子供にわいせつな行為などを行い保育士資格の登録が取り消された人の記録をまとめたデータベースの運用が2024年4月から始まった。その名も「わいせつ保育士データベース」(保育士特定登録取消者管理システム)だ。

2023年4月に文科省が運用を始めた「わいせつ教員データベース」に続き、保育士版も始まった形で、これまで確認する方法がなかった「取り消し記録」の確認を保育所などに義務化することで、過去にわいせつ行為をした保育士が再び採用されることを防ぐ狙いがある。

「取り消し記録」少なくとも40年掲載

このシステムは、子どもへの性暴力やわいせつ行為などを理由に資格の登録を取り消されたことのある「わいせつ保育士」の氏名や生年月日などを、データベースで一元管理するものだ。取り消し処分歴を隠して別の都道府県で採用されることを防ぐため、2022年に成立した改正児童福祉法に基づき国が整備した。

保育所や認定こども園、児童養護施設などが保育士を採用する際に「取り消し記録」がないか確認することが義務付けられ、施設の採用責任者に限り、資格の登録が取り消されたことのある保育士の氏名や生年月日のほか、登録番号、取消年月日、取消理由、性加害の内容などが確認できる。こども家庭庁は、取り消し記録を少なくとも40年間掲載する。

政府は、子どもと接する仕事に就く人の性犯罪歴を確認する「日本版DBS」の創設を盛り込んだ「こどもの性暴力防止法案」を2024年3月に閣議決定し今国会での成立を目指しているが、これとは異なる仕組みだ。

データベース共有で子どもへの性暴力を防止

「日本版DBS」では、照会の対象が、特定の性犯罪について裁判所で有罪判決が確定した「前科」に限定される見通しだ。一方、「わいせつ保育士データベース」では、被害者側との示談が成立し不起訴になるなどしたケースも、都道府県が「児童生徒性暴力等を行った」と認定すれば、登録取り消しの対象となり記録に残る。

保育士資格の再登録は、禁錮刑以上の人には刑の執行後10年間は認めていない。それ以外の場合は3年が経過すれば再登録の申請が可能だ。再登録の可否については、都道府県が審査を経て判断する。

データベースの運用で子どもへの性暴力防止が期待される(画像はイメージ)
データベースの運用で子どもへの性暴力防止が期待される(画像はイメージ)
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ある保育園の経営者はFNNの取材に「近くの保育園や学童でわいせつ行為で辞めた人がいるといった噂があったら、ローカルレベルで氏名などを共有するようにはしていた」と話す。これまで口コミ情報などを頼りに確認する方法しかなかったことから、わいせつ保育士が違う都道府県に引っ越して再登録した場合は把握しきれないという懸念があったという。

こども家庭庁によると、2003年から2024年4月1日の約20年の間に子どもへの性暴力やわいせつ行為で資格の登録を取り消された保育士は97人に上る。こども家庭庁の担当者は、新しいデータベースについて「児童生徒性暴力等を行い保育士登録を取り消された者の情報を雇用する者などが把握できるようにする仕組みで、子どもへの性暴力の防止に繋がる」と話す。

子どもが保育や教育の現場などで性犯罪の被害に遭うことがないよう、更なる安全確保措置が期待される。
(フジテレビ社会部 松川沙紀)

松川沙紀
松川沙紀

フジテレビ社会部・省庁キャップ こども家庭庁担当