2023年は1年間のクマによる人身被害が過去最悪の70人に及ぶなど、“異常”といえる事態だった秋田県。2024年に入ってからは、例年よりも早い時期からクマの目撃情報が多く寄せられている。目撃現場の多くは私たちの「生活圏」だ。

「生活圏」でクマの目撃相次ぐ

2024年の秋田県内でのクマの目撃情報は、3月24日までの約3カ月間で「50件」寄せられている。2023年の同じ時期と比べると、実に47件も増えている。本来であればクマが冬眠している時期のため、例年はほとんど目撃情報がない。しかし、2024年は「生活圏」での目撃が相次いでいる。

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2月、秋田市御所野湯本の物流倉庫でクマ1頭が目撃され、約3日間にわたり倉庫の中にとどまった。このクマは体長90cmの雌で、体重は約16kgと痩せていて「冬眠から目覚めたクマの可能性が高い」とされた。

また、2月から相次いで目撃情報が寄せられているのは、秋田市手形地区。すぐそばには秋田大学があり、学生など人が行き交う場所だ。

「だいたい30分くらい行ったり来たり、ここら辺をウロウロしていた」と話すのは、秋田市の手形大沢町内会の松渕孝会長。2月19日に自宅から撮影した写真には、体長約50cmのクマの姿が捉えられていた。クマは約30分とどまった後、やぶの中に入っていったという。

「箱なわ」設置も捕獲至らず…不安募る

また3月10日には、別の住民が自宅の玄関先でクマを目撃した。松渕会長は「周辺に出没しているのは同じ個体の可能性がある」と指摘する。

手形大沢町内会・松渕孝会長:
最初は親とはぐれたのかなと、危険だなと思っていた。同じ特徴のクマだとしたら、いろいろな所に出ている

秋田市は近くに「箱わな」を設置したが、個体の特定や捕獲には至っていない。過去5年間では、この時期に市内に「箱わな」を設置したことはないという。

手形大沢町内会・松渕孝会長:
今は小さいクマだから少し気持ちに余裕があるけれど、これから大きくなったらやっぱり不安

人の生活圏でクマが多く目撃されていることに加え、2023年は過去最悪の人身被害が発生しているため、不安を感じている人は多いだろう。2024年も同じように被害が起こる可能性はあるのだろうか。

クマを寄せ付けない対策方法

県内では2023年に、これまでで最も多い約2300頭のクマが捕獲された。これにより「生息頭数」は減っていると考えられている。

一方で、クマの生態などに詳しい東京農業大学の山崎晃司教授は「クマの分布域が広がり、集落周辺に近づいている」と指摘する。

東京農業大学・山崎晃司教授:
雪がなければ地面に落ちている餌を探すことができる。クマの冬眠は食べ物がないからするので、食べ物を見つけられるチャンスがあればクマが出てきてもおかしくない

冬眠から覚めたクマは食べるものを探す。

山崎教授は「2023年に約2300頭捕獲していて、秋田の個体数は半減しているとみられる。プラス狩猟期間もあったので約2500頭は捕獲していると思う。いま出没しているクマは、2023年の捕獲の影響を受けて、栄養状態が悪いクマの可能性が高い」とみている。

「栄養状態の悪いクマ」は、食べるものがある人里にすみ着く恐れがあるという。クマがすみ着く前に、寄せ付けない対策をする必要がある。

東京農業大学・山崎教授:
集落周辺にクマの分布域が広がっていることは事実。これ以上集落周辺にクマを執着させないためには、この季節だったら、コンポストや裏庭にごみ捨て山などがあるとすれば、きちんと管理する。これから農作物が実ってくるときには、収穫をきちんとする

2024年も私たちの生活圏で、クマに遭遇する可能性は十分にある。「いつでも、どこでも、誰にでも」危険性があることをしっかりと認識し、クマの餌となるものを置いたままにしないなど、クマを人里に寄せ付けないように一人一人が心掛ける必要がある。

(秋田テレビ)

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