寄贈された余った食料品などを、生活困窮者などに無料で配布を行う「フードバンク」。今、“物価高”の影響で“食料不足”に陥っているといいます。

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山梨県南アルプス市にある「フードバンク山梨」。去年3月に撮影された倉庫内の写真では、寄贈された食料品でぎっしりと埋まっています。

しかし、5月6日に取材を行った際は、いっぱいだった棚の上段は、からに…。

段ボール箱で埋まっていた地面には、ほとんど荷物が置かれていませんでした。

「フードバンク山梨」米山けい子 理事長:
前年と比べましても、20~30%市民の皆さまからの、食品のご寄付が減っておりまして、物価高騰の影響がすごくあるのではないかなと。この状況ですと(支給の中身を)半分ぐらいに減らさないと難しいのかなと。

兵庫県姫路市のNPO団体「フードバンクはりま」でも、缶詰やレトルト食品などがほとんど底をついてしまったといいます。

「フードバンクはりま」辻本美波 理事長:
2023年度において、一年間の量でいうと初めて減りました。

去年には山のように寄贈されていたお米が激減。4月には残り30kgの袋が4つのみとなってしまいました。

このままでは1カ月もたないと考えた団体は、寄付金などを使い米袋を5つ購入する事態になったといいます。

さらに、家庭で余っている食品を集めて、支援団体などに寄付する「フードドライブ」活動を行っている現場を取材すると、物価高による“寄付する側”の悩みも聞こえてきました。

フードドライブ参加者(40代):
なかなか家に余っている食品がなくて、そうめん1束しかなくて、せっかく持ってくるので、同じそうめんを買い足して持ってきました。

フードドライブ参加者(60代):
これは食べないだろうなとかいうものは出したりしていたけど…。(寄付することは)ちょっと減っていると思います。子ども用のお菓子とかは、前は買っていましたが、減ってきました。

寄付をしたい気持ちはあっても、自身も物価高で生活が苦しい中なかなか寄付を十分にすることができないといいます。

この危機的状況に、フードバンクの支援を受けている人たちも、不安を募らせていました。

支援で受け取った食材で、子どもの昼食を作るシングルマザー
支援で受け取った食材で、子どもの昼食を作るシングルマザー

「めざまし8」が取材したのは、山梨県内で3人の子どもと暮らすシングルマザー。

約3年前に離婚し、現在は非常勤の看護師として働くも、月収は手取りで約16万円。少ない時だと12万円ほどだといいます。

去年までは、年2回の支援を受けていましたが、4月、娘が高校へ進学したことで給食がなくなり食費が増加。月に1回の支援を受けるようになったといいます。

子ども3人と暮らすシングルマザー(40代):
この先(フードバンクの)頻度が少なくなるとかだったら、もう本当にどうしていったらいいんだろうって思いますね。不安しかないです。

「非常にひっ迫」フードバンクの現状

多くの支援団体が食料品の“寄付減少”に嘆く中、全国フードバンク推進協議会の代表理事である米山廣明氏に、現状を詳しく伺いました。

全国フードバンク推進協議会 米山廣明 代表理事
全国フードバンク推進協議会 米山廣明 代表理事

ーーどこのフードバンクでも配給の量を制限しないといけないくらい、食料やお金が集まるのが減っているのでしょうか?
全国フードバンク推進協議会 米山廣明 代表理事:

これまでの調査では約4割のフードバンク団体で、食品の寄付が減っているという現状があります。この4割をどう捉えるかというところなんですけれども、物価高以前の状況では、ほとんど全てのフードバンク団体で食品の寄付量というものが増えてきていましたので、その当時と比べると非常に異常な状況だと思いますし、現場としてもひっ迫しているということは言えると思います。

フードバンクの問題は人ごとではありません。
米山氏によると、ある日突然、支援を受けなくてはいけない状況になってしまう人も少なくないといいます。

ーー突発的な事故や病気でフードバンクを利用する人も多いのでしょうか?
米山廣明 代表理事:

結構多いですね。例えばけがをして仕事を失ってしまうということもありますし、シングルマザーで収入が低いのでそれを補うために無理な働き方やダブルワークなどを続けていると、ストレスや疲労がたまって体調を崩してしまう、病気になってしまう、あるいはメンタルを壊して“うつ”になってしまうと、結果として働くことが難しくなってしまうという方も、私たちが支援している方の中にはたくさんいらっしゃいます。
シングルマザーが最近増えているという傾向はあります。

“食品ロス”をいかす取り組み

個人の寄付は限界があるものの、企業側からの寄付についてはどうなのか?

米山氏によると、「食品ロス」などで本来食べられるに廃棄されている食品は523万トン。
その中で事業が廃棄した食品が279万トンありますが、うち1万トン程度しかフードバンクに寄付されていない現状があるといいます。

理由として、食品事故がおこるリスクや配送料などのコスト負担、さらに寄付を受けるフードバンク側の倉庫の大きさや管理体制が不十分であることなどもあげられます。

このような状況を打破するため、「北海道フードバンクネットワーク」では、団体が調整役となり、企業とフードバンクの間を仲介する取り組みを行っています。

具体的には、企業から寄贈可能な品目や量を聞き取り、道内にある15のフードバンクに確認し企業に報告。

さらに物流会社と連携し食品を管理・発送。余った野菜を都市部に、レトルトなどを農業地区にと寄贈とニーズのバランスを均一化し、無駄をなくしているということです。
(めざまし8 5月14日放送)