長崎で1カ月にわたってロケが行われた月9ドラマ「君が心をくれたから」。高校のシーンでは、撮影された高校の生徒70人もエキストラで出演し、下校シーンや「ランタン祭り」が催される文化祭シーンなどが撮影された。舞台となった学校にはドラマのシーンがよみがえる「ある物」が託された。
舞台になった学校 決め手は“長崎らしさ”
雨と太陽の高校時代のシーンの一部は「長崎県立長崎東中学校・長崎東高等学校」で撮影が行われた。
この記事の画像(24枚)長崎ロケで監督が何よりも大事にしたのが「長崎らしさ」だ。高校の撮影場所としても、“坂の街”長崎らしく高台に位置することや、ロケーションを重視して何度も足を運び、学校の選定が進められたという。
「雨を降らせること」「下駄箱のシーン」を念頭に入れてのロケハンだったそうだ。
撮影当日は、雨を降らせるために散水車が用意された。ロケでは、生徒たちも窓を閉めた教室から見学が許された。
本番は窓から1メートル離れて声を出さないことが条件だったという。
雨と太陽の青春時代を演出したエキストラ
東高ではエキストラ70人に対して323人の生徒がエントリー。当日は制服などの衣装が用意された。
制服にジャージを羽織る人、野球部のユニホームの人など様々だ。その場で2、3人のペアが決まり、それぞれに演技指導が行われたという。
東高の敷地の外周にある通称「東風の道(こちのみち)」は、春になると満開の桜のトンネルが絶景だ。ロケは12月。合成で満開の桜の中で下校するシーンが演出され、ここを雨ちゃん太陽君とともに、エキストラの生徒たちも堂々と登場した。
生徒たちのエキストラ出演を見守った長崎県立長崎東高校川口由美子副校長は、細部にまでこだわるドラマスタッフのプロ魂を、目の前で見て感激したと話す。
長崎県立長崎東高校・川口由美子副校長:
「前の2人が歩きだしたら次のペアは1メートル離れてスタート」とか、「楽しそうに談笑しながら歩いて」という細かい指示があった。エキストラはわき役だが、わき役もしっかり意味のある動きをして、初めてメインの2人が引き立つシーンに仕上がるんだと、放送を見てさらに強く感じた
エキストラで参加した生徒たちの感想の一部だ。
「たくさんの人たちの力で作品が作られていることを実感した」
「自分が知らないところで、多くの人が工夫を重ねてこの作品を作り上げていると思うと、本当にすごい」
「テレビでいつも見ている人が、自分の学校に来て撮影していることが信じられなかった」
エキストラ出演は生徒たちにとって発見と驚きの連続で、夢のような時間となったようだ。撮影後、エキストラに頭を下げて次の撮影現場に向かった出演者達の優しさにも触れたという。
ドラマのワンシーンを彩ったもの
第3話では、長崎の冬の風物詩「ランタンフェスティバル」にちなんで、雨と太陽の学校で「ランタン祭り」が開催されていた。
高校時代の「想い出」…そして10年後の「想い出」…。2人の「想い出」を描く上でとても重要なシーンとなった。
スタッフ手作りの小道具がここでもたくさん登場した。
校門には架空の「長崎県立長崎高等学校」の学校名プレートが設置されており、実在する学校名なども小道具で隠していた。
これらの小道具はロケ終了後、東高が譲り受けた。川口副校長は「今年の文化祭で君ここの再現ができれば…」とも考えているそうで、生徒たちと一緒にロケの思い出を蘇らせる企画を考えたいという。
ちなみに、教室内でのランタン祭りのシーンでは、雨ちゃんと太陽君がスタッフの小道具をいじって大盛り上がりとなる一幕も。ドラマは毎回涙涙だが、現場は和やかな雰囲気で撮影は進んだ。
ドラマが神の力に後押し
第3話でストーリーに一役買ったのが、「長崎ランタンフェスティバル」で実際に登場するイベントの一つ「恋ランタン」だ。
長崎ランタンフェスティバルは、中国とつながりが深い長崎ならではの冬の一大イベントだ。毎年、中国の旧正月に合わせて街中に1万5,000個の中国ランタンやオブジェが飾られ、長崎の冬が中国色に染まる。2024年は2月9日に開幕し、25日までの17日間の日程。
恋ランタンは、会場の一つ「孔子廟」で行われる実在するイベントで、5年前にお目見えした。
孔子廟は論語で知られる儒学の祖、孔子を祀っている日本で唯一の本格的中国様式の霊廟。監督が夜の孔子廟に惚れ込み、雨ちゃんと太陽君の恋愛成就を「恋ランタン」で叶えたいとオファーして、ここでのシーンの撮影が実現した。
「恋ランタン」を企画したのは、長崎国際観光コンベンション協会の山下典子さん。山下さんは第3話にエキストラで登場し、雨ちゃんに「恋ランタン」を手渡す役どころを演じた。
恋ランタンシーンは2日にわたって行われた。夜中の撮影となり、とにかく寒かったそうだ。撮影当日は山下さんを始めとするスタッフ全員で、実際使っている1,000個の恋ランタンを飾り付けた。
恋ランタンは赤い木札に恋にまつわる願い事を書いて飾り、ランタンフェスティバルの最終日には、恋愛成就を祈ってお焚き上げをする。
孔子廟を恋愛成就のパワースポットにしたいと意気込んでいる山下さん、ドラマで雨ちゃんの初恋が実ったことで、ドラマが神の力を後押ししてくれた。
2月の長崎は、ランタンフェスティバルでロマンチックに浸りながらロケ地巡りをする「君ここファン」でにぎわうこととなりそうだ。
太陽君の命を救うために自分の五感を差し出した雨ちゃん。29日の第4話では、雨の嗅覚もタイムリミットが近づいて…。長崎の風景がドラマのストーリーをさらにぐっと深めることだろう。
(テレビ長崎)