2024年4月1日からトラック運転手の残業規制が始まった。人手不足が懸念される、いわゆる「2024年問題」に対応するため各社が課題解決に乗り出しているが、中小企業の対応遅れが問題となっており、専門家はドライバーの作業時間を短縮する効率化が必要と指摘する。

残業規制開始で各社対応加速

トラック運転手の時間外労働時間が年960時間以下となる中、ヤマト運輸や佐川急便は、1日から運転手の待遇改善などのため、宅配便の値上げを行った。

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一方、現場でも各社で対応が進められており、モスフードサービスは、4月から都心にある店舗の納品を午前4時からに前倒しし、渋滞などで配送時間が延びることを減らす。

また、アサヒグループジャパンなど40社以上が加わる輸送シェアリングでは、トラックの荷台を連ねた全長25メートルのダブル連結トラックを導入。4割以上の省人化を実現したという。

さらに、スーパー大手イオンの関連会社では、AIや最新ロボットを導入し、注文から配送ルートの策定まで一貫して管理している。

ドライバーは、重い荷物の荷詰め作業を行う必要がなく、配送に集中することができることから、女性ドライバーを増やし、トラック運転手不足を補いたい考えだ。

運送業界の生産性アップ

「Live News α」では、エコノミストの崔真淑(さい・ますみ)さんに話を聞いた。

堤礼実キャスター:
物流の危機、どうご覧になりますか。

エコノミスト・崔真淑さん:
中小企業の対応の遅れが指摘されています。日本商工会議所の調査によると、中小企業で荷物の送り主として、何らかの手段を講じているのは半分にも満たないと指摘されています。

さらに、荷物を受け取る側の対応は、2割以下となっている。

堤キャスター:
対応を加速させるための鍵は、どこにあるのでしょうか。

エコノミスト・崔真淑さん:
まずはドライバーの数を増やす「量の拡大」が言われていますが、この人手不足の中、なかなか難しいと思うんです。地道に待遇の改善などを図っていくしかないのかなと思っています。

現実的には、運送業界の生産性のアップ。つまり、「質の向上」に努めることが重要かと思います。具体的には、荷物の受け渡しの際の待ち時間の削減や、ロボットを活用するなど、さまざまな試みが行なわれている。

なかでも注目したいのが、外資系の小売り大手コストコが行なっている、荷物の受け渡し時間の効率化を図れるトレーラー方式の活用です。

ドライバーの活動時間を効率化

堤キャスター:
トレーラー方式とは。

エコノミスト・崔真淑さん:
例えば、アメリカのトラック輸送は荷物の届け先に到着して、トレーラーという箱を切り離したら、原則、ドライバーの仕事が終わります。そこからの荷役と呼ばれる作業は、荷物の受け取り側が行なうようになっているんです。

一方、日本では荷台と運転台が分割されないトラックが使用されているが故に、多くのドライバーが90年代以降の規制緩和の流れの中で、サービス役務として始まった、手待ちと荷役作業に縛り付けられやすいのが課題なんです。

堤キャスター:
国土が広い訳ではない日本において、トレーラーのような大きなトラックは活用しづらい面もあるのでは。

エコノミスト・崔真淑さん:
実は、日本よりも国土が狭いイギリスやスイスでもトレーラー方式は盛んに活用されています。ですから、こうしたドライバーの活動時間の効率化を模索していく必要があると思います。

さらにネット通販の普及とともに、送料は無料というサービスも広がっていったが、運搬コストについて私たちが意識し、適正に価格転嫁できる素地を受け入れることも必要かと思います。

堤キャスター:
便利さの裏には、誰かの努力があり、その努力にも限りがあります。問題の解決には、さまざまな角度から対策を行っていくことが大切なように思います。
(「Live News α」4月1日放送分より)

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