G7首脳が核軍縮文書「広島ビジョン」に合意した広島サミットから1年となった5月19日、広島市の平和公園内に「G7広島サミット記念館」がオープンした。広島サミットのレガシーはどう引き継がれているのか。
3メートルの円卓など約100点を展示
G7広島サミット記念館には、サミット初日のワーキングディナーで使用された直径約3メートルの円卓など、約100点のゆかりの品が展示されている。
![首脳たちが核軍縮・不拡散について意見を交わした円卓](https://fnn.ismcdn.jp/mwimgs/1/d/700mw/img_1dd1956dd2976e95f87a01ea4b1ecc7c191205.jpg)
建物は原爆資料館の出口の真前にあり、入館無料。外国人観光客が熱心に展示を見る様子もあった。
![首脳たちの芳名録をじっと見る外国人観光客](https://fnn.ismcdn.jp/mwimgs/e/b/700mw/img_eb050019033752d4c2187a4d9b95df97195753.jpg)
イギリスから来た観光客は「G7サミットのニュースは見ていたが、ここでサミットが開かれたことを実感するきっかけになった」、ドイツから来た観光客も「サミットが開かれたのはニュースで見ました。この記念館の展示を見て興味深かった」と話す。
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また、フランスから来た観光客は「フランスのマクロン大統領が各国首脳と一緒に広島サミットの写真に納まっていることを誇りに思う。絶対にフランスに戻ったら広島で何が起きたのかを伝えたい」と、被爆の実相に触れた思いを話してくれた。
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首脳らが感情を込めて書いた芳名録も
この記念館を、サミット研究で知られる名古屋外国語大学の高瀬淳一教授と共に訪れた。
![記念館の展示を見るサミット研究者の高瀬淳一教授](https://fnn.ismcdn.jp/mwimgs/e/a/700mw/img_ea6869c343b530af9e850a9a5890f149220669.jpg)
ーー最も印象に残った展示物は?
「各首脳がお書きになった芳名録の展示が非常に印象に残りました。他のサミットで書かれたものもどこかに展示されていますが、広島サミットの場合、原爆資料館を見て、それから被爆者の話を聞いた後に各首脳たちが感情を込めて書いた言葉ですので、じっくりと見ていただきたいなと思います。配偶者の方、広島を電撃訪問したウクライナのゼレンスキー大統領の言葉もあります」
![記念館に展示されているG7首脳たちの芳名録(レプリカ)](https://fnn.ismcdn.jp/mwimgs/3/5/700mw/img_35aa4568781c52763b018da2b87813c2136151.jpg)
アメリカのバイデン大統領は原爆資料館を見学した際、芳名録に「世界から核兵器を最終的にそして永久になくせる日に向け共に進んでいきましょう」と書き残している。
記念館を「もっと入りやすい外観に」
一方、高瀬教授は展示内容について“物足りなさ”も感じている。
「サミットの研究者としての立場からいうと、サミットは国際会議であって、首脳たちが共通の政策について合意し、それを文書化する。歴史的に正式な国際上の約束事になるわけですから、展示のどこかに「広島ビジョン」が作られたことも記録として残しておいたり、首脳宣言の文言や、広島の地でこういう約束がなされたという説明があってもいいかなと感じました」
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国際会議の成果について、具体的な展示がほとんどないのではないかと指摘。
広島サミット県民会議事務局によると「サミットを知らない人にまずは知ってもらうために、わかりやすい展示内容を意識した」ということだが、高瀬教授は「知ってもらうためだとすれば、G7広島サミットのロゴを外に出すなど入りやすい建物にしてもらいたかったですね。外観にもう少し工夫もあってもいいかな」と助言する。
確かに、記念館は目立たない外観で、目に止まらなければ通り過ぎてしまいそうである。事実、訪れる人の中には「広島サミットの開催を知らなかった」という声も聞かれた。
![平和公園内の原爆資料館前にあり、立地はいいのだが…](https://fnn.ismcdn.jp/mwimgs/6/2/700mw/img_621c2f5a9a888d094804d34783994558168183.jpg)
“あのアイス”を1年で千人が食べた
サミット開催前から広島県内では経済効果に期待が高まっていたが、実際はどうだったのだろう。高瀬教授と一緒に向かった先は、サミット開催時にアメリカのバイデン大統領が宿泊した「ヒルトン広島」。
![広島市中区のホテル「ヒルトン広島」](https://fnn.ismcdn.jp/mwimgs/1/1/700mw/img_1111e905d2a67c73531ab4d7e6d62393208364.jpg)
ヒルトン広島の潮田まや副総支配人は「大統領はご宿泊の際にチョコチップのアイスクリームとオイスターのサブレをお召し上がりになり、その後、お客様からお問い合わせを多くいただきました」と効果を実感している。
![“アイス好き”なバイデン大統領が食べたチョコチップアイスクリーム](https://fnn.ismcdn.jp/mwimgs/f/4/700mw/img_f4b0b39bc9a99f94838b2589787ba075146138.jpg)
バイデン大統領の好みを考えて作られたチョコチップアイスクリームを、高瀬教授にも味わってもらった。
「甘さ控えめで上品なクオリティの高い味」
潮田副総支配人の話では、このチョコチップアイスクリームをすでに1000人以上のお客が食べたという。
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「プラス効果は金額にできないほど」
ヒルトン広島に宿泊する外国人客の割合は、コロナ禍だった2022年の開業時は3割ほどだったが2024年は5割まで増えている。潮田副総支配人は「広島はサミット以前から非常に注目を浴びていて、もちろんサミットの影響が大きかったと感じています。さらに国際線が回復し始めたということで多くの方にお越しいただけていると考えています」と話す。
![バイデン大統領が宿泊したスイートルーム](https://fnn.ismcdn.jp/mwimgs/0/9/700mw/img_09a31a36576a98201517b1e12459fa72209889.jpg)
インバウンド需要の増加は、平和公園を訪れる外国人観光客の多さからも感じられる。
![多くの外国人観光客が訪れる広島市の平和公園](https://fnn.ismcdn.jp/mwimgs/6/d/700mw/img_6d6b31c549703ebb4228089c4b80e2be220025.jpg)
アフターサミットについて高瀬教授に聞いた。
ーーG7広島サミットから1年、効果を感じますか?
「広島はもともと観光都市で、円安の影響もありますので一概にG7サミットの効果があったとは言えないかもしれませんが、私としては世界にいろんな映像が流れて、それをきっかけに観光客が増えたのではないかと思っています。広島は被爆の街というイメージが強いが、おいしいものがある街だということも知れ渡った。プラスの効果は金額にできないくらいあったと思います」
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G7広島サミットが残したもの。1年がたち、目に見えるレガシーは記念館に集約された。「広島で何が起きたのかを伝えたい」と言ったフランス人のように、一人でも多くの観光客が平和への思いを母国へ持ち帰ってくれれば…。その効果は計り知れない。
(テレビ新広島)