円安の勢いが止まらない。4月15日のニューヨーク外国為替市場の円相場は、円安が加速し1ドル=154円台を記録、34年ぶりの円安ドル高水準に達した。 専門家は、中東における地政学的リスクの高まりが金融市場に大きな波乱をもたらしていると指摘する。

1ドル154円突破 34年ぶりの円安水準に

ニューヨーク外国為替市場の円相場は15日、1ドル=154円台をつけ、1990年6月以来、約34年ぶりの円安ドル高水準を更新した。

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2024年3月の米小売業の売上高が市場の予想を上回ったことで、利下げが遅れるとの見方が広がり、日米の金利差が改めて意識されてドルを買う動きが加速した。

市場では、政府による為替介入への警戒感が続くなか、円相場は近く、155円台をめざすとの見方も出ている。

一方、東京株式市場は、中東情勢の緊迫化を受け、投資家の間でリスクを避けようという動きが広がった。幅広い銘柄が売られ、日経平均株価は700円を超えて値下がりし、3万9000円を割り込む場面もあった。

また、原油の供給不安が高まったことで、東京商品取引所の中東産原油の先物価格は、2023年9月以来、約半年ぶりの高値水準を付けた。

地政学的緊張が金融市場に波乱

「Live News α」では、エコノミストの崔真淑(さい・ますみ)さんに話を聞いた。

堤礼実キャスター:
金融市場の乱高下、どうご覧になりますか。

エコノミスト・崔真淑さん:
今回は、中東における地政学リスクが高まったことで、金融市場は波乱の動きになっています。ただし、株式市場と石油市場では全く異なる動きを見せており、私たちの生活への影響を考える上でも、重要な示唆が詰まっていると思います。

堤キャスター:
まず株式市場に関しては、いかがですか。

エコノミスト・崔真淑さん:
ポイントは中東情勢の行方です。イスラエルとイランの間で報復の応酬が行なわれ、戦争状況が長引くのではないか、アメリカがイスラエル側について戦争の規模が大きくなるのではないかといった懸念がありました。

しかし、イスラエルは既にガザ地区の戦いで体力を消耗させており、イランに報復する可能性は小さいとの見方が濃厚になってきています。さらに、アメリカについても、大統領選挙前に強く関与しにくいのではないかと思われています。

こうした思惑を見越して反応しているのが株式市場です。イスラエルの株式市場では、上昇して週末を終えたり、日本でも午後のマーケットは下げ幅が縮小しています。ただ、怖いのは、石油市場への影響が物価高に及ぶかどうか、ここがポイントになるかと思います。

安定供給が困難に…石油価格は既に上昇

堤キャスター:
物価高への影響、具体的には。

エコノミスト・崔真淑さん:
中東における地政学リスクの高まりは、株式市場よりも、石油市場の方がより敏感に反応しやすいんです。

中東での戦争状態が長引くとなれば、石油の9割以上を中東からの輸入に頼る日本は、安定的なエネルギーの確保が難しくなるかもしれないということです。

例えば、エジプトの紅海はすでに海運が厳しい状態で、次は中東の要であるホルムズ海峡の運航が厳しくなるかもしれない。運搬コストが上昇し、石油価格が上がるのではないかという懸念が出ています。マーケットでは既に石油価格は上昇しはじめていて、この動きが3カ月から半年後ぐらいに日本でも再び影響し、物価上昇が起きるかもしれません。

円安が進行している中で、石油価格の高騰はさらなる物価高を呼び、生活防衛の意識が再び高まる可能性も出てくるかもしれません。

堤キャスター:
原油価格の高騰は、電気やガス、さらには物流コストにも影響します。これ以上、戦火が拡大しないことを願いつつ、市場の行方を注視する必要がありそうです。
(「Live News α」4月15日放送分より)

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