能登半島地震では新潟県内に津波警報が発令され、多くの人が公共施設などに避難した。一方、在宅で療養するALS患者はすぐには避難できない中、恐怖を感じていたという。新潟市に住むALS患者に当時の思いを聞いた。
「ただじっと耐えるしか…」
画面に打ち出されていくのは「ただじっと耐えるしかない」という言葉。

入力したのは新潟市西蒲区に住む北條正伯さんだ。11年前、全身の筋肉が動かなくなる難病ALS・筋萎縮性側索硬化症と診断されてから、在宅での療養を行っている。

文字を視線で入力し、ヘルパーを通して会話する北條さんは…
「揺れが収まるまでただじっと耐えるしかないのです。たとえ棚が倒れたとしても天井が崩れ落ちたとしても防ぎようがありません。その恐怖を想像してみてください」

能登半島地震の時に感じた避難できないことへの恐怖を語ってくれた。「私の体は1ミリも動きません。もしライフラインが全滅した状況下で妻とヘルパーとの限られた人員で自助努力で生き延びることは出来るだろうか」
停電で募る不安 「命つなげる呼吸器が…」
元日にヘルパーとして北條さんの近くにいた渡辺麻里さんは「北條さんの命に関わる呼吸器と吸引器が揺れによって転落しないことが一番」と話す。揺れが治まってからすぐに呼吸器などの確認や避難経路の確保などを行ったという。

「普段から地震が起きた時の大体の想定は頭の中にあったので、多分動けたんだと思う」
災害時の対応については検討しているものの妻・和子さんが語るのは停電への恐怖だ。

「停電が一番怖くて、命を繋げる人工呼吸器が止まることが何よりも怖い」
呼吸器自体のバッテリーはわずか15時間しかない。そのため「15時間の間でどうするかを決断しなくてはいけない」と和子さんは話す。

県ALS協会から無償で借りているポータブル電源をあわせても3日は持たない。

災害時に備えて新潟市や主治医などと毎年1回話し合い、避難計画書の更新は続けているが、北條さんは「机上で作り上げた避難計画はあるものの、想定外の災害で被災した時に計画通りの避難ができるだろうか」と不安を口にする。

地震発生直後は行政などによる支援も難しいため、北條さんは周囲の助けが必要になると訴える。
「地域全体が被災した状況では、皆さんと同様に私たちにも生きるために支援が必要なんです。もしもあなたの隣に最重度の障害者がいたら、災害時にはどうか声をかけてください」

(NST新潟総合テレビ)