花粉症対策と林業振興を目的に2021年に佐賀県が開発した“次世代”のスギ。花粉は半分以下。成長と強度は1.5倍という次世代スギの植林が順調だ。将来の“花粉ゼロ”を目指し、さらに開発が進んでいる。
“次世代スギ”の植林進む

多くの人を悩ませるスギ花粉による花粉症。
その対策として佐賀県は、“花粉の量が半分以下”という次世代のスギの植林を進めている。

この次世代スギは、佐賀県が2021年10月に開発成功を発表したもので、「サガンスギ」と名付けられた。
56年の研究が実を結び開発に成功

1965年から研究がスタートし、開発に要した時間はなんと56年。
87歳で亡くなった元佐賀県職員の原信義さんがリーダーとなって地道に進めてきた研究が実を結び、2022年度から植林が始まった。
佐賀県は2023年度、6万本を植林。
3年後の2026年度には植林する苗木を全て「サガンスギ」へ切り替える計画だ。
“成長速度”は約1.5倍

この「サガンスギ」の特徴は花粉の量が半分以下というだけではない。
従来のスギと比べ、“成長速度”は約1.5倍。
「従来のスギ」と「サガンスギ」を植えてから4年後に比べてみると、その成長スピードの違いは一目瞭然。
伐採までの期間が50年から30年に短縮され、その分、労力やコストを削減できるメリットがある。
佐賀県林業試験場 江島淳特別研究員:
林業の仕事をする人たちにとっては、植えてからの成長がとても速いので、夏場の過酷な下刈り作業の回数が減ることが期待されている
“木材の強度”も1.5倍

さらに木材の強度もアップしている。
木材の上に乗って力を加えてみる実験では、たわみが少ないのが確認できた。
従来のスギに比べ木材の強度も1.5倍。
成長が速くても品質は下がらず向上している。
林業の担い手確保にも期待

現在(2023年3月)、佐賀県内で林業に従事しているのは約240人。10年前と比べて4割減少していて、次世代のスギ「サガンスギ」は成長が速く、品質も向上しているため、今後の林業の担い手確保につながることが期待されている。
花粉“ゼロ”実現へ…

さらに新たな研究と開発も始まっている。
佐賀県がいま取り組んでいるのが、花粉の量を“ゼロ”にする“無花粉”「サガンスギ」の開発だ。
佐賀県林業試験場 江島淳特別研究員:
DNAレベルでの解析技術が格段に上がってきている。そういった技術を活用することで確実に“無花粉化”できると考えている。できるだけ早く成果を出したい

佐賀県は、無花粉のサガンスギを十数年後に実現したい考えだ。
花粉の少ない山の実現、そして林業の強化へ向けた地道な研究と開発が続けられている。
(サガテレビ)