はしかの感染報告が3月に入り国内で相次いでいる。WHOが「このままだと世界の半数以上の国々で流行リスクに直面する」と警告し、感染拡大が懸念されている。

【動画】「はしか」感染相次ぐ 妊婦と乳幼児は特に注意 ワクチン接種歴が分からない場合は検査を

■国内でも感染が広がりつつある「はしか」

WHOによると2022年の「はしか」の感染者数は、約17万人だったのに対し、2023年は約30万人と1.8倍に。

林官房長官:麻疹ははしかとも呼ばれ、感染力が非常に強く、海外との往来の再活発化にともなって、国内での旅行にも注意が必要な状況。

政府が注意を呼びかける理由は、実際に「関西」でも感染が広がりつつあるからである。

3月12日、大阪市に住む20代の女性がはしかに感染していたことが判明。女性は2月24日にUAE(アラブ首長国連邦)から関西空港に到着する便に乗っていた。この便に関連して、これまでに奈良県で2人の感染が確認されているほか、新たに13日、京都市でも確認され、合わせて10人の感染が報告されている。

■はしかのワクチン接種、記憶があいまい

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感染力が強い「はしか」。
厚生労働省はワクチンを2回接種することで、予防することができるとしているが、街の人は。

40代:昔、小さいころにやったのかもしれないですけど、全然記憶なくて。

70代:はしかって(接種)1回ちゃうの?
50代:子供らはどうやったかな、何か変わったよね。

70代:小さい頃はワクチンはなかったです。

80代:でも予防接種かなりしたよ、痕があるでしょ。
70代:あれはワクチンじゃない。
みなさん、記憶があいまいだ…

大阪市内のクリニックではワクチンに関する問い合わせがあるという。

大阪グランドクリニック 大楠崇浩院長:『私は一度も(ワクチンを)打った、記憶がないんだけれど』とか、『感染したことないけれども、はしかのワクチンどうしたらいいだろうか』とか、そういったご質問をいただく機会は多いですね。過去にご自身が、2回ワクチンを接種しているかどうか、記録が残っていれば、それで確認をしていただいて、2回のワクチン接種を目標にしていただいたら。

「はしか」から私たちはどう身を守ればいいのだろうか。

■「はしか」流行は人の往来の増加が原因 「はしか」の症状は「高熱」「発疹」

今後、日本でも感染は拡大していくのか、ワクチンを打っていても心配事があるということで、関西医科大学附属病院の宮下修行医師に聞く。

日本でも相次いで感染が確認されているが、今なぜ増えてきているのだろうか?

関西医科大学附属病院 宮下修行医師:実は2015年には、日本から排除状態になっていました。国産品のはしかというのは、ほとんどいなくなった。ということは、はしかが増える理由は、海外からの輸入・持ち込み、またはわれわれが海外へ行って、もらう。コロナが明けて、その往来が活発になったおかげで増えてきているということです。

感染者が深刻な症状を語ってくれたのでみていく。

36歳の時にはしかに感染した増田さんは、ワクチン接種の接種歴はなかったそうだ。 発症初日に40度の熱が出て、解熱剤が効かず、39度の熱が7日間も続いた。

7日目に腹部に発疹が出て、はしかを疑い、自力で救急車を呼んで入院することになったそうだ。

重篤な脱水症状におちいっていて、17日間の隔離入院となり、治療費は自己負担分だけで18万円かかったそうだ。治療が終わった後も体力が激減して復調まで半年かかったということだ。

増田さんはワクチン接種の接種歴ナシということだったが、「昔、打った『3種混合ワクチン』に、はしかも含まれていると勘違いしていた」と話した。

関西医科大学附属病院 宮下修行医師:このケースは入院が必要で、脱水まで起こされていることから、重症という部類に入ります。はしかはウイルス感染だからといって、こういう症例だと合併症がある症例があるので注意が必要。それともう1つは、”あるある”ですが『3種混合ワクチン』、MMRワクチンというのを打っていた時が5年ぐらいあって、実はその中にははしかが含まれていました。今の3種混合ワクチンはそれが含まれていませんので、やっぱり勘違いされる方が多いですね。

さらに、はしかに感染すると怖いのが…肺炎や脳炎など合併症を引き起こす恐れがあり、はしか感染者1000人に1人が死亡している。この致死率はどう解釈すればよいのだろうか?

関西医科大学附属病院 宮下修行医師:インフルエンザと比較するのが1番分かりやすいと思います。インフルエンザは超過死亡の原因になって、だいたい致死率が0.01%。はしかは0.1%で、当然はしかの方が致死率が高い病気である。つまり、インフルエンザよりも怖い病気だとご理解いただけるかと思います。

 

■はしかの感染力は最強クラス 妊婦と1歳未満の子供は特に注意

はしかの感染力は最強クラスとも言われている。

はしかは空気感染や飛まつ感染し、新幹線など同じ車両にいるだけで感染リスクは高くなる。
免疫がない集団に1人発症者がいた場合、インフルエンザは最大3人に感染を広げるのだが、はしかは最大18人に感染を広げてしまうということだ。

マスクで防げないのだろうか?
関西医科大学附属病院 宮下修行医師:コロナでは飛沫感染対策がメインでした。これはマスクで防げますが、空気感染になると、もう1段階上のN95マスクという、より強力なマスクが必要になります。

