派閥パーティー資金の収支報告への不記載をめぐる問題で、衆議院では、「公開」「非公開」をめぐる与野党の攻防の出口が見通せない状況となっている。

当初、28日、29日の開催までは大筋で合意されていたところから一転、開催の先送りも含めて先行きは不透明な情勢になっている(2月27日現在)。

参議院では、1985年に政治倫理審査会が設置されて以来初めて審査会が開催されることになったが、参議院でも不記載議員の弁明の行方はまだ決まっておらず、国会では、派閥の裏金問題をめぐる真相解明が遅々として進まない。

参議院で初開催された政治倫理審査会 2月27日
参議院で初開催された政治倫理審査会 2月27日
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FNN世論調査(2月17,18日実施)では、これに先立ち不記載があった議員が、政倫審で自ら説明する必要を聞いたところ、「自ら説明するべき」が89%、「説明する必要はない」は9.2%にとどまった。

これを支持政党別に見ると、自民総支持層ですら81.3%が「自ら説明するべき」と答えたほか、「政治とカネ」問題に厳しい対応をとる与党の公明党支持層からの「自ら説明するべき」との意見は96.3%に上った。野党第一党の立憲民主党支持層の93.2%を上回り、与党内からも自民党に対する説明責任を求める厳しい突き上げがあることが明らかになった。

【政倫審での“不記載議員”の説明(支持政党別)】  
自民支持層 
自ら説明 81.3% 説明する必要ない 14.0%
公明支持層 
自ら説明 96.3% 説明する必要ない  3.7%
立憲支持層 
自ら説明 93.2% 説明する必要ない  6.3%          

岸田首相「まず説明責任、実態把握」続いて「政治責任を党として判断」

岸田総理は2月26日の衆議院予算委員会で政倫審について「国民実向けて、説明をする大変重要な場であると思う」と述べた。このようにまずは政倫審の結果が「国民に向けた説明」となったか、説明責任を果たし、真実の解明となるかの行方が重要となる。

さらに岸田首相は「説明責任を果たしてもらうとともに、実態把握を行い、把握された実態に即して政治責任についても党として判断していく」と述べている。政倫審の審査の後に、自民党として処分を行う考えを示した形だ。

処分のあり方について自民党支持層はどう考えているのか、世論調査を見てみると処分対象について「全ての不記載議員」31.8%、「派閥の幹部議員」46.8%、「処分の必要は無い」17.6%となった。

与党公明党支持層からは「全ての不記載議員」49.3%、「派閥の幹部議員」37.7%、有権者全体では「全ての不記載議員」55.2%、「派閥幹部」34.4%となり、自民支持層では、幹部の処分が必要との意見が最も多かった一方、公明支持層・有権者全体では、「全ての不記載議員」を処分する必要があるとの意見の違いが見られた。

世論調査に先立つ2月15日に自民党が公表した、不記載議員からの聞き取り報告によると、キックバックについて「派閥事務局から収支報告する必要はないといわれたものを信じていた」「派閥事務局から記載不要との説明を受けて、記載しなくても合法と認識した」など、“不記載は派閥からの指示”と答えた自民党議員が複数いたとおり、自民党議員は裏金問題発覚後、地元支持者に対して「派閥からの指示だった」と説明してきた議員も多数いて、自民支持層からは、派閥幹部への処分を求める声が多くなったと考えられる。

【不記載議員への自民党の処分の対象のあり方】
自民層 不記載議員31.8% 派閥幹部46.8% 処分必要なし17.6%
公明層 不記載議員49.3% 派閥幹部37.7% 処分必要なし5.9%
全体  不記載議員55.2% 派閥幹部34.4% 処分必要なし7.7%

二階元幹事長への50億円 “時給10万円”の「政策活動費」のあり方は

政倫審での説明責任、自民党内での処分について世論の動向を見てきたが、問題発覚以来、調査で有権者が最も強く求めているのが再発防止の取り組みだ。

政治資金規正法の改正案で国会で議論がなされている焦点の一つが、会計責任者が不正な会計処理を行った場合に、国会議員の連帯責任も問う「連座制」の導入だ。自民支持層では「導入するべき」77.4%、「導入の必要は無い」17.6%と導入を求める意見が強い。

「連座制」については、与党公明党、主要な野党支持層からも「導入するべき」との意見が強く、各党支持層とも9割前後が「導入するべき」と答えた。

また、派閥からのキックバックとは別に、政党が議員個人に政治活動費として支払い、使い道の公開の必要がない「政策活動費」についても、野党は岸田首相にルールの厳格化に応じるよう求めている。

「政策活動費」については、歴代最長の5年に渡り幹事長を務めた、二階元幹事長に対し50億円が支出されていた。野党は「1時間10万円」使っていた計算になる「政策活動費」について使途を報告する必要が無いことを問題視し、政治資金規正法の改正を求めている。

これについて世論調査で各党支持層別に聞いた。自民党支持層では「使徒報告の義務づけ」79.8%、「廃止」11.9%となったのに対し、公明支持層では「使途報告の義務づけ」83%、「廃止」17%、立憲支持層では「使途報告の義務づけ」65.6%、「廃止」33.5%、維新層では「使途報告の義務づけ」74.7%、「廃止」25.3%、共産層「使途報告の義務づけ」63.8%、「廃止」34.3%となった。

与党支持層、主要野党支持層とも、使途の報告義務づけが最最も多かったものの、野党支持層は「廃止」を求める比率が多い答えとなった

【連座制導入について 支持政党別】 
自民層 導入すべき 77.4% 必要なし17.6%
公明層 導入すべき 91.5% 必要なし8.5%
立憲層 導入すべき 96.7% 必要なし3.3%
維新層 導入すべき 93.0% 必要なし7.0%
共産層 導入すべき 89.6% 必要なし8.5%

【「政策活動費」のありかた 支持政党別】
自民層 廃止すべき11.9% 使途報告の義務化79.8% 今のままでよい 6.9%
公明層 廃止すべき17.0% 使途報告の義務化83.0% 今のままでよい 0.0%
立憲層 廃止すべき33.5% 使途報告の義務化65.6% 今のままでよい 0.9%
維新層 廃止すべき25.3% 使途報告の義務化74.7% 今のままでよい 0.0%
共産層 廃止すべき34.3% 使途報告の義務化63.8% 今のままでよい 1.9%

西垣壮一郎
西垣壮一郎

フジテレビ報道局 政治部デスク 世論調査担当
2000年から政治部担当で報道記者・報道番組プロデューサーを歴任。
政治部官邸キャップ、自民党キャップ、野党キャップなどを担当。
ワシントン支局特派員(ブッシュ政権~オバマ政権)「BSフジLIVEプライムニュース」総合演出、「日曜報道 THE PRIME」プロデューサーなどを経て現職。
趣味は釣り。