上川陽子外相の「女性がうまずして何が女性か」という発言が波紋を広げている。上川外相はすでに発言を撤回し釈明したが、危機管理広報の専門家は、「うむ」という表現は聞き手にとって自然に出産を連想させやすく、多様な背景を持つ女性がいる中で誤解を招きやすいため、避けるのが賢明だったと指摘する。

上川外相の発言は何が問題?

発言があったのは18日、地元である静岡県知事選での女性支持者を集めた集会での演説だ。上川外相は応援演説の中で「ようやく決断をしていただいた。大きな大きな命を預かる仕事です。その意味で今一歩を踏み出していただいたこの方を私たち女性がうまずして、何が女性でしょうか」と発言。この発言の後、女性支持者からは拍手が沸き起こっていた。

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その後も、「実は私も初陣の時に本当に皆さんうみの苦しみにあるが、ぜひうんでくださいねと最後の演説で申し上げたが、いつも彼のことを思うと、その場面がばーっと頭によぎってくる。産みの苦しみは、今日男性はいらっしゃるが本当すごい」と話していた。

上川外相の発言について、危機管理広報の専門家、日本リスクコミュニケーション協会の大杉春子代表理事は、「うまずして何が女性か」は、一部の人々にとって感情的に響く「出産」を連想させたため、批判を招いたと指摘。その上で、日本語では「うむ」は、主に出産を意味する場合に使われるため、他の意味合いで使用したとしても、聞き手にとって自然に出産を連想させやすい表現であり、公人としての責任を考えると、すべての女性が出産を経験するわけではなく、多様な背景を持つ女性がいる中で誤解を招きやすいため、こうした表現は避けるのが賢明だったとしている。

「切り取り」指摘も

一方で、この発言を巡っては「切り取り」ではないかという声もあった。

当初の一部の報道では、「うまずして」が漢字で「産まずして」になっていて、さらに上川外相の発言のその前に言っている「一歩を踏み出していただいたこの方(知事選候補者)」が抜けていた。

この「切り取り」ではないかという指摘について大杉氏は、メディアには発言全体を伝える責任がある一方で、公人もその発言がどのように受け取られるかを考慮する必要があると指摘する。上川外相の発言は、どのような文脈であっても「うまずして何が女性か」という部分が不適切であったことには変わりない。ただ、この問題は発言の一部を切り取って過剰に反応している側面もあり、批判を招いた後に発言を撤回し釈明したことは適切な対応であり、この問題が必要以上に騒ぎ立てられるべきではないとしている。

上川外相と言えば、次の首相候補にも名前が挙がっている。子ども2人の母親でもある上川外相は、少子化担当相や法務相、自民党の幹事長代理などを歴任してきた。現在は外相として岸田首相を支えていて、最新の世論調査の次の首相候補でも、石破元幹事長、小泉元環境相に次ぐ3位に挙げられている。

上川外相は、2023年9月の外相就任時に「約20年ぶりの女性の外務大臣であり、非常に重要な役割を担う機会を与えていただいた」とした上で、「女性閣僚として、女性ならではの視点を、組織のあり方や、働き方改革にも生かしていきたい」と述べていた。

ポスト岸田とも言われるだけに、上川外相の今回の発言の注目度も増している。
(「イット!」 5月20日放送より)

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