能登半島地震の発生から3カ月、今も多くの人が避難生活を送っている。3月29日時点で、1次避難、2次避難を合わせて8100人余り。避難生活を取り巻く環境はどのように変わっただろうか。避難所の今を取材した。

避難所の運営は安定

石川県珠洲市の正院小学校。元日から避難所として開かれ、3月下旬になっても30人余りが寝泊まりしていた。正院町区長会の濱木満喜会長に話を聞くと、正院小学校では今も水が使えないものの移動式トイレや循環型のシャワーがあり、水の問題はほとんどないそうだ。また食事の時間になると…。「本部から連絡をいたします。夕食のお弁当の準備ができました。夕食の炊き出しの準備ができましたので、みなさん炊き出しコーナーにお集まりください」と校内放送でアナウンスが入った。珠洲市では、店を開けることができない市内の飲食店が先月から避難所向けに弁当を作ってきた。国の制度を活用し弁当は無料でふるまわれている。こうして避難所で暮らす人たちは栄養バランスのとれた食生活を送ることができている。住民の一人も「健康に気を遣ってくれています。量もばっちりです」と話し、好評だ。さらに1世帯に1張りずつテントが支給されていて、避難所の中にいながらプライバシーが守られている。

珠洲市の正院小学校
珠洲市の正院小学校
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避難所は自主運営に移行

濱木さんは「最初は支援もないし自分たちでなんとかやっていたんですけど、いろんな支援が来るようになってからは安心して生活できます」と話す。しかし、4月から避難所は新たな問題に直面する。「3月いっぱいで避難所の運営については行政が一切手を引くと、あとは残る人で運営してくださいということになっているんです」。避難所を3カ月にわたって支えた応援職員が撤退するというのだ。「みなさん被災者ですから自分の家の片づけとか私的な用事があるでしょうから、避難所のことばかりやっているわけにはいかない。次から次へと新しい課題が出てきます」と濱木さんは先行きを案ずる。

正院町区長会の濱木満喜会長
正院町区長会の濱木満喜会長

仮設住宅ができるまでの辛抱

石川県輪島市門前にある谷内和田地区。震度7の揺れを観測し、ほとんどの家が倒壊した。地区の住民たちは1軒の空き家と倉庫を自主避難所として活用し共同生活を送ってきた。現在はライフラインが復旧したため地域の集会場に場所を変え8人が共に暮らしている。2月中旬には自主避難所へ届いていた物資の配送が打ち切られた。物資については自分たちで調達しているので問題ないというが、先行きへの不安は広がっている。2月に取材した際、避難所の人たちが待ち望んでいたのは仮設住宅への入居だった。住民の町田久子さんは「仮設住宅ができるまで、もうしばらくと思って、1日1日を過ごしてそれを待っている。春が来るのを待っている」と話した。

輪島市門前の谷内和田地区
輪島市門前の谷内和田地区

仮設住宅入居はいつ!?

輪島市では仮設住宅への入居が2月から始まった。4月1日時点で4140世帯が入居を希望していて2000戸以上の工事が着工しているものの、完成したのは657戸だけ。さらに追い打ちをかけているのが家屋の調査状況だ。輪島市で1月から実施された家屋の被害を認定するための1次調査。家の外側から判定を行うものだが、この判定に不服などがあったとしてこれまでに3147棟で家の中まで調べる2次調査の要請があった。仮設住宅に入れるのは基本的に自宅が半壊以上と認定された人だけだ。家が準半壊や一部損壊と判定された人は2次調査を待つしかない。谷内和田地区の住民は「今最も困っているのは先が見えないこと。いつ仮設住宅に行けるか分からない。それが今、一番みなさんが辛いところ」と話す。大地震から3カ月。多くの人たちが先が見えない不安を抱えながら避難生活を送っている。

輪島市の家屋調査
輪島市の家屋調査

(石川テレビ)

石川テレビ
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