過去に検挙歴のある人の中で、再び犯罪に手を染める人の割合がどれくらいかご存じだろうか?法務省が公表しているデータによれば実に47.9%だ。こうした中、受刑者たちの社会復帰を後押ししようと作品展が開かれた。

なぜ?受刑者たちの作品展

2月に静岡市葵区で開かれた「みんなのHEART展」。展示された人物画や風景画、短歌など約100点は、いずれも静岡刑務所に収容されている受刑者によって製作された作品だ。

みんなのHEART展
みんなのHEART展
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静岡刑務所では2023年4月から受刑者の社会復帰を後押しする官民協働のプロジェクトが進められていて、分類教育部の向川岳彦 部長は「市民に(作品を)見てもらうということで自分を肯定していく、あるいは社会に参加していくという意識を持ってもらう。そういう自己肯定感が受刑者にいい影響を与えるのではないか、改善・更生を促すのではないか」と開催の狙いを話す。

静岡刑務所 分類教育部・向川岳彦 部長
静岡刑務所 分類教育部・向川岳彦 部長

主に初犯の受刑者を収容する静岡刑務所

現在、20代から80代までの男性受刑者 約400人が生活している静岡刑務所。その多くは刑期が10年に満たない初犯の受刑者だ。

約400人が生活する静岡刑務所
約400人が生活する静岡刑務所

刑務所内にある金属部品を分解する工場で運搬係を務めるAさんは「自分勝手で考えなしに行動していたことが多かった」と過去を振り返り、「家族などに迷惑をかけて申し訳ない気持ちで生活している」と話す。

運搬係を務めるAさん
運搬係を務めるAさん

そんなAさんにとって、幼い頃からずっと面倒をみてくれ、刑務所に収容されて以降も再出発を応援してくれている大好きな祖母の存在が今の心の支えになっているという。

高齢にも関わらず、孫を支えようと遠方からたびたび面会に来てくれるそうだ。

だからこそ、感謝の思いを込めて1枚の絵を描いた。タイトルは「うちのばあちゃん 88歳」。髪の毛や顔に刻まれたしわの1つ1つまで丁寧に描き上げ、やさしいまなざしが印象的な作品だ。

うちのばあちゃん 88歳
うちのばあちゃん 88歳

現在は自身が犯した罪と向き合い、「家族に恩返しできるよう、もう二度と罪を犯さないように頑張っていこう」と決意している。

一方、印刷工場で裁断係を務めるBさんも「数千万円という金を奪い取ってきたが、それによって得た楽しさやうれしさよりも失ったものの方が大きい」と後悔を口にし、「時間を巻き戻せるなら…やっぱりやらないなと思う」と下を向く。

裁断係を務めるBさん
裁断係を務めるBさん

Bさんには残してきた子供がいる。その子供に向けて歌を詠んだ。

会えぬ日々 離れて暮らす 子の笑顔 汗と涙と 新たな決意

そして、「大切な人のこと、迷惑をかけた人のことを思う時間というのは、これから再販せずに生きていくために自分を戒める時間なのかなと思う」と声を絞り出した。

データは語る厳しい現実…高い再犯率

作品展の会場では目に涙を浮かべる人もいて、来場者の1人は「その人の心が作品に表れていると感じた。心を打たれた」と感想を教えてくれた。

ただ、現実は甘くない。

法務省が公表している犯罪白書(2023年度)によると、2022年に検挙された16万9409人のうち、過去にも検挙歴がある人は8万1183人。再犯率は実に47.9%に上り、約2人に1人が再犯者になっている計算だ。

静岡刑務所
静岡刑務所

それでも、静岡刑務所と共に作品展を共催した小学館集英社プロダクションの担当者は「受刑者を美化するのではない」と前置きした上で「今がどうなのか。今どういう思いで、どのように社会復帰に向けて取り組んでいるのかを伝え、それを受け取ってもらう。1人の人として彼ら(受刑者)のことを見てもらえたのではないか」と手応えを感じている。

再犯率の高さには、安定した仕事が得られなかったり、差別や偏見の対象として見られてしまったりという背景があると言われる中、受刑者の社会復帰に向けた歩みを支援する取り組みはこれからも続いていく。

(テレビ静岡)

テレビ静岡
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