鹿児島・奄美大島の陸上自衛隊奄美駐屯地は2024年3月で開設から5年となる。鹿児島テレビでは駐屯地のトップに話を聞くことができた。司令の言葉からは、南西諸島を巡る情勢と奄美駐屯地の役割が見えてきた。

銃の音が鳴り響く“奄美駐屯地”

鹿児島・奄美市の名瀬市街地から、車で約15分の山あいにある陸上自衛隊奄美駐屯地。入り口では銃を持った隊員が警備にあたる。

今回、内部の取材が特別に許可され基地の中に立ち入ることができた。

室内射撃訓練場で実弾を使った訓練
室内射撃訓練場で実弾を使った訓練
この記事の画像(15枚)

2年前に作られた室内射撃訓練場では、実弾を使った訓練が行われていた。隊員が行っていたのは、敵に見立てた的に向かって、徐々に距離を詰めながら射撃を行う訓練。実弾が発射されるたび、すさまじいごう音が鳴り響く。

室内射撃訓練場では、最大300メートルほど離れた場所からの射撃訓練や、夜間を想定した訓練も可能だという。

銃の横に差し出された捕虫網のようなものは、射撃の際に出る薬きょうを確保するためのもの。薬きょうの数と実弾を撃った数が合わなければ見つかるまで捜索するという、厳重な管理が行われている。

奄美駐屯地のトップは“中国”を注視

東京ドーム約11個分の広大な敷地で、約420人の隊員が日々訓練に励む奄美駐屯地。開設から5年となるのを前に鹿児島テレビでは、奄美駐屯地のトップ、長谷川健司令にインタビューした。奄美を取り巻く情勢で、長谷川司令が注視しているのは、やはり中国の存在だ。

奄美駐屯地・長谷川健司令:
奄美大島と横当島の間の中国海軍の艦船の航行が2023年は6回だったのが、2024年に入って1月3日、19日と約2週間で2回も行われたということで、緊迫度は増していると考えている。中国の動向は我が国、国際社会に対する深刻な懸念事項となっているので、同盟国・同志国と連携して対処していかなければならない

そう語る司令は、大陸の方から日本を見た地図を見せてくれた。普段私たちが目にする一般的な地図とは上下が逆になっている。

中国が設定した「第一列島線」には奄美大島も含まれる
中国が設定した「第一列島線」には奄美大島も含まれる

地図には点線で中国が設定した「第一列島線」と呼ばれる軍事的防衛ラインが引かれている。このラインには、奄美大島も含まれている。まさにここ奄美駐屯地が国防の最前線であることが見て取れる。

奄美駐屯地・長谷川健司令:
奄美大島は九州からと沖縄からそれぞれ300km。中間地点にあるので補給上の要点になっている。戦略上我々としては必ずここは確保しないといけない。中国から見ても南西諸島は、戦略的に重要な位置に位置していることが分かる

米軍とも連携 奄美駐屯地の重要性

そんな奄美駐屯地に配備されているのが「地対空誘導ミサイル」だ。有事の際には、敵の航空機やミサイルを打ち落とす役目を果たす。一定の距離でミサイルが自動で目標を追いかける仕組みになっていて、全方位への対処が可能だ。

地対空誘導ミサイル
地対空誘導ミサイル

陸上自衛隊 奄美駐屯地 第3高射特科群 第344高射中隊・山本悟中隊長:
垂直発射ができるので建物の間や森の中に入れても、上が空いていればどこでも弾が発射できるという特性を持った優れた機材。防空には必要不可欠なもの

高機動ロケット砲システム「ハイマース」
高機動ロケット砲システム「ハイマース」

奄美では近年、アメリカ軍との共同訓練もたびたび行われている。2023年9月の共同訓練では、高機動ロケット砲システム「ハイマース」も参加。ロシアによる侵攻を受けたウクライナに、アメリカが提供した兵器として知られている。

長谷川司令は「陸上自衛隊と米陸軍・米海軍との連携の重要性が高まっている。より一層の相互運用性の強化。日米同盟の実効性・信頼性を増していくことが必要」と話す。そのうえで「奄美駐屯地の役割は非常に重要視されているし、さらに役割は大きくなっていくと考えている。国民の理解がなければ陸上自衛官は活動することはできない。今まで以上に地域の皆様と連携して協力を得ながら活動していきたい」と地元への理解を求めた。

奄美駐屯地開設から5年。南西諸島を巡る情勢が緊迫の一途をたどる中、国防の最前線に置かれた奄美駐屯地の役割は、ますます大きくなりそうだ。

(鹿児島テレビ)

この記事に載せきれなかった画像を一覧でご覧いただけます。 ギャラリーページはこちら(15枚)
鹿児島テレビ
鹿児島テレビ

鹿児島の最新ニュース、身近な話題、災害や事故の速報などを発信します。