16年ぶりに新人同士の戦いとなった京都市長選、新市長に当選した、松井孝治さんが「newsランナー」に生出演した。

全国最悪クラスという人口減少の問題、そして、オーバーツーリズムの問題と、課題山積と言える京都市の未来、どう舵取りするのだろうか。京都市長選に当選の松井孝治さんに聞く。

■3年連続で人口減少全国ワースト 学生の本音と京都市の取り組み

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全国最悪クラスという人口減少の問題をどう食い止めるのか?3年連続で人口減少が全国ワーストになるなど市外への人の流出が深刻な京都市。松井さんが特に危機意識を持って訴えているのが、「学生の流出」だ。

京都市長選に当選 松井孝治さん(63):京都で15万人も大学生がいるのが、みんな京都の街を去っているんですよ。大学卒業後、この若い力を京都に残したい!

京都市は、全国一の「学生の街」で、人口の約1割が大学生だが、卒業を機に、その多くが県外へ出て行くのが実情だ。

大学2年生:(Q.卒業後、京都に残りますか?)残らないです。利便性的に。東京にちょっと戻りたい。

大学2年生:企業はやっぱり関東の方が強いなって、正直ありますね。

大学院2年生:自分が希望している職種だったり、業界って、本社が京都じゃなくて、東京や大阪っていうのがやはり多くて。

大学4年生:いい街なので残りたいなとは、思っているんですけど、子育ての支援が他の市に比べて、充実していないみたいのを聞くので、将来的に考えると、どうなんだろうと思いますね。

こうした現状に、危機感を募らせた門川市政は、今年度から地元企業と学生を積極的につなぐ取り組みを始めている。

この日学生たちが訪れたのは、京都のコーヒーメーカー小川珈琲です。 京都市はインターンシップを活用して学生たちに地域の企業を知ってもらい、京都で働くことを選択肢の1つにしてもらいたいと考えています。

京都市産業観光局 稲本佳奈美さん:京都市としては企業さまの支援をするため、学生さんと企業の接点を作っていきたい

では、松井市政は、若い世代の流出をどのように防ぐのか。具体的なビジョンはあるのか?

■京都市の財政改革のポイントは『学生』

京都市の人口流出対策、京都市長選に当選の松井さんの政策は ・学生と企業との交流の拡大 ・第2子以降の保育費の無償化 ・小中学校の給食費の無償化 ・若者世代向けの住宅支援 このあたりを政策集に明記している。

市民にとってはメリットがある政策だが、気になるのは京都市といえば、借金が約8200億円あり、かなり厳しい財政状況ですが、財源は大丈夫なのか?

京都市長選に当選 松井孝治さん:財源は必ずしも大丈夫じゃないです。例えば給食費無償化というのは、相当な財源を食いますので、将来的にはそうなるべきだと言っていますけれど、いま直ちに給食費を無償化、難しいですね。やっぱり財政改革と両立しなければ意味がないと思います。結局、将来、借金がその街の若い人たちに背負わされるということだと、若い人も残ってくれませんから。だから、物によっては段階的にやらなきゃいけないものもあると思います

 具体的にはどのように財政改革するのか?

京都市長選に当選 松井孝治さん:財政改革は、好循環に持って行くという意味では、若い方々が大学生は消費税以外の納税をほとんどしていません。だから働いてもらって、住民税を納めていただく、あるいは企業の中で法人税に当たるようなものも納めていただくと。経済のパイを大きくするのが1つです。
 それから、京都市独自の問題として、例えば、人口流出対策とは必ずしも違いますけれど、宿泊税というものをもう少し見直して行くとか、あるいは都市間競争の面もありますから、ふるさと納税をもっと積極的に。積極的な自主財政というのを実現していかなければいけないと思っています

■若い人たちが世界中の優れた才能と交流できる街づくりを

京都市の厳しい財政状況は、全国的にも知られています。 例えば学生になんとか残ってもらい、京都が新しい付加価値を日本経済に付けていく、例えばスタンフォードとサンノゼのシリコンバレーの関係ように、「学生の町」から新しい経済のアイディアや付加価値を創出していくということは考えているのか?

