レッサーパンダの繁殖数で全国有数の実績を誇る、福井・鯖江市の西山動物園。オスの「カイト」くんが、繁殖のために国外の動物園に移されることになり、6月3日、生まれ育った園を後にした。園の人気者の旅立ちに“名付け親”やファンが大勢詰めかけ、別れを惜しんだ。
多くのファン訪れ 最後の姿を見守る
翌日に“引っ越し”が迫っていることはつゆ知らず…スヤスヤと気持ちよさそうに眠るカイトくん。
この記事の画像(14枚)その表情を収めようとカメラを向けたり、愛おしそうに寝顔を眺めたり、多くのファンが集まっていた。
カメラを手にした女性は「カイトくんが最終日ということで、お別れに、カイトくんの勇姿を収めに来た」と話す。
13匹のレッサーパンダを飼育する西山動物園は、繁殖実績が高く、これまでに68匹が誕生している。
カイトくんも西山動物園で2022年6月27日に生まれ、性成熟する2歳になるのを前に、繁殖のため海外の動物園に移ることが決まったのだ。
最後の公開日となった2日、屋外展示場でのんびりと過ごすカイトくんに、ひときわ熱い視線を送る女性がいた。
「生まれた当初は、お母さんの後ろをついて回って甘えん坊な感じだったんですけど、最近は活発で立派な青年に育ってうれしいですね」と話すのはカイトくんの名付け親、山本弥生さんだ。
“大空を舞うカイト(凧)のように、たくましく元気で伸び伸びと育ってほしい”との願いを込めたという。
「鯖江で会えるのが、きょう最後ということで、どうしても元気な姿を目と心に焼き付けたいという思いで…元気で幸せでいてほしい」と話し、カイトくんに温かいまなざしを送っていた。
大勢の子供たちも訪れ、「レッサーパンダ、かわいい子だった」「また戻ってきてほしい」などと別れを惜しむ声が聞かれた。
海外の園へ"新しい場所でも元気で"
そして移動日の3日。ケージに入れられたカイトくんは辺りを見回し、ちょっと緊張した様子だ。
生まれたときから世話をしていたという飼育員の大出章平さんは「成長を見守ってきたのでさみしい気持ちはありますが、カイトのための搬出でもあるので…」と話していた。
西山動物園によると、血縁関係が近い個体が多いため、カイトくんの繁殖のためには、違う園に移る必要があったという。
カイトくんが移るのは、新たにレッサーパンダの飼育を始めるインドネシアの動物園。
東京の多摩動物公園を経由して、現地へと向かうことになっている。
飼育員らが見守る中、カイトくんは生まれ育った西山動物園を去っていった。
カイトくんがいなくなった園内には、ファンから寄せられた数多くのメッセージが残されていた。
飼育員の大出さんは「新しい場所でも元気で頑張ってほしいです。ゆくゆくは繁殖を目的とした移動なので、子孫を残してくれたらうれしいです」と話していた。
実は絶滅危惧種 飼育数は日本が1位
西山動物園は無料で開放されていて、福井県民は子供の頃から訪れる機会が多いこともあり、レッサーパンダはとても身近な存在だ。
しかし実は、IUCN(国際自然保護連合)が、希少動物のリストで絶滅危惧種に指定する貴重な存在だ。
ワシントン条約でも、国際的に厳しく取引が制限され、手厚く保護されている。
レッサーパンダには「ネパールレッサーパンダ」と「シセンレッサーパンダ」の2種類があり、カイトくんと同じ種類の「シセンレッサーパンダ」は、西山公園を含む全国61の施設で242匹が育てられていて、日本は世界一の飼育数を誇る。
少し古い数字だが、2017年には日本も含めた世界での飼育数は約350匹で、実に7割を日本で飼育していることになる。
レッサーパンダの保護や繁殖には、動物園の国際的なネットワークで取り組んでいて、西山公園からの海外移送は2020年に韓国に送られたのが初めてで、今回が4年ぶり2例目となった。
(福井テレビ)