手洗い消毒はどうだろうか?
関西医科大学附属病院 宮下修行医師:手洗い消毒も効果がありますけれども、それだけではダメです。

特に注意すべきなのは、妊婦さんと乳幼児だ。
妊婦さんはワクチン接種ができず、はしかに感染すると、早産や流産の恐れがある。また、1歳未満の子供は定期接種前でワクチンを打っていない子が多く、感染すると脳炎や難病の恐れがあるということだ。

妊婦さんや乳幼児はどうすればいいのだろうか?
関西医科大学附属病院 宮下修行医師:よく言われてますのが妊婦さんが風疹にかかると、母子感染が起こるので風疹は危ない。でも、はしかに関しては母子感染がいま確認されておりません。はしかのワクチンは生ワクチンというワクチンに分類されまして妊娠中は打てません。ということで、妊娠をする可能性のある女性は、何回打ったことがあるか、または自分の抗体を知っておくということが、非常に重要になると思います。一方で、1歳未満のお子さんの場合は、多くの場合は親からの免疫を持っています。1番重要なのは、お子さんにうつすのは親御さんですから、親御さんが自分の既往を知っておくことが重要。

気を付けたくても、気を付けようがないという事?
関西医科大学附属病院 宮下修行医師:空気感染というのは、例えば同じ箱の中、建物の中に居るだけで、感染の機会があるということになってしまいますので、なかなかこれは気を付けようがないですね。

■ワクチン接種は世代によって違うが2回接種が必要

はしかの感染を防ぐ方法としてワクチン接種があるが、世代によって接種状況が違う。

・23歳以下の世代はワクチンを2回接種している。
・23歳から33歳までの世代は1回接種と2回接種の人が混在している。
・33歳から51歳までの世代は1回接種。
・51歳以上の世代は接種がない世代だ。

1回接種だけでは不十分なのだろうか?
「2回接種で確実に抗体保有率95%」ということですがどういうことだろうか。

関西医科大学附属病院 宮下修行医師:まず1回のワクチンだけでしたら、今、メッセンジャーRNAワクチン、コロナのワクチンというのは、ブースターをかけています。ですから2回打つというのは、ブースターをかけることによって、より長く抗体を保有させようという狙いがあります。したがって1回だけだと、減衰が早い人だったら、10年ぐらいで消えちゃいます。ですので、ブースターが必要になってくるわけです。

接種歴が不明の場合は「抗体検査」が有効ということだ。
関西医科大学附属病院 宮下修行医師:きょうの外来の半数近くの患者さんが、はしかに興味を持たれていました。全然違う病気を診ているのに、はしかの質問攻めにあいました。抗体検査について値段を調べたところ、抗体だけの検査で大体1000円ぐらいでできます。非常に安くできる検査だなと知りました。

はしかにかかったことがある人は、ワクチンを打たなくても大丈夫だろうか?
関西医科大学附属病院 宮下修行医師:いわゆるワクチンを打つ免疫と、感染した免疫では、やっぱり感染した免疫の方が強いんですね。感染免疫に関しては『終生免疫』という名前が付いています。ただし、間違ってはいけないのは、お年を取られていてステロイドを飲まれたり、免疫抑制剤を飲まれてる方は、この免疫が落ちていくということも分かっております。

 

■はしか単独のワクチンが不足 いまの主流は混合ワクチンだが値段が高い

番組の谷元キャスターはワクチンを2回接種しているが、先日クリニックで抗体検査したら「抗体不足」と言われたそうだ。こういうことってあるのだろうか?

関西医科大学附属病院 宮下修行医師:2回で確実に抗体保有ができます。ただ抗体保有率95%ということは、5%の方は抗体を持っていないということです。これは残念ながら免疫応答で免疫がつきにくい方、またはワクチンを打った後に減衰、いわゆる抗体が下がっていく人がいますので、その分類に入ると思います。

クリニックで「ワクチンを打ちましょう」という話になったそうだが、はしかワクチンが足りないそうだ。

厚生労働省の発表によると、武田製薬工業のはしかワクチンについて、有効成分で一部、基準を下回るものがあり自主回収をしたということで、はしか単独のワクチンが不足している。はしかと風疹の混合ワクチンならあるそうだが、値段ははしか単独ワクチンが5500円、混合ワクチンが9900円で、2倍近く違う。 この状況は現場の感覚としていかがだろうか?

関西医科大学附属病院 宮下修行医師:最近はやっぱり多いですね。咳止め、痰切りが足らないといったことは、自主回収や何かが起こることによって、生産が止まってしまうということがよくあります。ただ、いま主流なのはMRワクチンという、風疹とはしかの両方を打つワクチンで、風疹も輸入感染ですから、この機会にはしかと風疹の抗体を調べておくことは、逆に重要だと思います。

 

■ワクチン何回打ってもいいが、必ず「間隔」を開けて

ここで視聴者からのLINE質問だ。

‐Q.はしかのワクチンは何回打ってもいいのか?
関西医科大学附属病院 宮下修行医師:これに関しては『打ってもいい』というのが答えです。けれども生ワクチンですから、間隔は必ず開けなければなりません。

ワクチンも足りていないという中で、どういう対策をすればよいだろうか?

関西医科大学附属病院 宮下修行医師:やはり自分の抗体をまず調べることから始めるのが大事だと思いますね。

ぜひ皆さんも参考にしてほしい。

(関西テレビ「newsランナー」2024年3月14日放送)

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