自殺した男性医師の長時間労働が労災に認定された問題で、遺族が神戸市の病院側におよそ2億3000万円の損害賠償を求め、裁判を起こした。

2月2日、大阪地方裁判所に訴えを起こした医師だった高島晨伍さん(当時26歳)の遺族。

母・淳子さんは、時折涙を流しながら、長時間労働を放置した病院側への思いを訴えた。

■「息子の死が何もなかったようにされるのは、許すことができない」

母・淳子さん:亡くなる前の晩に晨伍のところに行きました。疲れている晨伍に「しんちゃんに何かあったら、お母さん生きていけないから、必ず連絡してよ」と帰ってしまいました。しかし、私は、1年半以上こうして厚かましく生きております。嘘つきで本当に不甲斐ない母親でした。晨伍は甲南医療センターで働いていなければ、まだ私たち家族と一緒に時間を過ごし、立派な消化器内科を目指す晨伍を応援していくことができました。どうすれば甲南医療センターは私たちに向き合ってくれるのでしょうか、どうすれば晨伍の死に向き合ってくれる態度をとってくれるのでしょうか。ひとえに晨伍の死が無駄になり、晨伍の死が何もなかったようにされるのは、家族として許すことはできません。

■直前の時間外労働 200時間超「過重な労働は強いていない」と病院側

神戸市の甲南医療センターに勤務する医師だった高島晨伍さん(当時26歳)はおととし5月、自宅で自殺しているのが見つかり、極度の長時間労働が原因として労災認定された。

労働基準監督署が調査したところ、直前の時間外労働が月およそ200時間、直前の3か月平均でも165時間。

当直勤務とみられる日には、翌日の午後4時まで続けて勤務していたと認定されている。

しかし病院側は、こうした長時間勤務は、研究など“自己研鑽”の時間も含まれていて、「過重な労働は強いていない」と主張。

しかし遺族側は、「高島さんが自殺する1年ほど前から、病院内で医師たちの長時間労働が問題視され、改善を求める書面も院長らに提出されていた」などと指摘。

「改善せずに放置したため、高島さんが自殺した」などとして、病院を運営する法人「甲南会」と病院長に対し、あわせておよそ2億3400万円の損害賠償を求めている。

■「後進の医師らの命を救う。息子から託された」

母・淳子さん:悲しんでばかりはいられません。晨伍は優しい優しい上級医になりたいと言いました。その時の照れた笑顔が忘れられません。晨伍はもう医師としてたくさんの患者さんを救うことはできませんが、理不尽に一石を投じるため、命を投げ出しました。この裁判を医師の過労死の試金石にすることでたくさんの後進の医師らの命を救うことになり、晨伍の希望通りに優しい優しい上級医になることを確信します。それらを世の中に伝えていくことを私たち家族が晨伍から託されたのです。この私たちの小さな営みが将来きっと多くの若手医師や家族を救い晨伍の供養にもつながることでしょう。この民事提訴は、晨伍の第2の人生の始まりだと思っております。

この問題では去年12月、運営法人と院長らが、労使協定で定められた範囲を超えて高島さんに時間外労働をさせた疑いで書類送検されている。

関西テレビ
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