「ラウンドアバウト」と呼ばれる環状交差点が全国で増えている。中央に円(環状)があるという点はロータリー交差点と同じだが、通行方法が明確に定められ安全性が高いという。日本で導入されたのは2014年。実は宮城県が全国で最も数が多い。その背景には、東日本大震災の経験と教訓が関係している。
ラウンドアバウトとは?
ラウンドアバウトはヨーロッパ発祥の交差点の形状で、代表的なものはフランス・パリにあるエトワール凱旋門。12本もの道路が放射状に延び、パリの地図を眺めていてもすぐに目につく。
この記事の画像(8枚)日本では2014年9月に施行された改正道路交通法に基づき、環状交差点の名称で法的に整備された。それ以前に造られたロータリー交差点は一時停止などのルールがばらばらで、その地域に住む人でないと使いづらいという短所があった。
ラウンドアバウトはその点、シンプルだ。
ラウンドアバウトに入る際は徐行し、ウインカーは必要ないが、円の中を走っている車が優先となる。交差点内は時計回りの一方通行で、円から出るときにウインカーで合図を出す。ウインカーは、出たい道路のひとつ前の出口を過ぎたところで出すといいという。ただし、交差点を入るときや出るときは歩行者に十分な注意が必要だ。
警察庁によると、2024年3月末時点で全国にあるラウンドアバウトは161カ所。そのうち28カ所が宮城県内にあり、全国1位となっている。
宮城に多いラウンドアバウトの謎
なぜ宮城県にラウンドアバウトが多いのか?それは東日本大震災も影響しているという。宮城県警によると、2014年に道路交通法改正が改正された際、県内にあったロータリー交差点のうち19カ所を改築し、環状交差点として整備した。新たに整備された9カ所は、津波で被災して更地になった場所など活用できる土地が多くあったことから環状交差点を整備したという。また、ラウンドアバウトは信号機が必要ないため、停電時でも混乱なく通行でき、災害に強いことも宮城県内に多い理由の1つだという。
地域の特性も考慮
ラウンドアバウトは地域の特性に合わせて整備されている。例えば、宮城県山元町山寺。震災前はJR常磐線の線路だった場所だ。震災後に線路が内陸側に移設され、元線路の場所は道路になった。衛星写真で比べるとその変化ははっきりとわかる。土地が広く確保できたため、ラウンドアバウトの設置に適していたという。
亘理町役場前にあるラウンドアバウトは宮城県でも有数の大きさ。2020年に整備され、近くには役場以外にも防災広場などがあり、災害時の拠点になることが想定されている。停電しても安全に通過できるラウンドアバウトの特性を生かした例といえるだろう。
住宅街の中に整備されたのが仙台市太白区中田町。交差点の周りは住宅に囲まれていて徒歩や自転車で通行する人の姿も多い。県警によると、歩行者は交差点外側の歩道などを通行することになるが、通行の向きについて制限はない。もちろん、中央のスペースを横切る「斜め横断」は禁止だ。一方、道交法上で車両に分類される自転車は、自動車と同じく交差点内を時計回りに進まなければならない。
意外?交差点内の事故は減少
運転する立場で考えると複雑な動きが必要に見えるが、ルールが明確でシンプルなのがラウンドアバウトの特徴だ。県警によると、徐行して交差点に入るというルールをすべての車が守れば、重大事故の減少が期待できるという。また、交通量が多すぎる場所でなければ、信号待ちの時間がなくなり、待ち時間の減少や二酸化炭素の削減にも貢献できるとしている。
実際に2014年以降、宮城県内のラウンドアバウトで発生した人身事故は3件で死亡事故はないという。県警はさまざまなメリットがあるとして今後もラウンドアバウトの設置を増やしていく方針だ。
安全で災害に強いラウンドアバウト。もしかしたら、日本の交差点もラウンドアバウトが主流になっていくのかもしれない。