仙台市で若者を中心に、ファッションの“発信地”として多くの人に愛されてきた商業施設、「仙台フォーラス」が、老朽化に伴う調査のため、3月1日から長期休業に入った。客や従業員、そして地域の人たちのために、を意味する『For us』からその名がついた、仙台フォーラス。休業前の最後の営業日には「ありがとう」があふれた。
世代を超えて愛される「For us」の精神

仙台市中心部にある商業施設、仙台フォーラス。待ち合わせは「ラス前」で、そんな言葉が生まれるほど、長年親しまれてきた。

長期休業前最後の営業日となった2月29日にも、多くの人が訪れ、買い物を楽しんだり、写真を撮ったりして、しばしの別れを惜しんだ。
客や従業員、そして地域の人たちのために、を意味する『For us』からその名がついた、仙台フォーラス。建物の老朽化が進み、東日本大震災による損傷の調査も行うとして、運営会社は、39年間の歴史にいったん幕を閉じ、3月1日から長期休業することを決めた。

運営会社によると、現時点で再開時期の見通しは立っていないというが、閉館は考えていないという。

「ダンススクールに2年ぐらい通っていたので、お別れといったらあれですけど、ありがとうと言いに来ました」(20代女性)
「ちょっと寂しい。ここでランチをするのがちょっと楽しみ。ミニぜいたくでした」(80代女性)
「学生の時はここが一番おしゃれだということで、地下のフロアでブランド品を買ったりしましたね」(60代男性)
と、幅広い年代の人が、フォーラスとの思い出を話してくれた。
あふれる感謝 常に若者文化の発信を

たくさんの人たちの思い出の1ページに刻まれてきた、仙台フォーラス。入口近くに設置された特設のメッセージボードは、感謝の思いであふれていた。

運営会社OPAの浅井直樹取締役は、「40年近くの間、時代の流れは変わりながらも、常に若者文化やカルチャー文化を発信するビルであり続けたいと頑張ってきた。今後はどういう価値を提供できるか、これから考えていきたい」と話した。
5000人以上の行列 おなじみの光景に

「ジャスコ仙台店」から業態を転換し、1984年にオープンした「仙台フォーラス」。若い世代を中心にファッションの発信地として、親しまれてきた。

なんといってもフォーラスといえば、「バーゲン」。1993年の冬のバーゲンでは、朝6時の時点で、5000人以上が行列をつくった。驚くのは、そのほとんどが高校生。先頭の人は、前日の午後8時半から並び、フォーラスに寄ってから、学校に向かっていった。
いつしかおなじみの光景になっていた、初売りなどの仙台フォーラスの行列。ファッションビルとして若者に愛されてきたフォーラスも、近年は、JR仙台駅前の商業施設に客足を奪われテナントが減少。

最近では、夏休みに昆虫のふれあい会を開いたり、人気キャラクターの展覧会を企画したりするなどして、ターゲットとなる年代の幅を広げ、集客を図ってきた。
39年間の「ありがとう」しばしのお別れ

通常は午後8時までの営業だが、2月29日は、2時間早い午後6時に営業を終了し、これまでの感謝を伝えるセレモニーが行われた。
午後6時20分、通りを埋め尽くすほどの多くの人に見守られながら、仙台フォーラスのシャッターが下ろされた。

セレモニーの後、運営会社のある女性社員が話してくれた。「愛されていたのが分かった」。
39年間、ありがとう。また会える日まで。
(仙台放送)