能登半島地震では、多くの人が倒壊した建物の下敷きになり命を落とした。そんな大地震を超える地震が、岩手県内でも発生する可能性があった。どう備えるべきなのか専門家は「耐震改修も手段の一つ」だと話す。

岩手県で大地震の可能性が…

1月1日に発生した能登半島地震の住宅被害は7万を超え、死者は241人に上る。石川県が2月19日時点で氏名を公表した139人のうち、8割以上が家屋の倒壊によって死亡した。

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こうした建物の倒壊を引き起こしやすいのが活断層による地震だ。私たちが住む陸地の下には、岩盤があり無数の割れ目がある。これに力が加わると割れ目が壊れずれてしまい地震が発生する。過去に大きくずれたことがあり、今後も動く可能性がある断層を「活断層」という。

岩手県内でも4つの活断層が確認されていて、研究を進めている岩手大学理工学部・岡田真介准教授は、最も大きい「北上低地西縁断層帯」に注目している。「北上低地西縁断層帯」は雫石町から奥州市まで約62kmに広がっている。

マグニチュード7.6と推計される能登半島地震に対し、「北上低地西縁断層帯」による地震は、最大でマグニチュード7.8の地震を引き起こす可能性が指摘されている。

震度予測を見ると、震度6強のエリアは集落もある奥羽山脈沿いの山間部や多くの住宅や産業が集まる北上川沿いの地域を示している。

「被害が出る規模の地震」に要注意

「北上低地西縁断層帯」は交通の要となる東北自動車道と重なっていて、道路がダメージを負えば救援活動に大きな支障が出ることが懸念される。

「北上低地西縁断層帯」は2008年に岩手・宮城内陸地震を引き起こした断層から約20kmの距離にある。岡田准教授は「『近くの断層で地震が起き力が解放されたので安心』ということはなく、隣の断層が続いて地震を起こす可能性がある」と話す。

国の調査では、この活断層が今後30年で最大規模の地震を引き起こす可能性はほとんどないとされているが、岡田准教授は油断はできないと指摘する。

岩手大学理工学部・岡田准教授:
評価は低いが、マグニチュードが「1」小さい地震が起きる可能性はある。最大7.8なので、1小さいと「6.8」。これは被害が出る規模の地震なので注意する必要がある

どうやって備える?専門家に聞いた

ではどう備えるべきなのか、一級建築士の永井昌さんは最も重要なのは“建物の耐震化”だという。

一級建築士・永井昌さん:
現在の耐震基準は、震度6以上になるとあちこち壊れる。多少変形するが崩壊には至らないという考えでつくられている

県内の住宅の耐震化率は、2018年度で約83%、推計を始めた2006年度の約65%に比べて着実に進んでいるものの、いまだ約8万戸は大規模な地震に耐えられる基準を満たしていない。

永井さんは、「過疎地はなかなか建て替えが進まない可能性がある。子供が都会へ出て高齢者だけになると、建て替えてもどうなのかとなる」と話した。

現行の基準が定められた2000年以前の建物は注意が必要だという。安全性を確めるために各市町村が専門家を派遣する耐震診断事業を行っていて、3,000円ほどで利用できる。

しかし建て替えとなると費用は平均で3,000万円を超える(国交省調べ)。永井さんは、壁を増やしたり、柱を増やしたりする耐震改修も手段の一つだと話す。

一級建築士・永井さん:
例えば、盛岡市紺屋町の番屋は、耐震補強を入れて改修されている。いつもいる居間や寝ているときが危険なので、寝室だけ改修する手もある。絶対につぶれない建物は残念ながらつくることはできない。「多少壊れても空間は残るからその間に逃げてくれ」、これが命を救う上で一番大切

地震の揺れによる家屋の被害は、過去に県内でも多く発生していて、2008年の岩手・宮城内陸地震では780棟あまり、2011年の東日本大震災では津波が届かなかった地域でも1,846棟が被害を受けた。

地震のとき建物に命を救ってもらうために住環境の見直しが求められている。

(岩手めんこいテレビ)

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