暑かったゴールデンウィークから一転、5月第2週の半ばは各地で気温が下がった。この寒暖差は体に堪えたのではないだろうか。
また週末は暑さが戻り、11日(土)は沖縄、九州から北海道にかけての広い範囲で、25℃以上の夏日となる予報だ。また、関東の内陸部など30℃以上の真夏日になる所もありそうだ。

まだ5月だからと油断してはいけない。こまめに水分補給をし、屋内では適切に冷房を使うなど対策をして熱中症に気をつける必要がある。

5月から「熱中症に注意」

今から熱中症対策?と思われるかもしれない。実は、熱中症は夏の暑い時期に限らず、5月からも油断はできないのだ。実際毎年5月頃から熱中症の疑いで救急搬送される人が増え始めている。

2024年も既に、5月4日には都内で7月上旬並みの暑さとなり、午後9時までに13歳から90歳の男女10人が熱中症の疑いで救急搬送されたという。5月とは言え、熱中症になりやすい条件が重なれば、これまで一度も熱中症になったことがないような人でも熱中症になることがある。

この熱中症を予防するため、熱中症を引き起こす条件を見ていく。

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まず環境面で言えば、気温が高く、湿度も高く、風が弱く、日差しが強いという気象状況と、閉め切った室内、エアコンがない、といった自分の周りの環境がある。

自分の体の面では、高齢者・乳幼児・肥満、障害のある方、糖尿病や心臓病などの持病、低栄養状態、脱水症状、体調不良などが条件となる。

さらに行動面では、激しい運動、慣れない運動、長時間の屋外作業などに注意が必要だ。

これらの条件が組み合わさり、晴れて日差しが強く、気温が高い日や、例えば気温が25度以下とそれほど高くはなくても雨や曇りの日など湿度が高くムシムシする日、急に暑くなった日に熱中症は起こりやすくなる。

また見落としがちだが、熱中症は屋内でかかることが多い。屋外だけではなく、風通しの悪い室内でも注意が必要だ。また、高齢者や乳幼児、持病のある方も熱中症になりやすいので、周りの人が気を配る必要がある。

熱中症予防のために飲み過ぎ注意 イメージ
熱中症予防のために飲み過ぎ注意 イメージ

ビールの美味しい季節になってきたが、飲みすぎによる二日酔いや、寝不足などの体調不良のとき、水分補給がなかなかできないときにも、熱中症になる危険性は十分にある。

どの要因で熱中症を引き起こすかは、その人の置かれている状況や条件によって異なってくる。熱中症になってしまってからでは大変なので、今から自分事として熱中症対策を行ってほしい。

「暑熱順化」とは?どんな対策がある?

他に熱中症対策として、今から暑さに強い体づくりをすることもおすすめだ。

体が暑さに慣れることを「暑熱順化」と言う。本格的な夏になって暑い日が続くと、体は暑さに慣れてきて、暑さに強くなる。しかし、今の時期は私たちの体はまだ暑さには慣れていない。

この「暑熱順化」への近道として、本格的な夏がやってくる前の今から、無理のない範囲で汗をかくというのがある。

具体的に、日常生活でできる「暑熱順化」するための動きや生活をいくつか挙げてみる。

ウォーキングの場合は1回30分程度、ジョギングの場合は1回15分程度とし、頻度は週5日程度と無理のない範囲で行う。運動後に、コップ1~2杯、牛乳など糖質とタンパク質を豊富に含んだ食品をとるとより効果的だ。

また、シャワーだけではなく湯船にお湯をはって入浴するのも良い。入浴による適度な発汗は暑熱順化に有効だが、入浴前と入浴後には忘れずに水分補給をしよう。

今年の夏は…暑い!!

暑さでスタートした5月だが、この先の暑さの傾向も気になるところ。9日に気象庁から「早期天候情報」によると、5月15日頃から全国的に気温が更に上昇し、21日頃にかけて気温がかなり高い予想となっている。

このため気象庁は、熱中症対策など健康管理への注意を呼びかけている。

また、2024年は太平洋高気圧の西への張り出しが例年より強まることなどから、日本付近は暖かい空気に覆われやすく、5月~7月にかけての平均気温は3か月を通して全国的に高いと予想されている。熱中症対策がますます大切になってくる。

喉が渇く前に水分補給を

熱中症対策をいくつか挙げてきたが、日頃から体調管理を心がけ、こまめな休憩や水分補給・塩分の補給をすることが重要だ。喉が渇いてからでは遅いので、時間を決めるなどして喉が渇く前に水分を摂るのがポイントだ。

喉が渇く前にこまめな水分補給を イメージ
喉が渇く前にこまめな水分補給を イメージ

また、無理な外出は避けて涼しい場所で過ごすようにし、屋内では冷房を使うこと。部屋の中の見えやすい場所に温度計(できれば湿度も分かるもの)を置き、室温に注意することが大切だ。

人は同じ環境に長く居ると、感覚的に慣れてしまうそうだ。そうなると、実際には温度や湿度が上がっていることに気づかないこともあるという。熱中症予防には、まず温度に気を配る必要があり、部屋には温度計、できれば湿度計も置いて、こまめにチェックする習慣をつけるのが有効だ。

涼しい環境への避難が大切だが、自宅のエアコンが故障する事もあり得る。そのようなときには、衣服を緩めたり、皮膚を濡らしてうちわや扇風機で扇いだり、氷やアイスパックなどで冷やしたりすることも対策になる。

服装の工夫「煙突効果」とは?

また、服装を工夫するのも熱中症対策の1つになる。

服から最も効果的に熱を逃がす方法は、「服の上と下に空気の通り道」を作ることだ。服の襟元、袖口、裾などの開いているところは、風の通り道という意味では住居に例えるなら窓に相当する。服の中の換気(風の通り道)を良くするには、下から上に向かって垂直方向に風が抜けるようにすることがポイントだ。暖かい空気は上に上がる性質があるので、熱を上(服の外)へと逃がすことができる。これを「煙突効果(えんとつこうか)」と言う。

具体的には、シャツはズボンの中に入れるより外に出した方がいいし、Aラインやシフォン素材などふんわりと風通しの良いファッションがおすすめとなる。

熱の逃がし口が1か所しかない服の場合、効果的な順番は①上が開いていること、②次は横の部分が開いていること、③そして下が開いていることだ。

衣替えにはまだ早いが、急に暑くなる日があって服装選びに悩んだときには、この煙突効果を活かした服装をするのも良さそう。

熱中症対策は他にもたくさんあり、どれか1つをやれば絶対に予防できるというものではない。皆さんが日々できることをいくつか組み合わせていくことが大切となる。

【執筆:日本気象協会】

日本気象協会
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