仙台市若林区のタクシー会社には、がんを患い声が出せなくなった運転手が在籍している。お客さんとのやり取りは、すべてアプリを介して。「自分みたいに障がいのある方に元気になってほしい」と、声帯の摘出を乗り越え、男性はきょうも街を走っている。
咽頭がん宣告 失った声...
仙台市若林区のタクシー会社で、9年前から運転手として働く関昭夫さん(53)。
この記事の画像(7枚)関さんは2023年12月、咽頭がんを宣告され、声帯を摘出する手術を受け、声を失った。
当時のことを関さんは「がんを宣告されたときは、やっぱり治るのか、不安が先だった。(手術直後)病院の中では、あまり声が出ないことに抵抗なかったが、退院してから少し抵抗はあった」と、伝えてくれた。
下した決断 やり取りは“アプリ”で
声を失ったことで、これまでと同じ生活は困難に。それでも関さんはタクシーの運転手として働き続けることを選択した
その決断を、会社も力強くバックアップ。タブレットや防犯ブザーなどを備品として導入し、関さんがスムーズに仕事復帰できるような環境を整えていった。
日頃、関さんは、お客さんを乗せるとまず、お客さんに「声が出ない」ということを伝えるボードを手渡す。これで、関さんの状況がお客さんにわかるように。
そして、行き先を訪ねたり、その他のやり取りをしたりする際は、読み上げアプリで相手に伝える。有事の際の緊急通報もアプリを使って言葉を発さずに行うことができるという。
一方で課題もある。目的地に到着しても、車内で寝てしまっているお客さんをどう起こすかだ。体を触って起こすことで、お客さんとのトラブルに発展する恐れもある。関さんはまだそのような状況になったことは無いが、対策を考えているという。
「障がいのある方に元気になってほしい」
仕事に復帰するにあたり、「声が出なくてお客さんに迷惑をかけるのでは」と考えていた関さんだが、逆にお客さんから、「頑張って」「ありがとう」と言ってもらうことも多い。
関さんは「(頑張る自分の姿見て)自分みたいに、障がいのある方に元気になってもらえれば。ご不便をかけるかもしれないですけど、安全運転で頑張っていきます」と、微笑んだ。
声を失っても...関さんはきょうも前を向いて、街を走り続けている。
(仙台放送)