長野県飯田市の洋菓子店が6月から1個300円に価格を抑え、ロールケーキを販売している。手頃な価格で家計にやさしいケーキだ。物価高の中、「少しでも客に幸せを届けたい」との店主の思いが詰まっている。
物価高の中…ロールケーキ300円
ふっくら焼きあがったスポンジ。少し冷ましてから生クリームを塗り、長野県内産のイチゴをのせていく。
ゆっくり巻き上げたら冷蔵庫でいったん冷やし、厚さ3センチにカット。仕上げにイチゴをトッピングすれば、ロールケーキの完成。
値段は1個300円。物価高の中で見れば手頃な価格だ。

販売しているのは、飯田市の洋菓子店「マロン アップルロード店」。
ショーケースの中には、かわいらしいケーキやバウムクーヘンなどが並ぶ。
その一角には、色とりどりのロールケーキも。価格はすべて1個300円。
「高くてなかなか買えない」との声…
客からのある声をきっかけに、6月から販売を始めた。
マロン アップルロード店の佐々木悟さんは「『昔は(ケーキ1個)300円で買えたんだけど、もう500円だもん、なかなか買えませんよ』と言われた。お客さんもプライスカードをにらめっこして見ているのを見て、これは私も経営者じゃなくて消費者(の立場)にならなきゃいけないと思って考えた」と話す。

バターや小麦など原材料価格が高騰
ウクライナ侵攻や円安の影響などで、バターや小麦などの原材料価格が高騰。店は、この2年間で3回の値上げを行い、商品の価格は2割ほど上がったという。
そうした中、客から寄せられた「なかなか買えない」との苦しい声。佐々木さんは、客のために何ができるか考え、手頃な価格のケーキの販売を思いついた。

工夫して価格を抑える
選んだのがロールケーキだ。他のケーキより作るのに手間がかからず、クリームやフルーツを少なくしてもおいしく食べることができる。
これまでは1本単位で販売していたが、小分けすることで品数を増やし、価格も抑えることができる。
他にも工夫している。一部のロールケーキのスポンジは小麦粉に安く仕入れた米粉を混ぜて使用。中に入れるフルーツも価格が落ち着いている旬のものを使い、コストを減らしている。

「少しでも客に幸せな時間を」
ただ、一番大きいのは「少しでも客に幸せな時間を届けたい」という佐々木さんの思いだ。
佐々木さんは「価格300円に設定して、利益幅はちょっと少なくなるけど、自分が消費者の立場に、そういう考えでやりだしたので、皆さんに幸せになってもらえれば、われわれ作るものが一番幸せになれるんじゃないか」と笑顔で話す。

1日に100個ほど売れる日も
6月から販売を始めたところ、口コミなどで広まり、1日に100個ほど売れる日もあるという。
客は「なかなか普段買えなかったので、とてもありがたい。たまには、おいしいものを食べたいので」、「300円はとても手頃で、手の出しやすい良い価格だと思う。ボーナスも入り、ご褒美がてら家族で食べようかな」と話す。
物価高の中で考えられた家計にやさしいロールケーキ。利益幅は減るが、佐々木さんは、300円のロールケーキを続けるという。

(長野放送)