「幻の酒」と呼ばれる銘酒をつくる酒蔵が広島県熊野町にある。「大号令」をつくる馬上酒造。昔ながらの手作業で米を蒸し、冷まし、柔らかい味を醸しだす、その酒造りを元広島東洋カープの安部友裕さんが実体験した。
酒米を蒸すと外は硬いが中は柔らかく“スイーツ”っぽく
広島県熊野町にある創業130年の酒蔵「馬上酒造」。
この記事の画像(24枚)流通量の少なさから、かつて、ファンの間で「幻の酒」とも呼ばれていた日本酒「大号令」をつくっている。
安部友裕さん:
これ、コメを蒸しているのかな
ディレクター:
コメです
安部さん:
酒ということで、じゃ、ちょっとこれはさけて通れないですね。さけ(酒)て
昔ながらの製法で酒に魂を宿す蔵元の案内役は、杜氏の村上和哉さん。冷え込みが増す冬の時期は仕込みの最盛期だ。
安部さん:
量的には1回でどれくらい蒸すんですか
馬上酒造杜氏 村上和哉さん:
1度に200キロくらい
桶のような見た目をした木の入れ物で、原料の酒米を蒸す。
「炊く」のではなく、精米した酒米を1時間かけてじっくり「蒸す」ことで、外側が硬くて中が柔らかい「外硬内軟」に仕上がる。
馬上酒造 蔵人 小林貴博さん:
食べてみますか?
安部さん:
食べていいんですか?そんな一気に
安部さん:
かため、かため
味はというと…
安部さん:
芯があるわけでもないです
小林さん:
外側が硬くて、内側が軟らかいみたいな
安部さん:
新しいスイーツみたいな感じ
完食してしまうほど、コメ本来の風味が引き立っていた。
時代に逆らい、コメを冷ますのを手作業に戻す
馬上酒造の「大号令」が「幻の酒」と言われてきたわけは、「時代と逆行」したつくり方にある。
馬上酒造杜氏 村上和哉さん:
100度で蒸されたコメを手で広げていきます
これは「放冷」という蒸米を冷ます作業。5年ほど前までは機械を使っていたが、空気と触れる表面のムラを無くすため、あえて人の目が行き届く手作業に戻した。
村上さん:
安部さんも一緒にやっていただけますか?
安部さん:
あの、本当にやっていいんですか?…失敗は?
村上さん:
ないです。大丈夫です
大切なのは冷まそうとする熱意とスピード!
安部さん:
熱い
安部さん:
蒸米を低温にすると、どんな効果が?
村上さん:
発酵が緩やかになって、香りもよく、味もきれいな酒になる
馬上酒造の「大号令」は口当たりがよく、キレのある味わいが特徴。
真冬は氷点下10度まで気温が下がる熊野町の外気に触れ、酒の味も引き締まる。
この「蒸米」から「麹」と「もろみ」をつくり、日本酒が生まれる。
手間暇を惜しまない、その姿勢が熊野町の風土に根差した一杯を受け継いできた。
すっきりした味のもう一つの決め手は“湧き水”
コメと同じくらい大切なのが…
安部さん:
透き通っとる。めっちゃ透き通っとる。すごいすごい
井戸の透き通った水は、すぐ近くの裏山から染み出てきた湧き水。
豊かな自然と手作業の温もりが確かな味を生み出している。
さて、大号令の味は…
安部さん:
すっきりです。すっきりの味わいです。大号令。手作業ってなんかいいですね
馬上酒造杜氏 村上和哉さん:
愛着も湧きますし、一つ一つ目が行き届くというか。それが小さい酒蔵の利点かなと思います
安部さん:
やおい。やおい。(広島弁で「柔らかい」)俺、めっちゃ飲むやん
(テレビ新広島)