長崎で1カ月にわたってロケが行われた月9ドラマ「君が心をくれたから」。「長崎らしさ」が全面に押し出された風景に、永野芽郁と山田裕貴が溶け込んでいる。雨ちゃんの長崎の住まいは実在する洋館で、風景の中で時折走る路面電車もファンタジーなストーリーを盛り上げている。

そんな「長崎らしさ」を楽しみながら聖地巡礼をする人たちの中で、意外と多いのが地元の人。ロケ地は長崎人でさえ心癒やされる場所だ。

スタッフの心を癒やす和洋折衷の洋館

雨ちゃんが祖母の雪乃と一緒に住んでいる家のシーンは、実在する洋館を使っている。かつて外国人が住んでいた洋館が立ち並ぶ「外国人居留地」として有名なエリアに位置する。

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雨ちゃんの家はオランダ坂にあるブルーの洋館「東山手甲十三番館」。昭和初期から中期にかけてフランス領事館として使われていた。洋館なのに瓦屋根という、和洋折衷の造りが特徴だ。

東山手甲十三番館(明治中期に建造、国指定の登録有形文化財) 「写真提供:(一社)長崎県観光連盟」
東山手甲十三番館(明治中期に建造、国指定の登録有形文化財) 「写真提供:(一社)長崎県観光連盟」

現在1階はカフェとして利用されている。撮影では玄関先までを使用。ドラマで映る家の中はすべてセットだ。

1階はカフェ
1階はカフェ

カフェスペースは出演者がメイクを整えたり撮影の合間にひと息つく場として活用された。出演者からも「癒やされた」と感動の言葉をもらったほど洋館の持つたたずまいは心を和ませてくれる。

黒田さんは温かいコーヒーでスタッフをもてなした
黒田さんは温かいコーヒーでスタッフをもてなした

長崎市と洋館の活用に取り組む黒田雄彦さんは撮影に立ち会った。ロケは深夜に及ぶこともあり、雨に濡れるシーンもあったりで温かいコーヒーを差し入れるなどして現場を支えた。

NPO法人長崎の風 代表 黒田雄彦さん:
俳優が雨にあたるシーンだから俳優がびっしょりぬれるのは分かるが、スタッフもびっしょりになる。全員で一つのシーンを撮りあげる。一生懸命になっている姿を見ていたら応援したくなってくる

メイキングシーン
メイキングシーン

地元の良さにも気づかせてくれる“君ここ聖地巡礼”

放送が進むにつれて、来館者は日に日に増えているという。館内にあるノートには聖地巡礼者の声がつづられている。意外なのは長崎県内の人が多いことだ。

君ここファンの声がつづられたノート
君ここファンの声がつづられたノート

NPO法人長崎の風 代表 黒田雄彦さん:
テレビで見たけど行ったことがなかったので来たという声を聞く。この場所に俳優が座っていたとか思うとそれだけで「来てよかった」と話すドラマファンもいる。長崎っていい街だとまず長崎の人が自分の住んでいる街に愛着や誇りを持ち、住んでいてよかったという思いになってほしい

東山手地区の洋館の良さを知り尽くしている黒田さんでさえ、撮影時に様々に切り取ったカットがドラマでシーンとしてつながっているのが新鮮だと語る。毎回「カットの答え合わせ」を楽しみにドラマを見ているという。

「青い春の香り」マーガレットがお出迎え

エントランスでは第4話の嗅覚の鍵となった花「マーガレット」が迎えてくれる。

第4話から   
第4話から   
プランターに植え替えたマーガレットが待っている
プランターに植え替えたマーガレットが待っている

これはドラマで実際に使われていたものだ。撮影後、黒田さんたちがプランターに植え替え、ドラマの余韻を楽しんでほしいと育てている。「青い春の香り」が君ここファンを待っている。

路面電車シーンは“待ち”ながら合間を縫って

ファンタジーなストーリー展開に長崎の異国情緒の相乗効果を狙った君ここのロケは時間をかけて進められた。特に「待ち」の時間が多かったのが「乗り物」だ。

飛行機、船、バス…。中でも長崎らしいのが第1話で登場した街中を走る「路面電車」だ。使った車両は緑とクリーム色の定番電車、いわゆる「電鉄カラー」。車両を3時間ほど貸し切ってロケが行われた。

第1話:崇福寺電停でロケが行われた
第1話:崇福寺電停でロケが行われた

電停シーンを撮影するための電停選びが難航した。ロケ地となったのは「崇福寺電停」。中国寺が立ち並ぶ界隈(かいわい)への最寄り駅だ。

撮影の条件が複数あった。昼間の撮影だったため約5~10分間隔で運行している営業車両は通常通りに運行、合間を縫って撮影用の貸し切り電車を走らせて撮影する。もちろんここでも雨を降らせる。散水車をとめるため「ある程度の広さ」が必要だ。

路面電車を管理運営する長崎電気軌道株式会社は、終着駅の中でも複線で、その先に車両を待機させる場所があり、かつ近くに駐車場もあるという「崇福寺電停」を撮影場所として提示した。

第1話:雨が降るシーンは必須
第1話:雨が降るシーンは必須
 様々なカットが“待ち”の時間を要しながら撮られた
 様々なカットが“待ち”の時間を要しながら撮られた

貸し切った電車への乗降や電停でのやりとりなど複数のシーンを撮影。貸し切り電車は1kmほど先の電停で折り返し運転。上下線の営業車両の運行を確認して指示を出す人、折り返すための線路のポイントを切り替える人と3人のスタッフで対応にあたり、貸し切り電車を3往復させてロケを行った。

営業車両の運行を「待ち」ながら合間を縫って貸し切り電車を走らせてロケを行い、雨も降らせて無事に必要なカットを撮り終えたという。

メイキングシーン:ある程度の「広さ」が必要だった
メイキングシーン:ある程度の「広さ」が必要だった

長崎の街歩き 崇福寺界隈は歴史が散りばめられた場所

聖地巡礼の番外編。長崎の街歩きの達人である山口広助さんによると、崇福寺電停付近は現在は暗渠(あんきょ)になっているが、かつては橋が架かっていたという。当時の石橋の親柱が地元の公民館に残っている。

街歩きの達人 山口広助さん 奥が崇福寺電停
街歩きの達人 山口広助さん 奥が崇福寺電停
石橋の親柱が地元の公民館に残っている
石橋の親柱が地元の公民館に残っている

近くには「思案橋ブルース」で歌のタイトルにもなった「思案橋」もある。思案橋の先は江戸時代に日本三大花街として栄えた「丸山界隈」へとつながる。聖地巡礼では長崎の歴史に思いをはせてみるのもおススメ。

「幸せの後悔」で雨ちゃんと太陽君の思いが実ったものの…

第5話のサブタイトルは「すべて魔法のせいにして」だった。案内人の日下(斎藤工)が「すべて魔法のせいにして…幸せな後悔をするべき」と雨ちゃんの背中を押す。

「幸せな後悔」を選択してようやくお互いの思いを実らせた雨ちゃんと太陽君。君ここファンはようやく「安堵(あんど)の幸せの涙」を流すことができたはずだ。

2月12日(月)の第6話は幸せもつかの間、雨ちゃんが次に失うことになるのは「触覚」であるが…「魔法よ、永遠に解けないでほしい」と心から願わずにいられない。

(テレビ長崎)

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