旬の「たけのこ」で有名な広島・竹原市の小吹。出荷の最盛期を迎える時期だが、ある“異変”が起きている。昨秋の雨不足の影響で生産量はガクッと落ち込み、さらにイノシシや野ウサギによる食害が追い打ちをかける。

“春の味覚”を探しに竹林へ

広島・竹原市の小吹地区の竹林に野川諭生キャスターが足を踏み入れた。

小吹筍生産組合・佐渡元来 組合長:
気を付けてください。ここにイノシシの電気柵があります。今は昼間だから電気は流れていませんが…

野川キャスター:
朝晩は電気を流しているんですね。最近は、獣害が多いですか?

小吹筍生産組合・佐渡元来 組合長:
多いですね

竹林の中を進むと、佐渡組合長が「あっ!」と立ち止まった。地面からニョキっと「たけのこ」が頭を出していた。

小吹筍生産組合・佐渡元来 組合長:
このくらいの大きさがおいしいですよ。小さくて柔らかいから絶対これくらいがおいしい

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落ち葉に埋もれるように生えている小さなたけのこ。
「掘ってみてください」
佐渡組合長はそう言って、野川キャスターにくわを手渡した。

野川キャスター:
たけのこ掘りの経験がないもので…

たけのこを傷つけないように、恐る恐る土を掘り起こす野川キャスター。

人生初のたけのこ掘りに挑戦する野川キャスター
人生初のたけのこ掘りに挑戦する野川キャスター

小吹筍生産組合・佐渡元来 組合長:
くわの入れ方がだいぶ弱いですね

野川キャスター:
もっと強く掘っていいですか?よいしょ!

やがて、土の中から手のひらほどのたけのこが姿を現した。

約300年続く“竹の里”に異変?

今が旬で甘味が強く、ブランドとして県内外から高く評価されている「小吹のたけのこ」。約300年の歴史を持つが、ある“異変”に直面しているという。

たけのこの生産では、たくさん生えた次の年が生えにくいため「裏年」と呼ばれる。隔年で“当たり年”になるはずなのだが…

小吹筍生産組合・佐渡元来 組合長:
最近は当たりはずれより、雨が少ない。なんぼ当たり年でも水がなかったらダメでしょ

小吹のたけのこは2023年が「裏年」だったため、2024年はたけのこの生産量が増えると期待されていたが、現時点で多いところでも収穫量は“例年の3割”。原因の1つに2023年秋に雨が少なかったことがあげられ、最盛期を迎えるはずの時期に生えていない状況だ。

さらに、困っていることがある。

小吹筍生産組合・佐渡元来 組合長:
これは多分、シカのふんだと思う

(Q:ここ数年多い?)
小吹筍生産組合・佐渡元来 組合長:
ここ数年は前よりは多いですね。あちこちで見ます。シカとウサギが多いですね。野ウサギは葉っぱを食べますから。たけのこが出ていたら頭だけ食べます

また、特に“厄介”なのがイノシシ。電気柵などの対策をしても慣れると柵を越えてくるのだという。

「伝統のたけのこを守りたい」

過去10年間の竹原市のたけのこ生産量のグラフを見ると、「表年」と「裏年」がギザギザの線になっている。しかし2019年以降はギザギザの山がなだらかになり、生産量が低迷していることがわかる。

「表年」の2018年に2万2,681kgだった生産量が、2023年には2,726kgと約2万kgも減ってしまった。背景には気候の影響のほか、高齢化による担い手不足もある。

小吹筍生産組合・佐渡元来 組合長:
たけのこを楽しみにしている人がいると思うと、おいしいのを届けたいという気持ちが高くなります。何百年もの伝統あるたけのこですので、守っていかないといけないという責任感はすごくありますね

少雨の影響とイノシシやシカによる食害が重なり、思うように収穫できない「小吹のたけのこ」。次の「表年」には生産量のグラフも“ニョキ”っと伸び上がってほしいものだ。

(テレビ新広島)

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