いろいろな料理に使われる「だし」。これを自動販売機で見かけたことはないだろうか。

駐車場の出入口に設置された「だしの自販機」(編集部撮影)
駐車場の出入口に設置された「だしの自販機」(編集部撮影)
この記事の画像(9枚)

自販機には大きな文字で「だし道楽」と書かれていて、正面には500mlサイズのボトルがずらりと並んでいる。そしてボトルには、茶色い液体と一緒に魚や昆布が入っている。

ボトルには茶色い液体と魚などが入っている(編集部撮影)
ボトルには茶色い液体と魚などが入っている(編集部撮影)

本格的なだしが、ボタンひとつで購入できるのだ。

機体には英語での注意書きも(編集部撮影)
機体には英語での注意書きも(編集部撮影)

この自販機では通常の飲料は販売しておらず、機体には「Do not drink. This is a soup stock.」(意訳:飲まないでください。これはだしです)と注意書きもされている。

駐車場の出入口などにひっそりと設置されているが、とんでもない存在感を放っている。

設置元は広島・呉市の企業

そんな“だし一本勝負”の自販機を設置しているのが「二反田醤油」(広島・呉市)。自販機の商品は自社製造の万能調味料「だし道楽」シリーズで、価格は1本、550円~750円ほどという。

だし道楽(提供:二反田醤油)
だし道楽(提供:二反田醤油)

自販機での販売は2007年にはじまり、その後は県外にも進出。2023年4月時点では、東京都や大阪府など、全国の26都道府県に約190台を設置しているという。

筆者も購入したことがあるが、鍋のベースに使ってもいいし、パスタなどにかけてもいいと感じた。その一方で気になるのが、自販機で販売することになった理由だ。

うどん店でのある要望がきっかけ

こうした調味料は小売店にあるイメージだが、自販機を選んだのはなぜだろう。目立たないところに設置されている印象もあるが、狙いはあるのか。二反田醤油の担当者に聞いた。


――だし道楽シリーズはそもそもどんな商品?

甘めの関西風のお出汁です。容器に手作業で昆布、炭火で焼いた飛魚(焼きあご)を1尾入れ、調味液を充填して作っています。容器内で厳選した天然の素材から”うまみ”が出る、見た目も味もインパクトあるものになっています。(商品自体の)販売は2003年ごろになります。

うどん店での設置がきっかけだという(提供:二反田醤油)
うどん店での設置がきっかけだという(提供:二反田醤油)

――だしの自販機はどんな経緯で設置が始まった?

当社は2006年にうどん店も開業し、だし道楽も店内で販売していました。ただ、営業時間が1日4時間で、お客様から「営業時間外でも買えたらいいのに」とのお声をいただくことがありました。そこから自販機のアイデアが出て、社内でも「面白い」となり、2007年7月、うどん店の店頭に設置したのが始まりです。


――自販機で販売するメリットはあった?

価格帯や販売方法の珍しさから、手土産品としての利用が増え、リピーターのお客様、地方発送、設置希望のお声などを遠方からいただけるようになりました。自販機だと手軽に購入できるので、試しに買ってみて、需要につながるということもあります。

駐車場でよく見かける理由

――自販機はどんな場所に設置している?狙いは?

地域のハブ的なところ、広範囲から集客しやすいところをイメージしています。駅前など目立つ場所に置くこともありますが、自販機の商品は「ドライブのついで」といった理由での購入も考えられます、そのため、道路の裏筋などにもこっそりと設置させていただいております。

駐車場だとデッドスペースを活用できるという(編集部撮影)
駐車場だとデッドスペースを活用できるという(編集部撮影)

――個人的な印象だと、駐車場で見たりするが。

自販機の設置を広げ始めたころ、駐車場に設置することがありました。駐車場側もデッドスペースを活用できるとのことでご協力いただけたので、県外の駐車場でも設置を目指しました。そういうところでは、駐車場がスタートだったとも言えます。


――各地まで商品の納入はどうしている?

「広島から行きます!」となるのは、機械の設置や機器の修繕などです。(基本は)広島から商品を発送し、各エリアの協力会社様(缶飲料の搬送業者など)の管理、ご協力のもと営業させていただいております。

お勧めの使い方は「卵かけご飯」

――どんな人が自販機でだしを購入している?

設置先のロケーションで変わりますが、時間帯、年齢、性別など問わず、皆さまにご利用いただいていると思います。用途はさまざまで、飲食店様による購入も多いそうです。

魚の風味が存分に感じられるという(提供:二反田醤油)
魚の風味が存分に感じられるという(提供:二反田醤油)

――商品のお勧めの使い方を教えて。

まずは卵かけご飯。醤油でもなく、麺つゆでもなく、だし道楽です。香り、旨み、お出汁を存分に楽しんでください。甘めのお出汁なので、卵料理、うどん、鍋物、煮物、パスタなどにも会います。SNSでは、お湯にだし道楽を入れて飲むといった使い方も拝見しました。


――だし道楽の自販機の今後は?

自販機はどこでも設置できるわけではありませんが、お客様のご要望も参考にします。Twitter、Instagramなどで写真・住所をご連絡いただければ検討します。天然の原料は安定した確保が厳しいものもありますが、喜ばれる商品づくりと自販機展開に努めてまいります。



確かに普通の自販機でも、珍しい商品があると買いたくなることがある。皆さんの近くにも、ひっそりと「だし」が並ぶ自販機があるかもしれない。

この記事に載せきれなかった画像を一覧でご覧いただけます。 ギャラリーページはこちら(9枚)
プライムオンライン編集部
プライムオンライン編集部

FNNプライムオンラインのオリジナル取材班が、ネットで話題になっている事象や気になる社会問題を独自の視点をまじえて取材しています。