29日、円相場は一時1ドル=160円を超える円安に進んだが、急反転して154円台まで円高方向に動いた。市場は為替介入の可能性を意識しており、専門家は、この変動が連休中の市場の薄さと投機的な動きによるものと指摘する。

急な円高傾向で介入観測広がる

一時1ドル=160円を超えて円安が加速していた円相場は、一転して円高方向に動いた。荒い値動きの中、市場では為替介入の可能性を意識した取引が続いている。

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円相場は一時1ドル=160円台まで円安が進んでいたが、29日午後1時過ぎに流れが変わり、1時間ほどの間に4円以上、円高方向に動いた。

その後、1ドル154円台をつける場面もあり、市場関係者の間では「政府が海外市場で円買い介入に踏み切ったのでは」との観測が広がった。

財務省・神田財務官:
為替介入の有無について、申し上げることはない。引き続き、必要に応じて適切な対応をしていきたいと考えている。

29日午後6時過ぎ、神田財務官は、「投機による激しい為替変動がもたらす悪影響は看過しがたい」として、「24時間365日対応できる準備をしている」と述べた。

4月29日午後11時40分現在の円相場の値は、156円67銭〜69銭となっている。

急激な変動は消費に悪影響も

「Live News α」では、市場の分析や企業経営に詳しい経済アナリストの馬渕磨理子さんに話を聞いた。

堤礼実キャスター:
一時160円台まで加速した円安が154円台にまで戻しました。どうご覧になりますか。

経済アナリスト・馬渕磨理子さん:
もともと、連休中は、日本の市場参加者が少なくなりますので、マーケットが投機的になりやすく、円安が加速する傾向があります。このタイミングで為替介入をするのでは、といった予想がありました。

ただ、「為替介入」が実際に行われたかどうかは、正式な公表を待つ必要があります。

急速な為替変動は国民生活にも影響して、消費を控えてしまう可能性があるので、スピードを緩めることは必要なように思います。

堤キャスター:
この連休も海外旅行に行きたかったけど円安が進んでいるため、あきらめたという方もいるかもしれませんね。

経済アナリスト・馬渕磨理子さん:
円安によってインバウンド客は増える一方、日本人の海外旅行や留学には不利となります。

「円の安さは、日本の国力が落ちているからだ」そんな声もありますが、この声には飛躍があり、この円安は日米の金利差で説明できるものです。

アメリカは、物価上昇が抑制できないため、利下げができません。一方、日本はマイナス金利を解除したものの、緩和的状況が続いているため、高い金利に引き寄せられるように、ドルに資金が流れています。

日本の国力と為替の関係についていうと、むしろ、円高だった時期に国内の工場が海外に出ていき、日本の競争力を低下させた過去もあります。

確かに円安は物価高を招く場合もありますが、景気の回復局面では、マクロの視点ではメリットがあることにも目を向けるべきです。

海外からの投資で国内回帰を

堤キャスター:
それは、どういうことでしょうか。

経済アナリスト・馬渕磨理子さん:
当然、円安は輸出には有利になります。さらに、海外から日本への投資が盛んになり、日本企業の国内回帰を促します。

例えば、補助金のサポートもあり、熊本県に半導体大手の台湾TSMC、北海道に先端半導体のラピダスの生産拠点が誘致されました。

経済・安全保障はもちろん、国民生活の安定のためにも、日本で行うモノづくりに欠かせない電力を、国内で確保すること、さらには、食料自給率も高めていく必要があります。

堤キャスター:
円安による物価高の行方は気になりますが、日本のモノづくりが、再びチカラを発揮して、景気の回復が図れるといいですね。
(「Live News α」4月29日放送分より)

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