大きな音や強い光などの刺激を多く受け取ってしまう”感覚過敏”の人たちにとっては、日常生活で利用するスーパーの照明やBGMも負担に感じているという。

こうした中、誰でも安心して買い物をしてもらおうと、照明やBGMを抑えて営業する「クワイエットアワー」の取り組みが進められている。

BGMは流さず商品PRの電源もオフに

スーパーと言えば、明るい店内に肉や野菜をおいしそうに見せるための照明、買い物客の気分を盛り上げるBGMなどにぎやかな雰囲気づくりに努めている。

そんな中、浦添市にあるコープ牧港では、普段よりも照明やBGMを落として営業している。

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この日、コープ牧港では、午前9時の開店から1時間の間、店内の照明を普段の半分程度にし、そして陳列棚の照明も一部を落とした。

普段であれば、大音量で流れる店内放送やBGMは流さず、商品をPRするためのモニターなどの電源も切っている。これは「クワイエットアワー」と呼ばれる取り組みだ。

強い光や大きな音、それに人混みなどが苦手な「感覚過敏」の人に配慮し、安心して買い物ができる環境を整えることを目的としている。

騒がしいところが苦手な買い物客:
(買い物は)ちょっと覚悟していく感じです。すごく気分が悪くなったり、頭痛がすることがしょっちゅうあって、すごく大変ですが、やらなきゃいけないので頑張ってやっています

他の人よりも音や光といった刺激を多く受け取ってしまう感覚過敏の人にとって、商業施設は特に刺激の多い場所だ。

”興奮”や”疲れ”を感じやすく、それがストレスや体調不良に繋がることから、利用に抵抗を感じる人もいる。

スポーツ界でも進む対応

感覚過敏への対応は、スポーツ界でも進められている。

2023年、派手な照明と大音量で会場を盛り上げる琉球ゴールデンキングスの試合で設置された「センサリールーム」

「センサリールーム」は音や光の刺激を少なくする造りとなっていて、これまで会場に足を運ぶことができなかった感覚過敏のある人たちも、目の前のキングスに大きな声援を送ることができた。

正しい理解 住みやすいまちづくりのきっかけに

感覚過敏の人たちだけでなく、一般の利用客にもどう理解を広げるか。

2024年3月、コープおきなわ本部では「クワイエットアワー」の実施に向けて、沖縄県発達障害者支援センターとの話し合いが行われていた。

沖縄県発達障害者支援センター がじゅまーる 照屋裕士さん:
お客さんの反応がどうだったか、シールを貼り付ける形式で作って感想を聞きたいです

コープおきなわ D&I推進チーム 森恵美子さん:
(店員が身に付ける)バッジを作りました。手作り感満載なんですが。そして当日、実施中にこのポスターを貼ろうと思います。そしたらわかりやすいのかなと思って 

沖縄県発達障害者支援センター がじゅまーる 照屋裕士さん:
沖縄県ではおそらく、今回のコープおきなわさんが初の開催となると思います。正しい理解、協力を得ながら、住みやすいまちづくりの一つのきっかけになっていただければなと思っております

コープおきなわ 店舗事業本部 店舗支援部 嘉数覚志さん:
本当に気兼ねなく、ゆっくり買い物していただきたいなと思います。それが一番です

一般の利用客からも好意的な意見

「クワイエットアワー」を体験してもらおうと、感覚過敏の子を持つ家族が招かれた。

普段とは違う店内でゆっくり買い物ができたと笑顔を見せた。

Q.いつもと比べてどうだった?

「静かで楽しかったし、買い物もしやすかった」との反応が返ってきた。

感覚過敏のある子どもの母親:
いつもは(音が気になり)早く出たがるのでさっさと買いますが、今日はコーナーをゆっくり回れたのでよかったです

感覚過敏のある子どもの父親 :
やっぱり、こういった子どもたちの障害を一般の人にも知ってもらう取り組みは良い取り組みだと思います

感覚過敏のある息子:
自分は人混みが苦手だったりするので、そういった面でやっぱり静かな場所で、人も少なく自由に動けるのはかなり良いと思います

聴覚過敏のある母親:
ゆっくり品物を選ぶことがうれしかったし、このままずっと続けていってほしいと思います

一方、買い物に訪れた一般の利用客からも好意的な意見が多く寄せられた。

一般の利用客の声:
「このくらいの明るさでも買い物ができました」
「いつもより暗くて音楽も少なかったが、落ち着いて、あまりせかせかしない感じで買い物ができたと思います」
「それぞれの感覚の違いで、きつさを感じるかなという子はいたりするので、意外にこういう環境の方が買い物しやすいとか、過ごしやすいという方は割といると思います」

この日は、発達障害などの相談や支援を行っている勝連啓介医師も視察に訪れた。

勝連医師は、いまや10人に1人が発達障害で感覚過敏など何らかの症状を抱えていると話し、何気ない日常の中に困難がある人たちの存在を知ってほしいと話す。

ピアラルうらそえ 勝連 啓介 施設長:
みんなが過ごしやすい、暮らしやすい社会になっていくように、こういった今日のような企画を通して、ますますこれが広がっていってくれたら非常にありがたいと思います

クワイエットアワーを実施した神谷弘治副店長は、朝礼やミーティングなどを通して、スタッフ全員で理解を深めて取り組めたと話す。

コープ牧港 神谷弘治 副店長:
こういったのを知ることがやっぱり大事だと思いましたし、コープおきなわとしてもこの地域や暮らしの役に立てる取り組みができたらいいと思います

大きな音や強い光が苦手な人でも安心して買い物できるクワイエットアワー。

私たちの身近な場面でも困難を抱える人がいることに思いをはせ、社会全体で誰もが過ごしやすい環境づくりへの取り組みが始まっている。

(沖縄テレビ)

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