上皇ご夫妻は4月10日、1959年の結婚から65年=ブルースターサファイア婚を迎えられた。

ご夫妻の穏やかな毎日の「ルーティン」と「アクセント」、そして音楽をめぐる「すてきな光景」とは。

「アクセント」と「ルーティン」最近は花見の散策も

90歳の上皇さまと今年90歳になられる上皇后・美智子さま。

1959年の世紀のご成婚から10日で65年が経ち、65回目の結婚記念日=ブルースターサファイア婚を迎えられた。

赤坂御用地にて 2023年10月撮影 宮内庁提供
赤坂御用地にて 2023年10月撮影 宮内庁提供
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年齢を重ねられ、日によって体調に波はあるものの、大きな変化は無く、毎日同じ時間に起床、食事、就寝をし、毎朝1冊の本を一緒に音読するなど、規則正しい生活を続けられている。

「お年を重ねてもしっかりとした日常を保たれるのは実はとても大変なこと」「生活に一定のリズムを保ち、時折アクセントをつけながら、ルーティンを大切にされている」ある側近は、お二人の日常をそう表現した。

赤坂御用地にて 2023年10月撮影 宮内庁提供
赤坂御用地にて 2023年10月撮影 宮内庁提供

朝夕の散策の際に、美智子さまは息があがり、立ち止まられることもあるそうだ。それでも、その日の体調に合わせて歩く距離を調整し、最近は赤坂御用地の桜を楽しめるルートを選ぶなど、四季折々の自然に親しまれているということだ。

いつも手を取り合い支え合われ

いつもお互いを気遣い、上皇さまは美智子さまに「大丈夫?」と声をかけ、お住まいの中でも転ばぬよう、常に手を取り合われているというご夫妻。

よろめかれた美智子さまを上皇さまが支えられた 2023年5月 京都
よろめかれた美智子さまを上皇さまが支えられた 2023年5月 京都

2023年5月に京都を訪問した際、大聖寺の階段で美智子さまがバランスを崩された際、とっさに上皇さまが手を取って支えられていた。4月9日の明治神宮への参拝では、雨で足元がわるい中、階段を登る際に美智子さまがバランスを崩される場面もあった。

明治神宮の参拝でバランスを崩される場面も 2024年4月
明治神宮の参拝でバランスを崩される場面も 2024年4月

慣例に則り、お一人ずつの拝礼だったため、女性護衛官が美智子さまを支えたが、日常生活では上皇さまがその役割を担われている。

「心身共にお互いを支え合って、本当に穏やかな日常を送られている」側近はそう話していた。

「体が覚えているんですね」上皇さまとチェロ

能登半島地震の発生後、被災地を案じながら外出を控えて過ごされているご夫妻。そんな生活の中で、コロナ禍以降に再開された、ある豊かな時間があるそうだ。それは音楽の時間だ。

上皇さまはチェロ、美智子さまはピアノを演奏し、お二人でコンサートに足を運ぶなど、音楽に親しんでこられた。

上皇さまはチェロ、美智子さまはピアノを演奏される
上皇さまはチェロ、美智子さまはピアノを演奏される

誕生日の際に公開された映像にも、上皇さまがチェロを演奏する場面があったが、コロナ禍で2年間のお休みを経て、今も月に2回ほどレッスンを続けられている。

右端が上皇さまのチェロのレッスン担当・寺田義彦さん 2018年4月「第54回スズキ・メソードグランドコンサート」
右端が上皇さまのチェロのレッスン担当・寺田義彦さん 2018年4月「第54回スズキ・メソードグランドコンサート」

10年以上にわたってレッスンを担当する寺田義彦さんによると、上皇さまは以前からのレパートリーであるサンサーンスの「白鳥」、カザルス編曲の「鳥の歌」などの復習を続けられているという。

寺田さんは、「嬉しいことに、上皇さまは『体が覚えているんですね』とおっしゃるんです」

2年のブランクや、年齢を重ねて楽譜がよく見えなくても、指が先に動いてくれる。上皇さまが嬉しそうに話されることを寺田さんは明かしてくれた。

「すてきな光景」上皇さまが美智子さまの譜めくりを

チェロをめぐる温かいエピソードがもうひとつある。

上皇さまのレッスンが終わった後、時々美智子さまは寺田さんのチェロに合わせてピアノを弾かれるそうだ。寺田さんによると、「上皇さまは離れた椅子で静かに聴いていらっしゃるんですが、楽譜のページ数が多いことに気付くとそーっと立ち上がって、静かに演奏の邪魔をしないようにピアノの横に移動し、ページをめくられるんです」と話す。

美智子さまのピアノに合わせて上皇さまが譜めくりを 2019年8月撮影
美智子さまのピアノに合わせて上皇さまが譜めくりを 2019年8月撮影

美智子さまが奏でられるメロディーを記憶していて、正確に譜めくりをされるという上皇さま。

そのさりげないお心遣いや、無言で通じ合うご夫妻の息の合ったお姿を、寺田さんは「心が温まるすてきな光景」と明かした。

音楽をめぐるエピソードからは、お好きな曲を長く長く大切にするぶれないお人柄や、年を重ねる不便さを受け入れ、長く続けてきた音楽からお二人ご一緒に喜びを見いだされているお姿が垣間見える。

変化を受け入れ「アクセント」も 10月にはともに90歳

音楽を楽しまれるひとときの「すてきな光景」は、側近の言う規則正しい生活の中の「アクセント」でもあるのかもしれない。

2024年10月の誕生日で美智子さまが90歳を迎えられると、12月の上皇さまの誕生日までは2ヶ月間、お二人揃って90歳=卒寿となられる。

ご成婚50年会見では互いに「感謝状」を送り合われた 2009年4月
ご成婚50年会見では互いに「感謝状」を送り合われた 2009年4月

銀婚式では上皇さまが「努力賞」を、美智子さまが「感謝状」を送り、金婚式ではお互いに「感謝状」を贈り合われたご夫妻。

「たくさんの悲しいことや辛いことがあったと思いますがよく耐えてくれた」と美智子さまを労い、「結婚50年を本当に感謝の気持ちで迎えます」と上皇さまが声を震わせられていた金婚式の日から15年が経つ。

軽井沢では大日向地区を散策された 2023年8月
軽井沢では大日向地区を散策された 2023年8月

その間に上皇さまは象徴としての務めを終えられ、美智子さまは変わらず寄り添い続けられている。

お立場の変化や年齢を重ねる変化を受け入れながら、決してたやすいことではない「ルーティン」を保ち、支え合われる日常。

4月11日に孫である愛子さまが大学卒業と就職を報告される
4月11日に孫である愛子さまが大学卒業と就職を報告される

お二人お健やかに結婚から65年の節目を迎えた翌日、11日は愛子さまが大学卒業と就職の挨拶のため訪ねられる。

一日一日を大切に過ごされるご夫妻にとって、この春に人生の節目を迎えられた愛子さまとのひとときは、うれしい「アクセント」になりそうだ。

宮﨑千歳
宮﨑千歳

天皇皇后両陛下や皇族方が日々取り組まれる様々なご活動をより分かりやすく、現場で感じた交流の温かさもお伝えできるような発信を心がけています。
宮内庁クラブキャップ兼解説委員。1995年フジテレビジョン入社。報道局社会部で警視庁クラブなどを経て、2004年から宮内庁を担当。上皇ご夫妻のサイパン慰霊の旅、両陛下の英エリザベス女王国葬参列などに同行。皇室取材歴20年。2児の母。