今年7月の東京都議選で大旋風を巻き起こした、小池百合子都知事が率いた「都民ファーストの会」。しかしその後、「希望の党」設立を巡るドタバタで、小池人気は失速。その逆風は都ファにもおよび、13日開票された葛飾区議選では公認候補5人のうち4人が落選する大惨敗となった。
 

 
 
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たった数か月の間に「栄枯盛衰」を味わうことになった、都ファ新人議員のいまは?

品川区選出、4歳と6歳の子を持つママ都議の森澤恭子さんに、鈴木款解説委員が聞いた。
 

都議選ではなかった「小池さん嫌い」という声

ーー都議になって3か月余りですね。

目まぐるしくいろいろあったので。初の定例会も、衆議院選挙の応援もあって、「まだ3、4か月?」という感じですね。

ーーその間、都ファは代表が変わったり、小池さんは自ら作った「希望の党」の共同代表を辞任したりとまさにいろいろありましたね。

正直なところ、それで振り回されているかというとそれはないです。自分が果たすべき役割を考えることで精いっぱいというところがあるので。

ーー小池人気が急速に逆風に変わり、先週末の葛飾区議選で都ファは大惨敗となりましたが、風が変わったなと感じましたか?

葛飾の区議選では、私はママ候補を応援していました。現場では感触も悪くなかったんですけど、厳しい結果だったので、あらためて選挙も政治も難しいなと感じました。私は直接言われていませんが、都議選のときにはなかった「小池さん嫌い」という声が増えていたと思います。

今回の一連のことについては、「私たちは強い風で当選させてもらったんだ、自分たちの力ではないんだ、だからこそ都ファらしさを出していかないと」と皆で話しています。逆風になるタイミングが早かったのですが、凄く危機感を持てる機会となったので、「早くてよかったよね」と。

私たちを政治の世界に押し上げてくれたのは、小池さんの力によるところが大きいのですが、今度は自分たち1人1人が力をつけていかなければと感じます。
 

音喜多議員の離党は残念としか言えない

ーー党代表の交代を巡って、「ブラックボックスだ」と批判した議員が離党するということもありました。

残念だなと思います。彼らがこうなるだろうと期待したことや、スピード感が違うというのがたぶんあったのだと思います。音喜多さんは尊敬してますし、党にいるときはいろいろと聞いていて、頼れる方でした。これから敵対しようとは思っていないと思いますけど、残念ですとしか言いようがなくて。

ーー代表の選び方については、不透明だったとの批判もありますね?

でもブラックボックスと感じたことはないですね。正直なところ今誰かを選ぶと言うのは、組織が出来たばかりの中、凄く難しいなと思います。今後そういうかたちはできていくと思うんですけど、53人の一人一人がどういう人なのか、この短い期間ではそれを理解するのは難しかったと思うし、選べと言われても逆に難しかったのではないかと思います。変に派閥のような活動ばかりになっても、本末転倒ではないかと思いますし。

ーーさて、都議となって3か月あまりが過ぎましたが、これまでの自分の仕事を採点すると何点くらいですか?

自分の満足度でいうと30点くらいかなと。都民ファーストの会でいうと、選挙公約だった子どもの受動喫煙に関する条例を成立させたり、議会改革で常任委員会をインターネット中継するとか、政務活動費を飲食に使うのを禁止にするとか、3か月の中で出来ていることもすごくあって、都ファとしての実績は出していると思います。

ただ個人的には、質問作りに苦労しているとか、地元を回るとか、なかなかまだ時間の取り方がうまくなくて、子育てとの両立もそうですけど、新しい自分のやり方やスタイルを早く見い出したいなと思っています。

ーー森澤さんは民間企業からの転身ですが、議会はやはり民間とは違うなあと感じることはありますか?

これは変えたいんですけど、議会と委員会を午前10時スタートにしてほしいです。いまは午後1時スタートなんですよ。それで結局、午後9時終わりとかになるんです。10時に始まれば午後7時に終わりますね。いま社会が働き方改革をやっている中で、夜に延びるより前倒ししたほうがいいし、ママ議員も午後7時に終われば保育園にお迎えに行けます。

また、資料もできるだけペーパレスにしてほしいですね。紙の無駄遣いだなと。ほかにも、都庁の方は一人一人の議員に説明するんですが、私たちの部会は、まとめて聞くようにしています。そうすれば都庁も生産性が上がりますし。

「持続可能なママ議員のありかた」を考えたい

ーーママ議員として、子育てとの両立はいかがですか?

休みがないよとは言われていたんですけど、やはりないですね。土日も地域のイベントや都庁のイベントがありますし、変わったと言えば夫の生活が一番変わったと思います。夜の会合も増えているので、夫がその分ケアしてくれたりとか、保育園にお迎えに行ったりしてくれているので、私のママ友とランチするのは私より夫のほうが多くなったんじゃないかと(笑)。

今回出産した議員もいるんですけど、都議会には産休や育児休暇も制度としてありません。女性やママの議員を増やしたいなという思いはあるんですけど、現状は大変なので、後に続く人のためにも「持続可能なママ議員のありかた」みたいなことを考えていきたいと思っています。

ーー今後はどのような活動に取り組んでいきますか?

この3,4か月見ていて、7月に選ばれた際、強い風があったのはありがたいと思いますし、期待を実現していくというのが大事だなと思います。

防災に強い街づくりを進めてほしいと言う声もありますし、私も子育てをしているので、もっと子育てしている方々の声を聞くことも重要だと思います。

都市整備とオリパラ委員会にいますが、何か一つとってもこれまでの経緯とか知らないことが多いので、自分なりの観点や問題意識をもってやっていくのが課題です。

また、党では広報本部の一人として、日々のSNSの更新とか、スタッフがいるわけじゃないので自分たちでやっています。離党問題があって、都ファが何をやっているのかわからないとか、それこそブラックボックスとか言われているので、情報発信についてみんなで話し合ったりしています。皆さん民間企業から退路を断ってやってきて、魅力的な人も多いし、頑張って勉強しているので、これをどうやったら伝えられるか考えているところです。

ーーちなみに、ヤジにはなれましたか?

ありますね、相変わらず(笑)。ネガティブな野次は言葉遣いも含めてよくないなと思いつつ、最初のうちは様子を見ていましたが、いまは仲間が登壇するときに、応援する意味で「頑張って」と声をかけたりするようになりました。

鈴木款
鈴木款

政治経済を中心に教育問題などを担当。「現場第一」を信条に、取材に赴き、地上波で伝えきれない解説報道を目指します。著書「日本のパラリンピックを創った男 中村裕」「小泉進次郎 日本の未来をつくる言葉」、「日経電子版の読みかた」、編著「2020教育改革のキモ」。趣味はマラソン、ウインドサーフィン。2017年サハラ砂漠マラソン(全長250キロ)走破。2020年早稲田大学院スポーツ科学研究科卒業。
フジテレビ報道局解説委員。1961年北海道生まれ、早稲田大学卒業後、農林中央金庫に入庫しニューヨーク支店などを経て1992年フジテレビ入社。営業局、政治部、ニューヨーク支局長、経済部長を経て現職。iU情報経営イノベーション専門職大学客員教授。映画倫理機構(映倫)年少者映画審議会委員。はこだて観光大使。映画配給会社アドバイザー。