全国の高校生が和牛の肉質などを競う「和牛甲子園」で、鹿児島・鹿屋農業高校が初の総合優勝に輝いた。手塩にかけ育てた和牛が高校日本一に!そこには、高校球児ならぬ高校“牛”児のひたむきな姿があった。

育てた牛が日本一の肉となり凱旋

2月6日、鹿屋農業高校に地元JAかごしまきもつき・下小野田寛組合長がやってきた。「和牛甲子園、総合優勝おめでとうございます!」と祝福し、高校生に贈ったのは「和牛甲子園」で最優秀賞を獲得した和牛の肉。そう、自分たちが育てた牛が日本一の肉となって凱旋したのだ。

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「和牛甲子園」は、和牛について学ぶ全国の高校生が、その取り組みと肉質の成果を競う大会で、年々レベルも知名度も上昇。7回目の2024年は41校が参加した。

鹿屋農業高校は、取組評価部門で「審査員特別賞」、枝肉評価部門では「最優秀賞」を獲得し、初の総合優勝に輝いた。

鹿屋農業高校が初の総合優勝に輝いた
鹿屋農業高校が初の総合優勝に輝いた

このとき出品した枝肉は東京の食肉商社が競り落としたが、「地元の誇りだから」と、JA鹿児島きもつきと、JA肝付吾平町がグループ会社を通じて、1頭分、丸々購入した。格付けはA5の12番。これ以上ない最高ランクである。

家が畜産農家の門原真央さんは「いや~おいしそうです!生前の(牛の)顔が思い浮かんだ」と満面の笑顔を見せた。

鹿児島黒牛研究部ならではの生産方法

今回、和牛甲子園に出場したのは「鹿児島黒牛研究部」という鹿屋農業高校の部活動だ。

約20年間、同好会として活動し、2023年4月、部に昇格した。「鹿児島黒牛研究部」は、この学校ならではの和牛の生産方法を追求している。

えさとして利用しているのは、実習農場で増え続ける厄介者の「竹」。ロシアのウクライナ侵攻や、歴史的な円安の影響による飼料の価格高騰が導入のきっかけだった。

鹿児島黒牛研究部の山口蒼真さんは、「近年の資材と飼料価格の高騰で経営が厳しくなっていて、その中で地域の未利用資源に目を向け、学校の中にある竹を利用しようと思った。(竹は)自分たちの畜産科の飼料畑の隣からも出てきていて厄介」と語った。その表情はまるでベテランの研究家のようだ。 

竹はチップにしたあと、糖蜜などを混ぜて3カ月ほど発酵させてから牛に与える。部員たちは、「どうすれば牛がより食べてくれるのか?」と、試行錯誤を続けている。

さらに、肉質の良い牛を効率的に安定して産ませる方法にも取り組んでいる。

「受精卵を使った高能力の牛群づくりです」と話す門原さん。いわゆる牛の「代理母出産」である。

遺伝子がものを言う和牛の世界では、優秀な両親の受精卵を乳牛など、別の牛に産んでもらう。そのメリットについて、門原さんは「ホルスタインも乳が出るし、肉用牛も子どもが増える。いいことばかり」という答えが返ってきた。

鹿児島黒牛研究部は代々、研究を引き継ぎながら今後も新しいことに挑戦し続ける。

日本一になった牛の味は?

そして2月7日。JAからプレゼントされた優勝牛を、飼育に携わった生徒みんなで食べた。「和牛香」と呼ばれる独特の甘い香りが調理室いっぱいに広がった。

青春をかけ育てた牛。今回、生徒たちに贈られたのは、極上とされる「リブロース」。

生徒たちは、「やわらか!」「わっぜうまい!(とてもおいしい)」「最高です!」と、その味に感激していた。

門原さんは「大学を出ていろんな農場を2、3年ぐらい回ってみて、飼育管理、飼養管理の仕方を勉強してから家に帰り、世界一の和牛生産家になりたい」と将来の目標を語る。

同じ鹿児島黒牛研究部の長峰葉月さんも「鹿屋の未利用資源を使った、鹿屋100%の牛をつくってみたい」と目を輝かせた。

自分たちが手塩にかけて育てた和牛を前に、生徒たちは思いを新たにしていた。 

この「日本一の肉」は地元のスーパーでも販売された。高校“牛”児たちの夢は、まだまだ終わらない。 

(鹿児島テレビ)

鹿児島テレビ
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