日本で「生搾りオレンジジュース」の自販機が増えつつあるのをご存じだろうか。

果実をその場で絞ったジュースを提供するスタイルの自販機で、2023年4月には、世界30カ国以上に展開している、シンガポール発のIJOOZ(アイジュース)が日本に進出。関東や関西を中心に、200台以上を設置している(2024年2月時点)。

IJOOZの自販機(提供:IJOOZ株式会社)
IJOOZの自販機(提供:IJOOZ株式会社)
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IJOOZの場合、低温に保たれた自販機に大量のオレンジが丸ごと積まれていて、注文をすると4玉をその場で搾り出し、約45秒でカップに注がれたジュースが出てくる。カップにはフィルムが貼られているほか、自販機にはストローも備えてある。

抽出中の様子(編集部撮影)
抽出中の様子(編集部撮影)

砂糖や水を使用していないこと、フレッシュな甘さや酸味を楽しめることが売りだ。自販機の一部は透明なパネルとなっているので、抽出の様子を近くで見ることもできる。

カップに注がれたジュース(編集部撮影)
カップに注がれたジュース(編集部撮影)

1杯の容量は280mLで、価格は350円。現金払い、キャッシュレス決済に対応。設置場所によっては、1日に350~400杯が注文され、月間で約400万円を売り上げる自販機もあるそうだ。

紙パックやペットボトルのジュースとは何が違い、日本でなぜ広がりつつあるのか。自販機の仕組みも気になるところだ。IJOOZを展開する、日本法人の担当者に聞いた。

香り、味わい、果肉のつぶつぶ感が魅力

――IJOOZの自販機が生まれたきっかけは?

弊社の創業者がもともとエンジニアだったこと、息子がオレンジジュースのファンなこともあり、自販機での提供に興味を持ったと聞いています。(シンガポールの本社は)2016年に創業しました。

自販機には大量のオレンジが積まれている(編集部撮影)
自販機には大量のオレンジが積まれている(編集部撮影)

――果実はどんな流れで生搾りジュースになる?

ざっくりですが、まずは果実の洗浄と合わせて、目視で品質や状態を確認します。適さないものはここで取り除きます。各地に冷蔵保管用の倉庫があり、ここから自販機まで運んで補充します。自販機の内部では、コンベアで必要分が運ばれ、抽出用の機械で搾られてカップに注がれます。皮は自販機の下側にたまるようになっています。

コンベアや抽出用の機械なども搭載(編集部撮影)
コンベアや抽出用の機械なども搭載(編集部撮影)

――従来のオレンジジュースとは何が違う?

生搾りならではの香り、味わい、果肉のつぶつぶ感などを楽しめることですね。果実は一定の甘さの基準をクリアしたものを使用していますし、オレンジは酸味やみずみずしさ、果肉感などが季節で変わるので、そうした違いが楽しめるところも魅力です。


――原料にオレンジを選んだ理由は?

ジュースとしての需要、果実の冷蔵保管のしやすさ、将来的なビジネス面などを考慮して、オレンジとなりました。使用している果実はアメリカ産とオーストラリア産で、弊社の基準を満たすものを作っている農家から仕入れています。

自販機の情報はリアルタイムで管理

――自販機の状態はどのように管理している?

自販機にはそれぞれSIMカードを搭載しており、果実・カップ・フィルムの残数といった情報は専用のシステムがリアルタイムで管理しています。残数が少なくなったり、メンテナンスが必要になったりしたときは、スタッフが現地で補充や対応をします。

行列ができることもある(提供:IJOOZ株式会社)
行列ができることもある(提供:IJOOZ株式会社)

――日本のマーケットに参入した狙いは?

日本には数年前から、同業他社が生搾りオレンジジュースの自販機を先行設置しているのですが、弊社はOEMとしてそちらに自販機を卸売していました。そのため、以前は協業関係にありまして、現在は純粋に競争として、お客様に好きな方を選んでいただいている形ですね。日本は世界的に見ても“自販機大国”であると考えています。

人気を集める、中座くいだおれビルの自販機(提供:IJOOZ株式会社)
人気を集める、中座くいだおれビルの自販機(提供:IJOOZ株式会社)

――人気の理由は?どんな人が購入している?

おいしいのはもちろん、価格帯や内容量も影響していると思います。オレンジは1玉100円ほどするので、4玉搾ったジュースが350円で味わえる、手ごろさもあるのではないでしょうか。顧客の年代や傾向はさまざまで、設置場所によりますね。ビジネス街はサラリーマン、商業施設ではファミリーや学生、子ども。観光地では外国人の利用が多いです。

2024年は新タイプの自販機が登場予定

――設置場所はどのようにして決めている?

一般的な自販機と同じように、場所をお借りして、売り上げの一部を還元しています。自販機を利用してもらうにはトラフィック(人間の交通量)が重要になりますので、弊社のスタッフが現地に行き、目視で確認しながら決めています。設置場所は商業施設、遊園地、ジムなど幅広いです。

売り上げが多い、池袋駅構内の自販機(提供:IJOOZ株式会社)
売り上げが多い、池袋駅構内の自販機(提供:IJOOZ株式会社)

――売り上げが目立つ場所はある?

設置場所それぞれですが、人通りが多いところは良いですね。特に人気なのは池袋駅構内(東京)、中座くいだおれビル(大阪)などで、月間の売り上げが350~400万円ほどになることもあります。


――IJOOZの今後について、予定や目標はある?

2024年は設置台数を増やすほか、新しい自販機が登場する見込みです。氷を入れることもできるようになるほか、生のオレンジジュースと他のフルーツジュースを混ぜた商品も提供できる予定ですので、ワクワクを提供できるといいですね。



担当者は「(自販機の存在が)生搾りジュースを飲む習慣につながければ」とも話していた。生搾りジュースは複数の企業が展開しているので、あなたの近くにも、こうした自販機がやってくるかもしれない。

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プライムオンライン編集部
プライムオンライン編集部

FNNプライムオンラインのオリジナル取材班が、ネットで話題になっている事象や気になる社会問題を独自の視点をまじえて取材しています。