高温多湿な夏は、浴室や収納がカビ臭くなり、憂鬱な気持ちにならないだろうか。
「カビは、不快なにおいの元になるだけでなく、胞子を吸い込むことでアレルギーや喘息の原因になるとも言われています」
こう警告するのは、家庭から工場まで様々なにおい問題を解決してきた臭気判定士の松林宏治さん。では、どのように撃退すればいいのだろうか。松林さんによると、カビは、「除去」と「予防」の2段階での対処が必要になるという。
まずは、生えてしまったカビへの対処の基本を教えてもらった。
消毒用エタノールが有効
「カビ菌も、悪臭を出す雑菌と同様、温度・湿度・栄養源が揃うと発生します。そして、消毒用エタノールで大部分が死滅することを覚えておいてください」(以下、松林さん)
カビ対策には、ドラッグストアで手に入る消毒用エタノールと霧吹きを購入しておくと便利。霧吹きに移し替えて、カビの生えた部分に吹きかけて拭き掃除をする。ただし、室内での消毒用エタノールの使用に当たっては近くに火気がないことを確認するなど十分注意してほしい。
この記事の画像(5枚)なお、消毒用エタノールだけでは黒カビの色素までを取り除くことができない。そこで、色素を取り除きたい場合は、塩素系や酸素系の漂白剤を塗布して数分程度おいてから水で流すとよいとのこと。
もちろん、市販のカビ除去剤を使ってもOK。カビ除去剤には浴室、畳、木材、布用など、様々なタイプがあるので、用途に合ったものを選ぼう。その際は、各メーカーの取扱説明書や推奨する方法に従ってほしい。
ここからは、カビの生えやすいお風呂場、エアコン、クローゼット・押し入れ・床下収納の予防法を見ていこう。
お風呂場は完璧な対策は無理?
カビと言えば、まず気になるのがお風呂場だろう。しかし松林さんは、「お風呂場のカビは予防することは極めて難しい。完璧な対策はまずないでしょう」と話す。だからといって、カビが生えてしまっても諦めないでほしい。
生えてしまったカビには、上記のとおり、消毒用エタノールなどで対処する。その上で、お風呂場のカビ予防には、入浴後のひと手間が大切だ。
まず、入浴後に温度を最高にしたシャワーで浴室全体を流す。これによって、高温に弱いカビを殺し、カビの栄養源となる石鹸カスを落とすことができる。
次に、シャワーを水に切り替え、浴室全体を流す。これによって浴室が高温多湿になってしまうことを防ぐのだ。
仕上げに、浴室の隅の部分など、水が溜まりやすく乾きにくい部分は、水を拭き取るか、ワイパーなどで水気を切っておくとよりカビが生えにくくなる。
カビ除去剤による掃除も、夏場は週1回くらい行ったほうが安心だ。念を入れたい人は、防カビの燻蒸剤を使うという方法もある。
エアコンは吹き出し口にも注意
「夏場は毎日使うエアコンも、実はカビの温床なんです」
エアコンの悪臭といえば、風に乗って漂う生乾きの雑巾のようなにおいを思い出す人も多いだろう。これは、冷却フィン(熱交換器)に繁殖した雑菌によるもので、専用のクリーナーを使うことで対処することができる。
一方で、「見落とされがちなのが、吹き出し口のカビです」と松林さん。ここにカビが生えていると、カビ臭さとともに、部屋中にカビの胞子が飛び散ってしまう。
夏場は月に1~2回程度は吹き出し口を消毒用エタノールで拭くなどの掃除をしてほしい。
「金属フィンも吹き出し口も掃除したのにエアコンがにおう…」という場合は、プロの手を借りて、一度徹底的に掃除をしてもらったほうがいいかもしれない。エアコンの掃除は防臭面だけでなく、健康面でも重要だ。
締め切った収納には風を通して
脱いだ衣類や寝具から湿気が発生するため、クローゼットや納戸、押し入れもカビが発生しやすい条件が揃っている。松林さんによれば、結露などにより床下収納にカビが発生しているケースも時々見かけるという。
こうした閉め切りがちになる場所は、定期的に開けて扇風機やサーキュレーターで風を送ってほしい。もしあれば、除湿器を使うのもお勧めだ。
カビを見つけてカビ除去剤を使う場合は、壁や床の素材に合ったものを使用しよう。
構造の問題の場合も?
最後に、カビの程度が酷く、自分では対処しきれない場合は、専門業者によるカビ除去&カビ防止の工事を検討することを松林さんは勧める。
「それでもまたすぐカビが再発してしまう場合は、漏水など構造的な部分に問題がある可能性があります。そうなると、リフォームなどで改善するしかありません。その際、カビ菌の除菌と防カビ処理を施せばより安心です」
不快なにおいだけでなく、深刻な健康被害をもたらすカビ。程度が酷くなる前に、こまめに除去と予防をしていきたいところだ。
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松林宏治(まつばやし・こうじ)
臭気判定士。工場や総合病院から一般の家庭まで、あらゆるにおい問題を解決する企業・共生エアテクノ代表取締役。自身の嗅覚をたよりにさまざまなにおい問題を解決してきたことから“におい刑事”の異名をとる。著書に、『臭気判定士・におい刑事(デカ)が教える! ニオイで女性に嫌われない方法』(インプレス)。