取り組みが進むといいですよね。
(「Live News α」7月5日放送分より)