ロシアの民間軍事会社「ワグネル」の創設者エフゲニー・プリゴジン氏を憶えているだろうか?スキンヘッドの強面で、プーチン大統領に重用され、ウクライナ侵攻では前線で闘う事もあった。

プリゴジン氏は日本メディアでも度々報じられた
プリゴジン氏は日本メディアでも度々報じられた
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しかし弾薬の不足などでロシア政府と対立し、「軍のやつらはコソコソ逃げている」「ショイグ国防相はクソだ!」など、激しい言葉で批判するプリゴジン氏の動向は日本でも度々報じられた。2023年6月にはワグネルを率いてモスクワに向けて進軍する“反乱”を起こしたが、すぐに矛を収め、8月には乗っていた飛行機が墜落して死亡した。

死後もプリゴジン氏の児童書・Tシャツが話題になった
死後もプリゴジン氏の児童書・Tシャツが話題になった

そんなプリゴジン氏の墓に、銅像が設置された。現地を訪れると墓には新しい花が手向けられいて、プリゴジン氏がいまだ根強い人気を誇っていることが見えてきた。

サンクトペテルブルク郊外のポロホフスコエ墓地。入り口では花が販売されている
サンクトペテルブルク郊外のポロホフスコエ墓地。入り口では花が販売されている

普通の墓地が観光地に・・・?

ロシア第二の都市サンクトペテルブルク中心部から車で約30分のポロホフスコエ墓地。木々が生い茂り野生のハリネズミも時折姿を見せる自然豊かな墓地にプリゴジン氏の墓はある。

去年、搭乗していた飛行機が墜落して死亡したプリゴジン氏の銅像は6月1日に公開されたばかりだ。プリゴジン氏の誕生日に当たるこの日は、兵士や市民など多くの人が献花に訪れた。

「プリゴジンの墓へ」と書かれた案内版
「プリゴジンの墓へ」と書かれた案内版

ポロホフスコエ墓地は地元住民が数多く眠る、どこにでもある普通の墓地だ。

しかしプリゴジン氏の墓を訪れる人が多いためか、墓地内には大きな矢印の中に「プリゴジン氏の墓へ」と書かれた案内板が、墓地の入り口からプリゴジン氏の墓まで、所々に設置されていた。まるで観光スポットのようだ。

墓前に設置されたプリゴジン氏の銅像。左の墓石下には父ビクトル氏が眠る
墓前に設置されたプリゴジン氏の銅像。左の墓石下には父ビクトル氏が眠る

案内版に従って進むと、木々の緑の合間に鮮やかな白・青・赤のロシア国旗が見えてきた。すぐ隣には”プリゴジン氏”が立っていて、ひときわ目立っていた。

”プリゴジン”はロシアの英雄

父ビクトル氏の隣に眠るプリゴジン氏。

墓前に設置された銅像は等身大とみられ、向かって左側にワグネルの軍旗が、右側にはロシア国旗が高々と掲げられている。

民兵用のジャケットを着用。左手薬指の欠損も忠実に再現されている
民兵用のジャケットを着用。左手薬指の欠損も忠実に再現されている

一方で、銅像のプリゴジン氏は軍服ではなく民兵用のジャケットを着用していた。

その理由について地元メディアは、プリゴジン氏の母親が軍人ではない姿を望んだためだと報じた。母親の要望を受けて、銅像の製作者は「愛国心に溢れたロシアの英雄」を表現したという。

「追悼」と「尊敬」 訪問者は後を絶たず

墓には少ししおれた赤いバラと新鮮な白いカーネーションが手向けられていた。

墓前に供えられた花。赤色は「追悼」、白色のカーネーションは「尊敬」を意味する
墓前に供えられた花。赤色は「追悼」、白色のカーネーションは「尊敬」を意味する

また、記者が墓を訪れた8日は滞在時間が30分ほどだったにも関わらず、2組合わせて4人の男女が訪れ、銅像を眺めたり墓の写真を撮ったりしていた。今でも墓を訪れる人は後を絶たないようだ。

墓地を訪れたサンクトペテルブルクの男性は「プリゴジンはロシアの英雄。尊敬している。死ぬなんて信じられなかった」と話し、「(墓には)以前も来たが、今どうなっているのか見に来た」と答えた。

墓参りに訪れる人が絶えないこの墓地だが、墓の周りは物々しさも感じられた。

木々に溶け込むように設置された防犯カメラ(左)が常に銅像を捉えている
木々に溶け込むように設置された防犯カメラ(左)が常に銅像を捉えている

プリゴジン氏の墓の周囲には3台の監視カメラが設置されていて、そのうち2台は銅像を捉え、もう1台は訪れた人の姿を狙って置かれていた。ただ設置したのがワグネル関係者かどうかは不明だ。

政権不信の受け皿か

プリゴジン氏を偲ぶ動きは各地で起こっている。

「ワグネル」を題材にしたオンラインゲーム。プリゴジン氏に似た男性が登場する
「ワグネル」を題材にしたオンラインゲーム。プリゴジン氏に似た男性が登場する

墓だけでなくワグネルの活動拠点にも銅像が設置され、ジェット機の墜落現場には記念碑が設けられた。また、ロシアのゲーム会社はワグネルを題材にしたオンラインゲームを制作中だ。

2023年8月に亡くなったプリゴジン氏は根強い人気を誇っていて今もなお喪失感を覚える支持者も少なくなく、プーチン政権への不信感や不満の受け皿との見方もある。

フジテレビ
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国際取材部
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