新たに設けられる「子ども子育て支援金」のため、医療保険料に上乗せする形で1人あたり年間平均6千円ほど負担が増える見込みであることを岸田総理が明らかにした。

野党は子育て増税だと批判しているが、専門家はどう見るのか? 第一生命経済研究所の首席エコノミスト永濱利廣さんに聞く。

■これから結婚・出産したい層から徴収は「本末転倒」

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そもそも「子ども子育て支援金」とは、岸田内閣の看板政策「異次元の少子化対策」として、高校生までの児童手当拡充や出産費用の保険適用、子ども3人世帯の大学授業料無償化などが打ち出されていて、財源に3.6兆円が必要とされている。このうち1兆円規模を国民から徴収する制度が「子ども子育て支援金」制度だ。

この制度について「これから結婚・出産したい低所得者を支援するのが、本来の少子化対策。そこからお金を徴収するのは本末転倒」と永濱さんは指摘する。

第一生命経済研究所 永濱利廣さん:そもそも岸田政権がやろうとしている政策というのは、少子化対策ではなくて、既に子どもを持っている方を支援する策です。本来の意味で少子化対策というのは、婚姻率を上げて子育て世帯を増やすことです。この制度だと、これから結婚したり、子育てをしようとする人には、負担が増えることになってしまいますから、場合によってはむしろ少子化に拍車をかけてしまう可能性すらあると思います。

■1人あたりの負担は平均で月に平均500円弱

では、実際に国民負担はどれぐらい増えるのだろうか

岸田総理は1人あたり月平均500円弱、年間6000円ほど負担が増える見込みであるとしていて、野党は「子育て増税だ」と批判している。ただ、年間6000円ほど負担が増えるというのは、あくまで平均なので、人によって金額は異なる。

徴収は「医療保険」から行われ、皆さんが加入している医療保険の種類によって、増額分が変わる。中小企業などの「協会けんぽ」、自営業・高齢者などの「国民健康保険」、大企業などの「組合健保」、公務員などの「共済組合」などあるが、収入が多いほど増額負担は大きくなるという。

第一生命経済研究所 永濱利廣さん:例えば後期高齢者の方は負担が少ない一方で、高収入の人たちは負担が増えます。単純な平均なので、保険料も負担している人によって、かなり負担に差が出てくると思う。企業が負担する部分もありますから、それも含めて負担分をださないと、ちょっと誤解を招くことになると思います。

■医療保険料からの理由は「広く浅く徴収するため」

なぜ医療保険料から子育て支援金を徴収するのか?

第一生命経済研究所 永濱利廣さん:多分、本当にやりたかったのは、みんなが負担する消費増税なのだと思いますが、これは多分批判が多い。となると、消費増税以外で広く浅く取るためには、医療保険というところ。生活保護受給者以外はほぼ負担していますから、そういうことで、ここに手をつけたのだと思います。

結局、増税のように感じるが、番組コメンテーターの菊地幸夫弁護士は「少子高齢化で少子化対策はわが国にとって非常に重要。広くいろんな人からという意味では、健康保険を増額するのは、わからないでもない。しかし1人あたりの月の負担金額について、もう少し丁寧に説明した方がよいのでは?」と話した。

■首相「負担生じない」に対し、永濱さん「実質負担は増える」

野党は「実質増税」と批判しているが、岸田首相は「歳出削減と賃上げによって、実質的な負担は生じない。子育て増税には当たらない」と反論している。

これに対し、永濱さんは「賃金が上がっても物価も上がる。実質負担は増える」と指摘している。

第一生命経済研究所 永濱利廣さん:やはり企業が賃金を上げるためには、ある程度、価格転化しなければいけません。さらに足元では実質賃金マイナスですので、負担が増えると。確実に国民の負担が増えると思います。おそらく望ましいやり方としては、できるだけ経済が良くなるまでは、負担は先送りして、例えば上振れしている税収を使ってでもいいですし、国債発行してでもいいので、やりくりしていくことが重要かと思います。

■「出世払いで支出する方法もある」

視聴者からの質問。
‐Q:増税しないなら、子育て支援金は出せないのか?
第一生命経済研究所 永濱利廣さん:出せると思います。なんでも出せるわけではありませんが、少子化対策で出せば、子供が増えれば将来、大人になってから働いて税金を払ってくれます。出世払いみたいな形で、国債発行すれば、先に支出するというやり方は、十分考えられると思います。

‐Q:何のために必要なんですか?
第一生命経済研究所 永濱利廣さん:経済全体を考えると、このままだと日本はどんどん人口が減って、不況が続くことになるので、今できるだけ人口を増やす。そうすると社会保障の財政も改善して行くという期待を持っていますので、人口減少を抑制することが求められているということです。

(関西テレビ「newsランナー」2024年2月8日放送)

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