政治資金規正法の改正などを議論する政治改革特別委員会がスタートした。各党による方針、そこからうかがえる本気度は?また、今後の与野党協議での論点はどこになるのか。
「BSフジLIVEプライムニュース」では与野党の議員を迎え議論した。
自民党の改革案はやる気なしの「落第点」か
長野美郷キャスター:
衆議院の政治改革特別委員会で各党が意見陳述。自民党は「今回の問題と直接関係しない改革項目でも、逃げることなく正面から取り組んでいきたい」とした。
山井和則 立憲民主党政治改革推進本部副本部長:
本気さが感じられなかった。自民党が言う連座制では、抜け道があり実効性がない。また企業・団体献金、政治資金パーティー、政策活動費は案に入っておらず「議論しましょう」。やる気がないと思わざるを得ない。
音喜多駿 日本維新の会政務調査会長:
落第点。企業や業界団体からの金の流れという本質に切り込まなければ、政治改革は成し遂げられない。今国会では、逃げ切って触れない姿勢が透けて見える。
山下貴司 元法相:
まず今回、国民の不信を招いたことを、党改革実行本部の事務局長として心からお詫び申し上げる。信頼回復すべく全力を尽くしたい。一点、法律用語としてメディア含め「連座制」の使い方が間違っている。連座制とは、議員本人は全く悪いことはしていないが、一定の関係がある者が犯罪を犯したことをもって、立候補の制限・公民権を停止すること。立憲・維新の方が言っているのは連座制ではない。
反町理キャスター:
「罰則の強化」だと。
山下貴司 元法相:
そう。どのような罰則の強化が正しいか。私が検事だった時代に連座制を適用したとき、怖さを感じた。一つは、本来なら有権者が判断するところ、検事や司法機関の判断で政治生命を断ってしまうこと。もう一つは、周囲の人間によって議員がはめられ得る。つまり、意図的に会計処理を誤らせるなどは簡単にできるということ。安易に連座制をとることは国民の国会議員を選ぶ権利を奪うことになり、慎重さが必要。
長野美郷キャスター:
「自民党は今回やらかした張本人であり、他党に従う姿勢でいて欲しかった。犯罪者自身が犯罪についての法律を決めているよう」という視聴者の方のご意見。
山下貴司 元法相:
真摯に受け止めなければならないが、自民党の中でも80数名以外の議員はしっかりやっている。そこで何も言うなというのでは、立法府としての責任を果たし得ない。また、例えば政策活動費は、立憲も維新も額は違うが使っていた。何に使っていたのかを話し合うことは否定しないが、喫緊で必要なのは裏金と言われる状態をなくす法案。構成要件の明確性も含め検討を重ねていたのが実態。検討項目についても、検討だけしてやらないということではない。どういう解決が民主主義の維持のため、また政治資金規正法の趣旨のために必要か考えたい。
政治家本人に直接責任を負わせるためには
長野美郷キャスター:
政治改革の主な論点は、いわゆる連座制、政策活動費、政治資金パーティーと企業・団体献金。自民党の独自案では、議員本人の確認書作成を義務化、確認が不十分だった議員の公民権を停止、不記載相当額を国に納付としている。
音喜多駿 日本維新の会政務調査会長:
確認書を作り共謀認定しやすくするのは一つの手法で、全否定するものではない。だが国民から見ると非常にわかりづらい。何かあったときに政治家本人が直接責任を負うとした方がストレート。
山井和則 立憲民主党政治改革推進本部副本部長:
自民党案を裏読みすれば、確認して確認書を交付すれば、その後何らかの不記載が出てきてもセーフとなる。抜け道を作っているのではと疑わざるを得ない。
山下貴司 元法相:
それは印象論。説明をちゃんと受けて確認するもので、虚偽記載や不記載があれば共謀の立証はたやすい。連帯責任を取ればいいと言うが、議員に会計上の知識がない場合もある。政治資金規正法は議員を排除する法律ではなく、修正も含め国民の前にさらして判断してもらうためのもの。
長野美郷キャスター:
立憲民主党案では、罰則の強化について「政治団体収支報告書は会計責任者に加え、代表者も記載しての提出を義務付ける」としている。「政治資金の隠匿」に係る罰則強化では、「会計責任者の過失で150万円を超える不記載がある場合に対する罰則の新設」を求めている。
山井和則 立憲民主党政治改革推進本部副本部長:
これは政治家にとっては非常にリスクの高い案。自民党の連座制もどきの改革案では、今回の場合85人の裏金議員のうち3人立件されるだけで、現状と変わらない。だが我が党の案では48人が公民権停止となる。
山下貴司 元法相:
