秋田・大館市の企業でかつて作られていた工芸品の人形「お杉わらべ」。県外でも土産物として販売されていた。この「お杉わらべ」の製造・販売が、約半世紀ぶりに再開されることになった。復活までの経緯、そして関係者の思いに迫る。

“秋田の冬の象徴”が今春復活へ

つぶらな瞳に、おちょぼ口の表情がかわいらしい人形「お杉わらべ」は、大館市の大館工芸社が手掛けた。

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現在は「曲げわっぱ」の製造で広く知られているが、かつての人気商品は、この「お杉わらべ」だった。

大館工芸社・戸嶋一之社長:
曲げわっぱを作る前に、実はこっちの方が先に手掛けていた商品になる。当初はスギの花器や民芸品を主に手掛ける会社で、当時はこれを全国的に販売して、それによって今の会社の礎を築いたと聞いている

わらの帽子をかぶった子どもをモチーフにしていて、雪国・秋田の冬の象徴ともいえる「お杉わらべ」。

創業して間もない1962年ごろから製造されていたが、曲げわっぱの人気が高まるにつれ生産は縮小し、1970年代に製造中止となった。
その人形が、半世紀の時を越え、今春復活することが決まった。

大館工芸社・戸嶋一之社長:
復刻を望む声はあったが、ストレスフルな社会で、癒やしとか別の価値を提供したいということで、今回復刻発売することになった

4月から販売されるのは、大きく分けて2種類ある。

かつてのお杉わらべを再現したものに加え、アート作品のような新たなシリーズも登場する。

新たな「フォークアートシリーズ」は、秋田杉の無垢(むく)材を使用し、木の風合いが感じられるようにと、あえて塗装していない部分を残しているのもこだわりの一つだ。

途絶えた技術も…苦労乗り越え再製作

ただ、50年ぶりの復活の裏には、やはり苦労もあった。人形が盛んに作られていた当時に製作に関わっていた人も、使っていた道具も残っていないからだ。

大館工芸社・戸嶋一之社長:
技術が途絶えてしまったというところがあって、本当に一から色だったり形だったり、これを全部もう一回再現するのが大変

実は10年ほど前に一度、お杉わらべの再製作に挑戦したことがあったという。その時に聞いた経験者の話などを基に、今回の復活にこぎ着けた。

「かわいい」復刻版と「かっこいい」新シリーズ

苦労の一方で、販売に先駆けて都内で行われた展示会に出展した際には、早速うれしい反応があった。

大館工芸社・戸嶋一之社長:
復刻版は「かわいい」と、フォークアートシリーズ(新シリーズ)は「かっこいい」と。早速 何社か引き合いも来ていて、おおむね好評

復刻版と新シリーズ版の「お杉わらべ」
復刻版と新シリーズ版の「お杉わらべ」

インテリアショップから声がかかるなど、これまでとは違う客層から関心を得られたことは大きな収穫だ。

大館工芸社・戸嶋一之社長:
曲げわっぱだけではなく、スギ製品を通じて、工芸品を作っている会社なのでそういったものを広めていく最初のスタートラインの商品になればいいのかなと思っている

“古くて新しい郷土人形を再び世の中に”。関係者は期待を膨らませている。

(秋田テレビ)

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