京都市長選に当選 松井孝治さん:私の公約の中で、あまり他の国の街をいうのもどうかと思いますが、京都を日本のシリコンバレーのような街にして行きたいと。京都大学は東京大学と違って、どっちかというと権威主義、大企業志向ではなく、本来はもっと自由な新しい事業を創出するようなリベラルな校風があります。だけど最近この10年間、20年間でいうと、かつては京セラや堀場製作所、オムロンなどの企業でいろいろな新規事業が立ち上がっていましたが、ちょっと最近その動きがやや鈍化しているのではないかと心配しています。
 だから新しい街づくりをして、例えば、京都駅の近くにも、皆さんご承知のように、いろいろな歴史的な背景があって、開発が手についてない土地があります。そういうところに新しい街づくりで、過去の因習というものは置いて、新しい人がそこでスタートアップできるような街を作っていきたい。そこに世界中の優れた才能を招いて、若い人たちが世界中の優れた才能と交流できるような街づくりをやっていきたい。例えば任天堂の財団はそういう街づくりをもう既に始めています。官民の垣根を越えてそういうことをやって行きたいし、私も経済産業省に勤めていましたから、国の政策も含めて引っ張り出して行きたいと思っています

■市バス運賃の差別化はできないので「新路線を実験的に作ってみる」

続いてはオーバーツーリズムの問題。 「オーバーツーリズム」とは、想定以上の観光客が集まることで起きる問題のことで、世界的な観光地の京都市では、中心部では市外からの車で交通渋滞が慢性化し、さらに、市バスは観光客によって満員状態で、住民が乗れない事態も起こっている。

こちらの対策について、松井さんの政策は ・市バス、市営地下鉄の「市民優先価格」 市民と観光客の乗車運賃に差をつけるということだ。 道路運送法の認可の基準では、特定の旅客に対し、不当な差別的取り扱いをするものではないことと定められており、公共交通機関で利用客の属性によって価格に差をつけることは、法律上難しいのではない?

京都市長選に当選 松井孝治さん:鋭い質問ですね。一番難しいです。役人でしたから分かりますが、国交省は基本的にやめてくれと言うでしょう。ただ、鎌倉もそうですし、京都の場合、144万人の街に、5000万人の観光客。こう言うと大したことないように思われますが、例えば知恩院や清水寺、八坂神社がある東山区は、人口3万5千人で、統計はないのですが、おそらく5000万人の観光客のうち3000万人とか4000万人の人たちは必ずそのエリアを訪れているんですよ。パンクしますよ。
 だから、国全体の法律としての、道路運送法の乗客のその住まいによって価格を変えてはいけないという理念は分かりますが、京都のように観光客が押し寄せる街でそこの住民の生活をどう守るかということについて、特区を活用するのか、何をするのか分からないけど、特例的なもの、例えば京都とか鎌倉が連合を作って、国土交通省に法律も例外的な地域を認めたらどうですかというようにはたらきかけるのが、インバウンドで観光立国というのであれば、日本も地域的にはそういうこと考えたらどうですかと言えるのが私の強み。実現するかどうかは、ちょっと野心的だし時間がかかります。短期的にやるべきは、例えば観光専用路線。観光客向けの観光スポットだけをつなぐ特急路線みたいなものは、次のダイヤ改正で具体的に1路線でも2路線でも作って、それがどう機能するかということを、まず実験していきたいと思います

具体的にはどのような?

京都市長選に当選 松井孝治さん:今のルールの中で観光特急路線を作って、普通の京都市バスの運賃が230円だとして、例えば運賃を500円にして観光客だけが巡るスポットだけを特急で走らせると。そうすると観光客は乗るけど、途中の普段使う病院の停留所とかにとまらないから、市民は500円払わへんなとか。それは市民と観光客を実質的に分けていくようなこと。これは今の制度でもできるので、そういうものを実験的にやってみる

 (関西テレビ「newsランナー」2024年2月5日放送)

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