都内の私立中学校で出された「インターネットを使っていいので、唾液アミラーゼの働きについて調べてきてください」という理科の課題。
この記事の画像(12枚)一見、何の変哲もない普通の課題に思えますが、学年で200人以上いる生徒の約半数が「不正解」になったというのです。
不思議なことに、不正解になった回答はどれも同じ文言で書かれていました。
「唾液アミラーゼは、食べ物に含まれるでんぷんを分解し、胃で消化されやすくする」
実際は、でんぷんは基本的に胃では消化されないため「胃で消化されやすくする」という部分は不正確です。
「何か参考にした文章がある」生成AIの回答を写したか
なぜこのような事が起きてしまったのか?課題を出した教諭を取材すると、そこには「生成AI」が関係しているのではないかといいます。
課題を出した教諭:
あからさまに教科書とは違うような内容が書かれていたと。(間違えた生徒が)同じ回答を書いてくるので、「これ何か参考にした文章があるな」と思って。
実際に、「生成AI」を搭載した検索エンジンに今回の課題を入力してみると…生徒たちの回答と全く同じ説明が出てきました。
多くの生徒が、この生成AIの回答をうのみにして、そのまま書き写していたのです。
生成AIが回答の根拠にしたとみられるのは、大手食品メーカー「キユーピー」の公式サイト。指摘を受けたキユーピーは、「誤解を招く表現だった」としてホームページの文言を修正しました。
課題を出した教諭:
生徒たちにとっては多くの学びがありました。今後は、引用元などを明記するように呼びかけました。
使用者の“リテラシー”が重要
今回起きてしまった事象について、生成AI分野に詳しい、野村総合研究所のプリンシパル・アナリストの城田真琴氏は「起こるべくして起こった」と話します。
野村総合研究所 城田真琴氏:
率直に言うと、「起こるべくして起こった」というふうに見ています。なぜかというと、最近の検索エンジンには生成AIが組み込まれているんですね。ですので、最近は生成AIによる結果というのが一番上にハイライトされて出てきます。ですので、学生さんはそれを見て、あまり深く考えずに書き写してしまったのかなと。
2023年6月に中高生約700人に対して行われたアンケートでは、代表的な生成AI「Chat GPT」を勉強に使ったことがあるか?という質問に対して、「利用経験がある」という回答が、中学生が45.4%、高校生では52.2%と、共に約半数が使用経験があることが分かりました。
トラウデン直美:
私も最近まで学生でしたけど、Chat GPTはまだありませんでしたが、ネットは使っていたので同じ感覚かなと思うんです。だから自分が調べたものが、同じものが何個あるかとか、どういうソースから出ているかとか、そういうものを見比べながら裏付けみたいなものを自分で取ってくるという訓練の一種だとは思うので、今のうちに早い段階からChat GPTを使いながら、裏付けも取りながらということを訓練できる今の学生さんは、ちょっとうらやましいなと。
唐木明子氏:
うちは(子どもに)使ってもらいたいくらい。色々試してみたらいいと思いますし、子どもに質問されたときに親がChat GPTを使って答えるということもあって、子どもがずるいと言うこともあるんですけど。
今回の件に関しては、学校側がどう対応するかでその次がどういうふうに変わってくるかという分かれ目になる気がしていて。例えば大手企業の間違えている情報を見て、他のを見て、「先生、これ違うことが書いてあるんですけど、どちらが正しいですか?」とか、質問してきた生徒がいたら褒めてあげるとか。そういうところに目をつけるんだよとみんなで学んでいく。そういうきっかけに使っていけたら、すごくいい学びになるのではないかと。
――教育の現場で懸念されること、大事な点は?
野村総合研究所 城田真琴氏:
やはり大事なことと言うのは、これからの時代、生成AIを使わないで社会に出て行くというのは逆に不安だと思うんです。ですから、AIリテラシーなんて言われ方をしますけども、正しいAIの使い方を学生のうちからきちんと学んでおくことが重要だと思います。逆に懸念される点としては、やはり誤った情報をうのみにするということは、一次情報を確認せずにそのまま書き写してしまうとそういう問題が起きますので、一次情報にあたることの大切さというのを学んでほしいと思います。
――今回のような事はこれから増えると思いますか?それとも修正されていく?
野村総合研究所 城田真琴氏:
リテラシーをきちんと学ばないと、同じようなことは起きると思うんです。ですので早い段階から間違った情報もあるよとか、何回か対話を繰り返していくと、別の意見も出てきて多様性が生まれるとか、そういうことをきちんと学んでおく必要があると思います。
(「めざまし8」3月8日放送)