両校の威信をかけた伝統の戦い「仙台一高二高定期戦」。仙台で明治時代から続く、歴史ある硬式野球の定期戦は、その試合だけでなく前哨戦となる応援合戦から、両校の間には火花が散る。仙台市中心部を練り歩くその熱気を取材した。
その歴史は100年以上!伝統の定期戦
この記事の画像(11枚)2024年は5月11日に開催された「一高二高定期戦」。宮城県内で「ナンバースクール」と呼ばれる、歴史ある県立高等学校のうち、かつて男子校であった仙台第一高等学校と仙台第二高等学校の2校がぶつかり合う硬式野球部の定期戦は、100年以上前、1900年に交流試合から始まったとされる。
これまでの成績は一高が35勝、二高が32勝と拮抗。しかし、この3年間は毎年、一高が勝利をあげており、特に2023年は7回まで両校無得点で進んだ試合の末、ノーヒットノーランで一高が試合を制した。
試合をより熱く盛り上げる両校の応援
“杜の都伝統の一戦”をより熱いものにしているのが、両校の応援だ。
一高は下駄に袴姿のバンカラ。二高は白いスーツのような学ラン姿のハイカラ。両校が正反対のスタイルで、それぞれの学校を奮い立たせる。
異様な熱気に包まれる商店街
定期戦の2日前となる5月9日、仙台市中心部は異様な雰囲気に包まれた。
「一高だ一高だ!」仙台市中心部の商店街に響き渡る「一高」コール。その一方で…
「二高二高!」二高コールも負けていない。試合の前哨戦として行われた「行進」だ。
応援団を先頭に、総勢1000人を超える両校の生徒たちが商店街を練り歩く。一高ではアピール行進、二高ではPR行進とそれぞれ呼ばれているこの初夏の風物詩には、定期戦同様、熱狂的なファンがいる。「行進」を一目見ようと、商店街は見物客でごった返していた。
この春、孫が二高に入学したという女性は、茨城からはるばる訪れたという。勝敗予想を聞かれると「そりゃ二高ですよ!」と笑いながら答えてくれた。
同じく二高に息子がいるという女性は、宮城出身ではないため、今回初めて行進を見たという。幼い妹は、兄の雄姿を「かっこよかった」と見送った。
集結した両校…公園で火花を散らす
約2時間にもわたる活気あふれる行進の最後は、仙台市青葉区大町の西公園に集結する。ここで、定期戦と同様、絶対に負けられない応援合戦が繰り広げられる。
両校が大きな円になって相対し、試合への意気込みや相手校への対抗心を燃やした「檄文」を読み上げ、野次を飛ばしあう。まさに意地と意地のぶつかり合い。両校が火花を散らした。
あまりの迫力に記者も気圧される中、大きな声を出していた生徒の一人に話を聞くと、
「野次は敬意。なんだかんだ相手のことを尊重し合っていて、お互い無くてはならない存在だと思う。試合が楽しみ。」と、心の内を聞かせてくれた。
79回目の伝統の一戦…今年の勝者は
2024年で79回目を迎えた「一高二高定期戦」。両校ともに負けられない戦いは、プロ野球東北楽天ゴールデンイーグルスの本拠地、楽天モバイルパークで行われた。
試合開始前にも両校の応援合戦が行われ、これから始まる戦いをさらに盛り上げていく。
試合は1回表に二高が先制するも、その裏の攻撃で4点を奪うなど、春のセンバツ21世紀枠候補校にもなった一高が地力の差を見せつける。徐々に点差は開いていき、最終的には11対6で一高が勝利し、4連覇を果たした。
伝統は続いていく
一高の勝利で幕を閉じた2024年79回目の一高二高定期戦。杜の都・仙台を熱く盛り上げ、異様な熱気に包む試合と応援は、両校の生徒、家族、OB、OG…さらにはこの伝統を楽しむ宮城県民たちをも巻き込んで、来年も再来年も続いていく。
(仙台放送)