甚大な被害を受けた被災地・能登。残るのか、それとも避難するのか。苦渋の決断をせざるを得ない被災者の今を取材した。

元日に能登半島を襲った最大震度7の地震。240人が死亡。1カ月がたった今も15人の安否が分からず、捜索活動が続けられている。家屋の被害は分かっているだけで4万7000軒を超え、石川県内では4万戸余りで断水の状態が続き、1万5千人近くが避難生活を送っている。

2月1日、被災した各地で、地震が発生した午後4時10分に黙とうが捧げられた。

輪島朝市で飲食店をしていた被災者:(焼けたお店から)ブリとかをたたいていた包丁が見つかったんで、磨き直せば何か使えるかなみたいな。1000年続く輪島朝市をここで止めるわけにはいかないので

街で唯一の診療所院長:現実に起こっているとはあんまり思えないような瞬間もたくさんありましたけど、協力しあってなんとか乗り越えてきたのかな。

■地震から1カ月 物資不足は大きく改善されてきたが…

甚大な被害をもたらした地震から1カ月。被災者の生活は改善しているのか?

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震度6強の地震が襲い、その30分後には津波が押し寄せた珠洲市。地震から3日後に取材した時には、避難所の蛸島小学校は電気も通らず、物資も届いていなかった。

地震3日後
被災住民:これみんな地元で集めた物資。食料もすべてみな持ち寄って。
被災住民:おにぎり1個。1日2食で朝昼兼用、夜1回。もの物足りない。水がない。

あれから1カ月がたつのを前に、再び蛸島小学校を取材すると…

避難所スタッフ 室谷美恵子さん:ここが支援物資。

食料などの物資は充実していた。当初は冷たい床に布団を敷いて寝ていたが、今は段ボールの間仕切りとベッドが並び、水を循環させるシャワーも使えるようにもなった。

避難者:(Q当初と比べて)最高です。おいしいものももらえるし。

■2次避難ためらう高齢者 高齢者を支えるため残る支援スタッフ

今では小学生の授業も始まり、ピーク時に約800人いた避難者は、100人ほどに減少。しかし目立つのが「高齢者」の姿だ。

避難者(79歳):こんだけ“年”やからね。一人でホテル行っても、思い出すのは地震のことだけやね。で、半年くらいで認知症なってしもたら何にもならん。気の毒だ(申し訳ない)けど、お世話になろうかと思って頑張っています。

避難者(79歳):私らここに生まれて、ここで育ったもんで、金沢行って住む気にならないんで。田舎に育ったら、都会なじまんかなって思う。

自治体は環境が整った場所への2次避難を呼び掛けているが、高齢者にとっては心理的なハードルが高いのが実情だ。そんな避難者に声をかけるのが、自身も被災しながら、スタッフとして避難所に残り、支え続ける室谷美恵子さん。室谷さんはアパートを借りることができたが、愛着のある地元を去ることへの迷いや、避難所の高齢者を支える人がいなくなる不安から、珠洲市を離れることができないでいる

避難所スタッフ 室谷美恵子さん:やっぱり、ここから行くっていうのも後ろ髪引かれる。親しくなった(スタッフの)姿がなくなると寂しいかなって。

■被災地を離れる決意をした人も 「しばしのお別れです」

一方で、被災地を離れる決意をした人もいる。

桜屋敷忠さん:これうちの船の大漁旗。飾り棚も全部落ちてしまって。

珠洲市の海岸沿いで、釣り船を営んでいた、桜屋敷忠さん(83)。自宅は今も断水が続き、住める状態ではない。そのため、妻のあい子さん(80)とともに、9日から、京都府が被災者用に用意した住宅に避難している。

桜屋敷あい子さん 1月21日:ありがたいです。こんな風にくつろげる時間があるっていうのは。(能登では)こんな場所があっても、その間にも揺れたりするからね。

1月29日、忠さんの姿は珠洲市にあった。妹夫婦を京都へ避難させるためだ。

妹・伊吹好美さん(76):下水道だから、生活用水を流すなって言うし。もう耐えられんしね。

妹夫婦の自宅は、比較的被害が少なかったものの、断水が続いていた。

義弟・伊吹祥昭さん(82):(Qなぜ避難しようと?)絶えず話相手がおるってことは、ものすごく力強いし。ただし条件つきでね、ここの下水道が直ったら、即帰るっていう条件つきで。

そして京都へ戻る前に、忠さんは大好きだった珠洲の海の様子を見に行った。

桜屋敷忠さん:あれうちの船やねん。あの白い所、タイヤの所まで水があった。

地盤が大きく隆起したことで、姿を変えてしまった海。今後、また船で海へ出て、釣りができるようになるのか、まったく分からない。

桜屋敷忠さん:よく働いてくれる船だった。1月になったらブリ釣りしようと思ってた。待ってたのにこうなるとはな。どうしたらええもんやろう。笑わなしゃーないわ。

先への不安も大きい中、1月31日、忠さんは妹夫婦と一緒に京都へ出発した。

妹・伊吹好美さん:しばしのお別れです。

人が少しずつ離れていく被災地。1カ月前には思いもよらなかった現実がそこにあった。

(関西テレビ「newsランナー」 2024年2月1日放送)

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