今、地方議員のいわゆる議員年金の復活をめぐり、自民党内で激論が交わされている。
その主役が、小泉進次郎筆頭副幹事長だ。
始まりは、自民党大会前日の3月24日だった。
各都道府県連の幹事長を集めた「全国幹事長会議」の一幕。
ある県連から、地方議員の厚生年金の加入を可能にするよう求める意見が投げかけられると、小泉進次郎筆頭副幹事長は「反対だ!」と猛反発した。
翌3月25日の自民党大会後に、小泉氏は「これから国民に負担も求めていかなければいけない時代が来る中で、どういった理屈でもう1回、地方議員の厚生年金復活って話が出るのか。本当にそんなことを考えているんだったら、国民の皆さんの前で胸を張って言ってみてもらいたい!本当に支持を受けられますか?」と疑問を投げかけた上で、「筋が通らないことは止めていく!」と気勢を上げた。

落選すれば無職…地方議員の「なり手不足」深刻化
地方議員の「議員年金」は、在職12年で多額な年金が支給されるなど特権的なもので、世論の批判や、財政状況の悪化などを理由に段階的に削減されていき、2011年に廃止された経緯がある。
そのため、現在地方議員が加入できるのは、兼業の議員を除けば国民年金のみだ。
一方で、2015年の統一地方選挙では、総定数に占める無投票当選の比率が2割を超えるなど、今、地方議員の「なり手不足」が深刻化している。
高齢化の進行や、都市部への人口流出という根幹的な問題はあるにしても、地方議員という職業がそれほど「割に合わない」ことも理由の1つだという。
総務省の「平成28年地方公務員給与実態調査結果」によると、地方議員の平均報酬月額は、都道府県議会議員だと81万3000円と比較的高額だが、市議会議員は40万6000円、町村議会議員は21万3000円と決して高額とはいえない。
しかも、4年に一度は選挙が行われ、落選すれば無職になる危険性がある上、「議員という要職にふさわしい人材には、それに見合った報酬が必要だが、本当にこの給与で良い人材が集まるのか」という疑問の声があるのは事実だ。
そうした中で、「議員ではなくなった後の生活保障として、公務員と同じ厚生年金への加入くらいは認められてもいいのではないか」という考えが出てきたのだ。
そこで自民党の作業チームは、廃止された議員年金の代わりに、地方議員を自治体職員とみなして厚生年金に加入できるようにする法案の検討を始めた。
公明党もこの方針には賛成の立場で、井上幹事長は会見で「人材確保という観点からも、将来の生活の安定ということを考えても、何らかの年金に加入できるということが必要ではないかと思う。一般のサラリーマンの皆さんと同じように厚生年金に加入できる道を開くというのがこの議論の中心だ」と反対派に理解を求めている。
しかし、地方議員の「なり手不足」は全国的な問題ではなく、厚生年金には、公費の負担も発生するため、反対の声も多くある。

小泉氏「地方議員だけ厚生年金復活は理解得られない」
こうした中で、4月13日、自民党は総務部会を開催し、地方議員の厚生年金について議論を行った。
実はこの会合の1時間前、反対派の急先鋒の小泉進次郎氏らは「ポスト平成の地方議会構想プロジェクトチーム」という会合を開き、総務部会では、結束して厚生年金の導入に反対することを確認した。
会合は決起集会さながらの様相だった。
そして開かれた総務部会。
出席者から「地方議員の友人の給与は15万ほどだ。子育てすら厳しいと言っている」、「政治活動をしっかりしていたら兼業なんてできない」と地方議員の窮状を紹介し、厚生年金の加入容認に賛成する声があがった一方で、小泉氏らが、「厚生年金に加入できない人もいる中で、民意が得られない」「厚生年金の加入は議員の『なり手不足』の解消にはならない」などと反対の論陣を張り、引き続き協議していく方針となった。
小泉氏は終了後、記者団に対して、「地方議会の活性化、地方議員の担い手の人材力の強化はすごく大事なことだ」としつつも、議員のなり手不足だけでなく、農業や漁業、介護など他の分野でも深刻な人手不足の問題があると指摘し、「どこの業界からも、人手不足を年金の強化によって支えてもらいたいという声は出てきていない。そういった中で、地方議員だけ厚生年金の復活というのは、国民の皆さんの理解を得ることは到底出来ないんではないかと思う」と改めて反対の考えを示した。

小泉氏猛反発で“議員年金復活”は阻止されるのか
最後に小泉氏がこう答えていたことが印象深い。
「物事には優先順位、順番というのがある。どこも人手不足で大変ですよ。じゃあ、農業年金って作るんですか?林業年金、漁業年金、介護年金、建設年金、物流年金、こういったことをやるという話は今まで出ましたかね?そういったことは考えないのに、なぜ議員のなり手不足の時だけ、年金の話になるのかっていうのは、私はちょっと順番が違うんじゃないかと思う」
小泉進次郎氏の猛反発で“議員年金復活”は阻止されるのか…
この問題を継続的に追いかけていきたい。
(文責:自民党・小泉進次郎筆頭副幹事長担当 空閑悠)