山井先生には過去に3年間で900万を超える不記載が、岡田克也立憲民主党幹事長も2018年に200万円の不記載があった。これは立憲案では公民権停止になるのでは。お二人のような素晴らしい政治家を有権者の選択から奪ってしまう立憲案は非常に危険だと思う。
山井和則 立憲民主党政治改革推進本部副本部長:
項目を間違っただけで、やましい不記載ではない。覚悟しながら今まで以上にきっちりやります、ということ。
反町理キャスター:
山井さんはその議論に乗っちゃいけない。150万を超えたら誰であろうと全員失職、そのぐらい自ら出血してでも政界全体を変える覚悟があると言えばいいのに。
山下貴司 元法相:
そういった説明を受け、有権者が判断すべきことと思う。諸外国では連座制をとっていない。
音喜多駿 日本維新の会政務調査会長:
維新案では過失にまで罰則を加えないが、問題意識は共有する。今回3000万もの裏金を作ってもお咎めなしでは、国民感覚として全く理解できない。山下さんが言うのは理想論だが、さすがにもう少し縛りを強くしなければ。
お金の「入り」を制限するか、「出」の透明性を上げるか
長野美郷キャスター:
政党から議員個人に支出される政治資金である政策活動費は使途が明かされず、透明性が焦点になっている。自民党は今後の検討事項とするが、岸田総理は「各政党に協力した個人のプライバシーや戦略的な党の方針が他の政治勢力や外国勢力にも明らかになる等については配慮しなければ」と答弁している。
山下貴司 元法相:
透明性のあり方を検討すべき。例えば台湾との関係には、政策活動費がおそらく相当使われている。また岡田幹事長が新聞で、選挙で党公認でないが将来的に仲間にしたい候補者に資金援助する際の資金は表に出しにくいと言っている。もう少し透明化せよという国民の意見には真摯に耳を傾けなければならないと個人的に思う。
山井和則 立憲民主党政治改革推進本部副本部長:
昨年以降、この裏金問題が始まる前から我が党は政策活動費を使っておらず、今後も使わない。第2の裏金になりかねず、廃止すべき。
音喜多駿 日本維新の会政務調査会長:
政策活動費は廃止して、新たな制度をつくるべき。プライバシーに配慮するなら、公開範囲を限定できる新制度を作り、その中でやりくりすればいい。一部は公開して、あとは第三者機関にチェックしてもらうなど。それを避けるのは脱法的行為。
山下貴司 元法相:
非常に参考になる。自民党も検討することは約束するし、良いものは積極的に取り入れて一緒にやっていく。
長野美郷キャスター:
自民党は、政治資金パーティーと企業・団体献金については踏み込まず検討事項とした。野党各党は禁止や廃止を掲げている。
山下貴司 元法相:
政治資金パーティーは与野党問わず行われており、例えば立憲の岡田幹事長は毎年政治資金パーティーで5000万円以上を売り上げ、事務所の経費に充てている。なくなったときにもつのか。パーティーは山井先生も僕もやる。使途を含め、ちゃんと説明することが必要。
山井和則 立憲民主党政治改革推進本部副本部長:
政治資金パーティーはもうやらない。企業・団体献金も禁止する。寄付金控除を拡大することで個人献金を増やすが限界はあり、あるお金でやるしかない。選挙活動・政治活動を各党が縮小させざるを得ない。
音喜多駿 日本維新の会政務調査会長:
企業・団体献金は廃止すべき。企業・団体にも政治活動の自由があるのは理解できるが、制限があるのはお金で政治家がゆがんでしまう可能性があるから。どうやって民主主義を劣化させずにお金が掛からない選挙・政治活動をやるか本気で考えるステージに入っている。
長野美郷キャスター:
視聴者の方からも「政党交付金が導入されたとき、企業・団体献金は廃止することで結論を得たはず。存続を主張する根拠は」という声が届いている。
山下貴司 元法相:
厳しいご指摘。政党交付金という助成制度があるから、私のように地盤・看板・カバンのない人間も議員ができる。ただ、今の政党助成制度というのは最低限必要なお金を出すというもので、足りない部分は政治資金規正法に基づいて補わざるを得ない。
長野美郷キャスター:
京都府の視聴者の方から山井さんに、「2009年の民主党のマニフェストに企業・団体献金の禁止とあった。衆参ともに多数派だったのになぜ達成されなかったか」という質問があがっている。
山井和則 立憲民主党政治改革推進本部副本部長:
3年間の民主党政権の後半には東日本大震災の対応があり、残念ながら期間が短すぎてできなかった。率直にお詫びする。次に政権交代したら必ず実現したい。
(「BSフジLIVEプライムニュース」4月26日放送より)