2023年5月8日、新型コロナウイルスが季節性インフルエンザなどと同じ感染症法上の「5類」に移行した。健康被害だけでなく、商業施設の営業自粛やイベントの中止・延期など、社会に大きな影響を与えた「コロナ禍」。5類移行から1年、人々の新型コロナに対する受け止め方を取材した。

「風邪と一緒のような感覚」

南九州一の繁華街である鹿児島市・天文館。ゴールデンウィーク最終日、道ゆく人の口元を見てみると、新型コロナの流行以降、当たり前となったマスクを着けている人もいれば、着けていない人もいる。

鹿児島市内の様子
鹿児島市内の様子
この記事の画像(16枚)

「5類」移行から1年、今の新型コロナに対する受け止めを聞いてみると…。

20代女性:
今は(コロナのことを)報道されていないこともあって、自分たちにとっては風邪と一緒のような感覚になっているのは事実かな

ほかにも「前は(コロナへの)怖さがあったが、今は薄れた」、「今は(感染者が)少なくなってきているからあまり怖くない」といった、コロナに対する受け止め方が変わりつつあることが感じられる答えが目立った。

「コロナの最前線」にも変化

新規採用職員の辞令交付式など、大人数が参加するイベントで使われる鹿児島県庁2階の講堂。

毒性の強いデルタ株がまん延し夏休み明けの学校では時差登校が始まった2021年9月、この広い空間は新型コロナに対応する県の各部署が集結する「コロナの最前線」となった。

医療審議監として、感染者の搬送や入院調整などに携わった中俣和幸さんは、当時を「『これはもう、災害と一緒だ』と。『災害の時はみんなここに集まるだろう』ということで、ここに集められた」と振り返る。

ここに集まっていたコロナチームは、新型コロナの5類移行から10カ月後の2024年3月に解散し、現在は感染症対策課がコロナ対策を継続している。

新型コロナの5類移行に伴い、変わったことのひとつに感染者数の把握の仕方がある。

2023年5月以降の鹿児島県内における新型コロナの感染状況を示したグラフには、定点医療機関1つあたりの週ごとの感染者数が示されており、2023年7月に定点当たり23.54人となるなど、大きな変動を続けていることがわかる。
ただし、定点把握はそれ以前の全数把握と比べ、感染の規模をイメージしにくい側面があるという。

中俣医療審議監は「時間的、横の広がり(の確認)。もう一つはゲノム解析を定期的にやっている。今までの株に比べて感染力が強いとか、毒性が強いとなったら、それは(感染者が)少数でも注意喚起する」と説明する。

県庁2階講堂のコロナチームが解散してからも新型コロナへの警戒を続ける中俣さんは、コロナに対する人々の意識の変化を強く感じている。

鹿児島県医療審議監・中俣和幸さん:
のど元過ぎて熱さ忘れるという感じがして、県庁舎でも消毒液の減り方が少なくなってきた。ということは、あまり消毒をしていないのかなと

治療費が高額になる場合も

鹿児島市のクリニックでも、コロナへの意識の変化を伺わせる光景があった。入ってすぐ、目立つ位置に貼られたポスターの中に、新型コロナに関するものは1枚もなかった。

コロナに関するポスターは1枚もない
コロナに関するポスターは1枚もない

このクリニックの青山浩一院長は、クリニックを訪れる最近のコロナ患者の様子について「以前はコロナにかかったらガックリとして、天を仰いでどうしようと。今は周りの人も本人も1回2回かかって、『こんなもので済んだな』とちょっと落ち着いてきた感じ」とその変化を語った。

新型コロナは株の変異に伴ってその特徴を変えてきた。最近の感染者に見られる症状は…。

ますみクリニック・青山浩一院長:
オミクロン株の時は1日40人ぐらい発熱で来て、半分がコロナ陽性。残りの半分も2、3日して検査したら、陽性の人がいた。今は1日の発熱(来院)が10人ぐらい。コロナ陽性は1人ぐらいで随分減った。インフルエンザに比べるとちょっと熱が低い。ただ、のどの痛みやせき、たん、鼻水、呼吸器の症状は以前と変わらずある

医療費の公的負担も2024年3月で終了し、4月1日からコロナの治療費は通常の治療と同様の「自己負担」となった。

ますみクリニック・青山浩一院長:
患者の(保険の)割合で負担額は異なるという。3000円とか4000円とか。抗ウイルス薬を使っていた病院もあると思う。当時は公費負担で無料で出していたが今は1万円とか2万円とか高額となる

復活の兆候見せるも脆弱性浮き彫りに

そんな中、コロナ禍でいったん失われながらも、復活の兆候を見せつつあるのが、インバウンドだ。

7日、尾翼に花のデザインをあしらった旅客機が鹿児島空港に着陸した。4年ぶりの再開となるチャイナエアラインの鹿児島―台湾線の国際線定期便だ。

これでコロナ禍前に4路線あった鹿児島空港の国際線の定期便は、ソウル・香港・台湾の3路線が再開した。しかし、定期線再開までの動きは必ずしもスムーズとは言えず、残る上海線の定期便は再開のめどが立っていない。

鹿児島空港ビルディング株式会社・古薗宏明社長:
県経済界のインバウンドに対する期待は重く感じていた。ただ、足元のハンドリング体制が整わず、鹿児島空港ビルディングとしても残念な思い

国際線定期便の再開を難しいものとしたのは、駐機場での航空機の誘導や貨物コンテナの運搬など、地上支援業務を担当するグランドハンドリング要員の不足だ。

ハンドリング要員の派遣を請け負う南国交通によると、コロナ禍前は約400人いたハンドリング要員は、現在は360人程度と、決して十分な数ではない。

古薗社長は「鹿児島空港は国内線、離島便を含めて80便が出発して到着する便数の多い空港なので、ハンドリングの不足が国際線に回す余力がない、という事情もある」と現状を話す。

様々な業界がコロナ禍前のように動き出そうとして、人手不足という問題に直面する中、古薗社長は「コロナ禍で活動制限、移動制限等もあって、航空産業のリスクが認知されてしまったので、働く場としてのコロナ禍後の対応はなかなか難しい」と、働く場としての航空産業の脆弱(ぜいじゃく)性が、コロナ禍で浮き彫りになったことを懸念する。

“コロナ禍の終わり”に慎重な声多く

新型コロナ5類移行から1年。社会や人々のコロナに対する捉え方が変わりつつある中、街でコロナ禍が“終わった”のか聞いてみた。

――コロナ禍は終わったと思いますか?

40代男性:
まだずっと続くと思いますよ。変異株もあるし、なくなることはない

「終わっていないと思う。まだみんな普通にマスクをして予防している」、「終わったという感じよりもむしろ共存のイメージ」といった声も聞かれ、ほとんどの人が「コロナ禍」の終わりには慎重な意見を示した。 

5類に移行したとは言え、新型コロナがこの世から消えてなくなったわけではない。 人々が「コロナ禍が終わった」と考えるようになるのには、まだ時間がかかりそうだ。

(鹿児島テレビ)

鹿児島テレビ
鹿児島テレビ

鹿児島の最新ニュース、身近な話題、災害や事故の速報などを発信します。