猫が「ゴロゴロ」と喉を鳴らす様子は見ているとほっこりするが、不思議な点も多い。

誰かに可愛がられた、日向ぼっこの途中、毛布をふみふみした時など、いろいろな場面で聞こえてくるし、その際になでると鼓動のような揺れを感じたりもする。

猫はなぜゴロゴロ音を出すのだろう(画像はイメージ)
猫はなぜゴロゴロ音を出すのだろう(画像はイメージ)
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猫はこの“ゴロゴロ音”をどんな理由で、どのように出しているのだろう。ネットでは“癒し効果があるのでは”“骨に良い影響があるのでは”という説も見るが、私たちは聞いたらどのように受け止めれば良いのだろうか。

長年にわたり多くの猫の診察してきた経験があり、自身も猫と暮らしている、獣医師の平松育子さんに聞いた。

コミュニケーションツールのひとつ

――そもそも、猫はなぜゴロゴロと鳴くの?

猫は(1)リラックスして機嫌のよい時、(2)何かを求めている時、(3)ストレスを感じている時にゴロゴロと鳴きます。傾向としては(1)が多いですね。子猫の頃から出すことができ、母猫に「自分の存在」を伝えているとも言われます。彼らにとっては、コミュニケーションツールのひとつなのです。


――ゴロゴロ音はどのように出している?

複数の説があり、はっきりしたことは分かっていません。現在は、喉に声帯のような特殊な粘膜を持っていて、呼吸の際に空気が通ることでゴロゴロ音がするという説が有力です。

喉に特殊な粘膜を持っている説が有力(画像はイメージ)
喉に特殊な粘膜を持っている説が有力(画像はイメージ)

――オン・オフはどう切り替えている?

仮説も含まれますが、猫自身が意識的に特殊な粘膜をゴロゴロ鳴く時は狭めている、鳴かないときは広げているのではないかと思われます。

ストレスの軽減効果が期待できる

――ゴロゴロ音は人間にどんな影響を与える?

ストレスの軽減効果があるとされています。筑波大学では、ストレスをかけた人に猫のゴロゴロ音とホワイトノイズ(テレビの砂嵐のような音)を聞かせ、心拍数の変化を測定する調査を行いました。そうしたところ、ゴロゴロ音を聞くと心拍数が減少したそうです。


――骨への影響についてはどう思う?

断言はできませんが、骨の生成に関わる「骨芽細胞」は適度な刺激を受けると活性化する、骨の代謝には自律神経も関係すると言われます。ゴロゴロ音の周波数(一般的には20~50Hz)が連続的な刺激となるほか、神経のバランスを整える可能性はあると思います。

年を取ると出さなくなる猫もいる(画像はイメージ)
年を取ると出さなくなる猫もいる(画像はイメージ)

――ゴロゴロ音を出さない猫もいるの?

小さな頃からゴロゴロしない猫もいます。鳴らす習慣がないか、音が小さくて人間には聞き取れないのだと思います。このほか年齢を重ねると、出なくなることもあります。

ゴロゴロ音を聞き分けるポイント

――猫のゴロゴロ音は聞き分けられるの?

リラックスして機嫌の良い時は中低音、何かを求めている時は高い音、ストレスを感じている時は低くて大きな音でゴロゴロ鳴きます。ただ、音のみで判断することは難しいので、その他の状況を考慮することが多いですね。リラックス状態であれば「ふみふみ」していたり抱っこされたり、膝に乗っていたり、飼い主との距離が近いことが多いです。

要求やストレスがある時は、飼い主から少し離れてフードボールやトイレのそばなどに座り「これに対して不満がある」と言いたげな感じで、ゴロゴロと鳴くことが多いです。

ゴロゴロ音が聞こえたら一緒に過ごす時間を(画像はイメージ)
ゴロゴロ音が聞こえたら一緒に過ごす時間を(画像はイメージ)

――ゴロゴロ音を聞いたら、人間はどう接したらいいの?

聞こえたら少しでも時間を取り、一緒に過ごしてほしいですね。ゴロゴロ音が高い、低くて大きい時は「甘えさせてほしいな」「お腹が空いたのにご飯がないんですけど」などと伝えていることも考えられますので、態度や行動に普段と違いがないか観察してください。リラックスして機嫌のよいゴロゴロ音なら満足しているので、心地よさを共有してほしいですね。



ゴロゴロ音は猫にとってコミュニケーションツールの一面もあるようだ。周囲に何かを伝えている可能性もあるので、聞こえてきたら様子を気にするといいかもしれない。

プライムオンライン編集部
プライムオンライン編集部

FNNプライムオンラインのオリジナル取材班が、ネットで話題になっている事象や気になる社会問題を独自の視点をまじえて取材しています。