奈良の東大寺の参道で25日、台湾出身の観光客の男性が車にひかれて死亡し、台湾メディアでも大きく報道されている。人通りの多い参道で起きた高齢ドライバーによる暴走事故。いったい何があったのか。

■台湾からの観光客が死亡 東大寺の参道で暴走事故

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三連休最終日の25日、緊急車両が駆けつけ騒然としていたのは奈良の「東大寺」の参道だ。

警察によると25日朝、東大寺南大門から150メートルほどのところで79歳の男が運転する車が暴走し、巻き込まれた台湾出身の観光客・呉其源さん(62)が死亡、長野県在住の52歳の男性も腰の骨を折る重傷を負った。

事故の目撃者:すごい衝突音がドーンってきて、わたしが見た時点ではボンネットの上に人が乗っかっていた、急スピードで走って行って。
バーンっていう音がして鹿がザーッと走っていった

台湾メディアの報道には、事後直後の映像が映っていた。救急車が到着し、隊員があわただしく動く様子も。また、事故に巻き込まれたのか膝にばんそうこうを貼った人の姿もあった

女性:すごく痛い

車を運転していたのは、付近の土産物店店主の79歳の男。過失運転致傷の現行犯で逮捕され、警察の調べに対し「アクセルとブレーキを踏み間違えた」と容疑を認めた。

記者リポート:男が運転していた車は、男性をボンネットにのせたまま店の前を走行し、その後、進行方向を変え、あちらの石垣で、別の男性をひいたということです

■車の通行を禁止にすると困るのは店を運営する私たち

警察などによると、男が運転する車は、参道に入ると50メートルほど暴走。大けがをした男性をボンネットに乗せた形で進むと進行方向を変え、呉さん(62)をひいて停車した。

男が乗っていた車は、前方が激しく大破。フロントガラスには、全面にひびが広がっていて、相当のスピードが出ていたことがうかがえた。

参道の幅は、およそ9メートル。観光客でにぎわう場所でもあり、原則車の通行は禁止だ。警察からの許可証があれば通行することができるが、男は「必要だと思っていなかった」などとして、許可証を持っていなかった。 一方で、近隣の土産物屋の関係者は、車の入場を制限することは難しいと話す。

関係者は:車の通行を全て禁止にして困るのは、店をやっているこちら側なので

参道に店を構える人たちにとって、車は必須。79歳の男も、店への荷物の搬入のためよく車を利用していたという。

男は去年、運転免許を更新していて75歳以上の人に義務付けられている認知機能検査にも合格。 また、男の周囲の人も「運転が荒いと思ったことはなかった」と話している。事故当時、男に何があったのか。警察は26日午後、男を釈放し、引き続き詳しい事情を聞く方針だ。

高齢ドライバーによる事故がまた起きた。なぜ高齢ドライバーの事故は減らないのか。75歳以上の高齢ドライバーによる死亡事故は、新型コロナの影響で2020年に一度減少したすが、その後は増加傾向だ。70歳以上の人を対象にした調査では「免許の自主返納を考えたことがない」という人は半数以上にも上っている。

今後も日本では高齢者が増えていくが…

共同通信社・太田昌克さん:増加傾向の数字を見ているだけでもリスクは明らかに高まっています。社会的な要因もあると思うんです。といいますのが、65・70・75歳を過ぎても、働きたい人・働かなくてはいけない方もたくさんおられる中で、こういった痛ましい事故が生じないようにどうしていけばいいか。政府による補助であったり、もう少し技術の力をより脆弱な方に、適用するような仕組みづくりですよね。リスクを減らすことを、政府はそろそろ国を挙げて考えていく時期に入ってきているのではないでしょうか

高齢者が免許を返納しても不便さを感じない環境づくり、そして認知機能や運動機能の低下をカバーできる技術面の向上が待たれる。

(関西テレビ「newsランナー」2月26日放送)

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